2017年度年次報告 健康増進 プライマリーヘルスケアー(2018/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2017年度年次報告 健康増進 プライマリーヘルスケアー(2018/7発行)

インド ブッダガヤ AMDAピース・クリニック


◇実施場所 インド・ビハール州ブッダガヤ
◇実施期間 2009年11月〜継続中

◇派遣者
菅波茂/医師/AMDAグループ代表、難波妙/調整員/AMDA GPSP支援局長、ニッティヤン・ヴィーラヴァーグ/調整員/AMDAインターナショナル事務局長、岩本智子/看護師(米国資格)/AMDA本部職員
◇現地事業チーム構成
看護スタッフ1人、補助員2人、訪問の産婦人科医1人、臨床検査技師1人

◇受益者数 343人(2017年度延べ人数)
◇受益者の声
「AMDAピースクリニックに妊娠中の私を支えてもらったおかげで、元気な双子を授かりました。今は私が他の妊婦さんにAMDAピースクリニックを紹介しています。」

◇現地協力団体 主にAMDAピースクリニックとSAIJO INARISAN BODAIISSHINJI BODHGAYAが運営

◇事業内容
2009年11月にインド最貧州ビハール州ブッダガヤでアユルヴェーダクリニックとして開院したAMDAピースクリニック(APC)は地域のニーズに対応するため、2014年より地域の妊婦を対象とした母子保健サービスを提供している。ブッダガヤは仏教の聖地として知られ、世界遺産の大仏塔を中心に各国の寺院が立ち並んでいる。一方、小さな通りに入ると、溝にたまるゴミによる悪臭が立ち込める中、ヤギや鶏などの家畜が混在する小道を、小さな子どもたちが下着を付けず裸足で駆け回る様子は、よく見るブッダガヤの風景である。

APCは貧困の中でもたくましく生活する妊婦と赤ちゃんを応援するため、主に現地看護スタッフによる家庭訪問、地元医師による妊婦健診、健康教室開催の3つの活動を実施している。家庭訪問では、妊婦健診参加への呼びかけ、生活指導、妊婦の悩み相談など保健活動を中心に行っている。また、月2回の妊婦健診は地元産婦人科医と臨床検査技師にご協力いただき、受診1回につき20ルピー(約35円)の自己負担でサービスを提供している。必要な方には、通常900ルピー(約1500円)かかる血液検査や、鉄剤、総合ビタミン剤、カルシウム、プロテインなどサプリメントを中心とした薬の提供を無料で行っている。加えて、週1回妊婦を対象に健康教室を開いている。これは、出産を控えた妊婦と出産を終えた褥婦に自身や家族の健康を守るのに必要最低限の知識をつけてもらうことを目的としている。健康教室後には、妊婦に栄養をつけてもらうため、地元で手に入る安価な食材を使用した、家でも作れる料理を提供している。

 

パキスタン家庭健康教育プログラム


◇実施場所 パキスタン・タッタ県サクプール地区ミルプール・サクロ
◇実施期間 2014年6月〜2017年12月

◇派遣者
菅波茂/医師/AMDAグループ代表、岩本智子/看護師(米国資格)/AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA、NRSP(National Rural Support Programme)、茅ヶ崎中央ロータリークラブ

◇受益者数 654人(2017年4月〜12月)
◇受益者の声
「健康に関する知識が向上したのはもちろんのこと、私たちのようにプログラムを受講した未婚女性から家族に学んだ内容を伝えたり、プログラムを受講していなかった少女たちに健康に関する知識を広めている。」

◇事業内容
2014年6月に茅ヶ崎中央ロータリークラブ、パキスタン現地協力団体NRSP、AMDAの三者が協力してパキスタンの農村部に住む未婚女性を対象に健康教育を行うという内容で調印。その後「未婚女性が健康に関する知識を身に着けることにより、自身と家族の健康を守ること」を目的とする、衛生観念、月経時の衛生管理、健康と栄養、予防接種、ポリオ、応急処置、新生児ケア、出産準備、母乳育児、家族計画を含む健康教育プログラムを実施してきた。3年半が経過した2017年12月、ついにこのプログラムの受講者目標1,400人を達成し、当プログラムが完了した。この3年半の間に合計1,442人の未婚女性がプログラムを受講、内1,194人が授業の後に行ったテストに合格した。

12月15日にはプログラム完了に伴い、パキスタン家庭健康教育プログラム優秀賞授与式を開催。在カラチ日本国総領事館磯村利知総領事、パキスタンポリオ・プラス委員会アジス・メモン委員長をはじめ合計48人が参加し、プログラム期間内での優秀者を称えた。茅ヶ崎中央ロータリークラブ、NRSPとAMDAから当プログラムで優秀講師6人及び優秀受講者20人に対して賞状、盾、記念品を贈呈した。

また、12月にAMDAが現地を訪問した際、受講した未婚女性が「学んだ知識を実生活で実践し、得た知識を家族や兄弟にも広めている」と話していたが、未婚女性のみならず家族や村へも当プログラムの影響が広がっている様子が見られた。プログラム内で飲料可能な井戸水、不可能な井戸水について伝えた後、ある村では、飲料可能な水が出る井戸には青、飲料不可能な水が出る井戸は赤に色分けし、一目でわかるように工夫をしていた。

「この3年半、識字率0%の未婚女性たちのグループが参加するため講義に工夫が必要だった状況、講義を途中で止める講師が出たことなど、いくつか困難な場面もあったが、プログラムは無事完了した。今後、当プログラムに受講した未婚女性が母親になった時、『このプログラムで学んでよかった』という知らせが届くことを期待している」とAMDA担当者は語った。

12月で当プログラムは完了となったが、NRSPが既に別プログラムとして同カリキュラム教育によるプロジェクトを開始している。

 

カンボジア健康啓発事業


◇実施場所 カンボジア・トボンクムン州、コンポンスプー州プノム・スロッチ地区
◇実施日 2005年8月〜継続中(HIV/エイズプロジェクト)、2015年7月〜継続中(サッカークラブ活動)

◇現地事業チーム構成
AMDAカンボジア支部

◇受益者 約300人(HIV/エイズプロジェクト)、10人(サッカークラブ員)

◇事業内容
AMDAカンボジア支部は、「HIV/エイズプロジェクト」及び「サッカークラブ活動」の2つのプロジェクトを実施した。

◆HIV/エイズプロジェクト

通年同様、AMDAカンボジア支部は、HIV/エイズ・性感染症の基礎知識普及のため資料及びTシャツを作成するほか、「90.90.90」*の数値目標をキャンペーンテーマとして掲げ、世界エイズデーのイベントが開催されるトボンクムン州保健局と協力して「世界エイズデー」イベントを実施した。州保健局、地方保健局、地方自治体、ボランティア、学校の先生、学生ら約300人にもなる参加者は、HIV/エイズ啓発のため開催地を行進した後、州保健局本局にて、音楽等を楽しみ、キャンペーンテーマについて各々意見交換を行った。

*「90.90.90」とは
‐2020年までにHIVと共に生きる人の90%が病院で診断を受ける。
‐2020年までにHIV/エイズと診断された人の90%が抗レトロウイルス療法による治療を受ける。
‐2020年までに治療を受けている人の90%がウイルス量を完全に抑制される。

◆AMDAカンボジア・サッカークラブ活動

AMDAカンボジア・サッカークラブは、隔週で練習を行い、毎月他クラブとも試合を行っている。また、今年度はコンポンスプー州プノム・スロッチ地区にある、以前AMDAのプロジェクトで建設されたカンボジア日本友好小学校でサッカーチームを新たに設立した。カンボジア国内にてスポーツの向上を図り、若者にスポーツへの更なる参加を呼びかけることで、彼らが薬物依存や犯罪、暴力に走らぬよう阻止することを目的としている。