モンゴル国 医療技術移転事業(救命救急・内視鏡)(2019/7発行ジャーナル夏号) – AMDA(アムダ)
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モンゴル国 医療技術移転事業(救命救急・内視鏡)(2019/7発行ジャーナル夏号)

AMDA理事 難波 妙


自分の輪状甲状靱帯を確認

AMDAは、モンゴルにおいて協力協定を結んでいる組織との共同事業として2017年より毎年1回、AMDA理事、佐藤拓史医師による救命救急と内視鏡の技術移転事業を行っています。本年は、4月26日から5月5日まで首都ウランバートルとオルホン県エルデネットにおいて実施されました。

*救命救急技術移転事業

ウランバートルエマージェンシーサービス103との共同事業として、4月27日、28日、ウランバートルから車で7時間、オルホン県エルデネットの病院で行われた研修には、地元医療関係者延べ100名が参加し、外傷治療に必要な超音波診断(FAST)、骨髄内輸液、心嚢穿刺、外科的気道確保などの手技の習得を目指しました。これらの手技は外傷治療において不可欠であり、参加者は超音波や骨髄針を実際に手に取って実習を行いました。

5月4日には、ウランバートルエマージェンシーサービス本部において、過去2年間の研修を受けた医師を対象にOSCE研修(救命救急の現場状況のシナリオに従って診断、処置を想定するトレーニング)を取り上げました。「救急搬送中の必須の処置についての理解を深める内容で、救命救急医としての自覚と認識を問うセミナーでした。」と署長のプレブダッシュ医師から高い評価を受けました。このような実習を主体とした参加型のセミナーに対し、受講者からも体験を積む一つの機会として大変意義深い講習であったと好評でした。


上部内視鏡検査を指導

*内視鏡技術移転事業

モンゴル国立医科大学との協力協定の下、4月29日から5月2日、内視鏡技術移転事業が行われました。モンゴルでは癌の中で一番多いのは胃がん。その80%近くがステージIIIかIVで発見され、1年生存率が18%と驚くべき低さです。

今回、内視鏡室長オユンチェチェグ医師とともに佐藤医師は、内視鏡検査技術を実際に見せながら隅々まで精細な観察と確実な診断を行う必要性を強調しました。この期間に70名の患者さんが上部下部内視鏡検査を受けました。今回の症例は上部では逆流性食道炎、HP感染、胃ポリープなど、下部では潰瘍性大腸炎、虚血性腸炎、大腸ポリープなどで、生検を行ったケースはありましたが、悪性の診断に至るものはありませんでした。また、昨年、岡山県の事業として岡山済生会総合病院で学んだ医師自身が早期胃癌を3例発見できたという報告を受け、大きな成果を確信しました。

今回、最も喜ばれたのは、福岡徳洲会病院よりお借りした大腸カメラのシミュレーターによる実習でした。S状結腸捻転などの困難な症例を設定して治療できる事を目的とし、その研修は毎日遅くまで行われました。加えて日本のODAで建設された日本モンゴル教育病院が6月に開院する前に、新しい病院内の内視鏡室の動線などについてのアドバイスも求められました。モンゴル消化器学会会長より、この事業が確実に次世代の医師たちの技術向上に貢献していることに対する感謝とともに高度な技術習得のための事業継続を要請されました。

モンゴル消化器学会会長 ダーヴァドォルジ教授からのメッセージ


ダーヴァドルジ氏

佐藤先生にはこれまでにも、モンゴルでの内視鏡技術指導を行っていただきました。今年で3回目になります。緊急内視鏡医療、ESD、大腸カメラなどモンゴルの若い次世代の医師にとって大切な技術を学ぶ機会となりました。

長年にわたってご指導いただいている佐藤先生に心よりお礼を申し上げます。また、AMDAにもこれまでのご尽力に感謝いたします。