AMDAは2011年の東日本大震災より、鍼灸治療を緊急医療支援活動に導入しました。以来、福知山市浸水被害(2014)、広島土砂災害および熊本地震(2016)、西日本豪雨(2018)において鍼灸師の派遣を行ってきました。
また、東日本大震災と熊本地震では現地鍼灸師による復興支援活動が長期的に行われました。これらの活動を通して『災害鍼灸』の役割は大きいものと実感します。対象症状は、腰痛、頚肩部痛(肩こり)、膝痛、四肢痛、頭痛、不眠、下痢や便秘、頻尿、疲労・倦怠感など、様々な症状に対応してきました。
東日本大震災の際、大槌高校に避難されていた方々から、「医療救護室に行くと救急患者の診療に支障がでるといけない」、と遠慮の声を多数聞きました。鍼灸治療室ができたことで受療のハードルが下がり、症状を我慢していた方々に治療を提供できた事は意義深いです。
熊本地震では、益城町立広安小学校の保健室で医科診療とともに鍼灸治療を行いました。西洋医学と東洋医学が相互に連携した、いわゆる補完医療の実践となりました。救護所に来られた方々からは、「安心して治療を受けられる」、という声が聞かれました。また、亜急性期から慢性期にかけて鍼灸が医科の受療者数を上回るようになりました。長引く避難所生活では、鍼灸の適応であるストレス症状や慢性疼痛が多くなることがその理由でしょう。さらに復興支援活動として、熊本鍼灸チームによるメンタルサポートが多職種連携の中で行われ高い評価を得ました。
西日本豪雨災害での鍼灸治療の様子
西日本豪雨の際は、四肢痛や、頚部痛、頭痛が多く、AMDAはこの時から積極的にマッサージを導入しました。災害時における「手当」の意義は大きく、今後は幅広い東洋医療技術の活躍を期待できます。
2012年から災害鍼灸活動での様々な連携の構築、問題点や課題の抽出から改善までを取り上げる『災害鍼灸チーム育成プログラム』を開催してきました。本年も7月27〜28日の開催を通して、更なる支援チームの充実に向かいます。