ロヒンギャ難民支援(2018/07発行ジャーナル夏号) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ロヒンギャ難民支援(2018/07発行ジャーナル夏号)

バングラデシュ担当 橋本 千明

嵐のロヒンギャ難民キャンプ、モンスーン時期の試練


ミャンマーから隣国バングラデシュに逃れている、イスラム教を信仰するロヒンギャ難民が暮らすバングラデシュ南東部、コックスバザールの難民キャンプの状況を報告します。

バングラデシュ気象局によると、6月10日から雨が降り続くようになり、6月10日以降、12日までにコックスバザール地区で約400mmの雨が降りました。

 

1万7千人が避難 当局が緊急宣言

豪雨による地滑りなどで死亡者が発生し、強風による仮設テントの倒壊も多数起きたためバングラデシュ当局は6月12日、緊急宣言を発令しました。その後6月13日の時点でおよそ2,000以上の仮設住居が損壊、17,000人以上の難民が一時的にさらなる避難を強いられるなど影響を受けました。

 

AMDAの診療活動にも影響


AMDAは医療活動を開始して半年が経過しましたが、この豪雨により難民キャンプでの医療活動も試練の時を迎えて、AMDAバングラデシュと日本バングラデシュ友好病院を中心とした現地医療チームも、活動拠点のクトゥパロン難民キャンプへ入る本道が水浸しになりました。これにより車両でのアクセスが一時的に閉鎖されキャンプに入れなくなり、診療を中止せざるを得なくなる日が出るなど影響を受けました。

6月下旬現在、雨がいったん落ち着いたため、AMDA診療所の拡張・改築を急ピッチで行いながらモンスーン時期の激しい風雨を乗り越えるための更なる備えを行っています。チームは、一時的にキャンプ内の他の場所で診療活動を続けながら、患者の対応に追われています。

国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、ロヒンギャ難民キャンプには2017年8月25以降にバングラデシュに到着した70万2千人を含む約90万人が暮らしています。

AMDAは4月30日までに1万9,346人の患者を診療、これまでにバングラデシュ国外からの調整員・医療者を他団体の協力を得て延べ10人派遣しています。

 

国籍がなく故郷を追われるということ

今年5月。再度難民キャンプを訪れて目にしたのは、半年前にキャンプを訪れたときと何ら変わることなく、まるで静かな生き物のように存在する簡素なテントの群れでした。支援物資を抱え行き交う人々、所在なくたたずむ若者、無邪気に遊ぶこどもたち。一見活気あるように見える難民キャンプですが、彼らに移動の自由はなく、生活はキャンプ内に制限されています。

大量の難民発生からこの夏でまもなく1年を迎えますが、彼らの社会的立場を保障するものは何もありません。私たちがどんなに力を注いでも支援できないもの、それが、彼らの国籍の取得であり、安心して暮らせる故郷への帰還です。難民として生まれ育った経験を持ち、2月に医療支援に参加したパレスチナ難民であるUNRWAのアリ医師は、「自分が少年の時に見た光景と全く変わらない光景がそこにあった」と振り返ります。

同じイスラム教徒として、厳しい経済状況の中で必死にロヒンギャ難民の方々の生活を支えるバングラデシュ人。また、それを後押しする国外からの支援団体。AMDAは1992年のロヒンギャ難民支援の経験を生かす形で今回の危機を、現地支部のAMDAバングラデシュとともに医療面から支えています。