東日本大震災復興支援(2018/06発行ダイジェストNo.50) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

東日本大震災復興支援(2018/06発行ダイジェストNo.50)

進む東北被災地復興…課題も噴出

気仙沼市南町紫神社前商店街事務局長・AMDA参与 坂本 正人

震災から7年がたち街も区画整理事業が整いつつあるが、かさ上げの終わっていないところも多い。市内の仮設の店舗、住宅は順次取り壊され、町全体もきれいにはなっているが、人が戻って来ない状態が続いている。

私たちの気仙沼内湾にも、災害公営住宅が何件か建設されているが、空き部屋も多い。災害公営住宅は何年かたつと「災害」の名称が取れ、世帯の収入で家賃が決まる設定であり、若い人たちに敬遠されている。道路、インフラ、防潮堤工事も終わらず、まだまだ人が住みたい状況にはなっていない。

気仙沼市では震災から1万人近く人口が減っており、私たち内湾地区は1,100人近くいた人口が640人ほどに減っている。防潮堤は現在工事が止まっている。今年になり国土地理院から土地が隆起しているとの指摘があり、22センチ下げることになったが、下げないまま作っていることが分かった。防潮堤を下げるとなると、工期がずれ、再建が遅れるといった問題が噴出している。今でも住民不在の商店街なので、店主達も気が気でないが、防潮堤を下げろという声が多い。イベントなどでにぎわいは戻っているが、問題は山積みである。震災以前より活気があふれる街になるように、また震災を忘れることなく、風化防止に努めていきたいと思っている。

 

“心の会話”大切に 東北被災民の居場所づくり AMDA大槌健康サポートセンター

センター長 佐々木 賀奈子

震災から7年の月日を経て、復興(福幸)の温度差を痛切に感じています。当センターでは、さをり織り、大工、手芸、郷土料理教室を継続しております。各教室の参加者は、作品制作していると無心になり、周囲の皆さんと意見交換すると色々なアイディアが浮かびワクワクして、教室に参加するのが楽しみだと言ってくれます。いつも参加している方が欠席すると、お互いに気づかい心配し合っています。個々の生活で精一杯の中で、他人を想う温かい心を感じます。

引っ越し、浸水した土地に行政判断で盛土せず再建する不安、新たな住宅環境に慣れず体調不良になり、安堵感と共に7年間の張り詰めていたものが心身共にドッときている様で、鍼マッサージ施術中、諸々の症状を訴える患者さんが多くなりました。「心と身体も楽になりましょう」「少しずつでいいから、なりたい自分になりましょうね」とお声掛けさせていただいています。

町の中心の浸水地区から離れている方の往診や、他市町に引っ越しした方々の治療にも行かせていただいています。仮設住宅から災害復興住宅、個別住宅、他市町へ避難したまま大槌に戻れない方々、日々移り行く中で新たなコミュニティ作りが必然です。

心の会話、無我夢中になれる、昔話が出来る、世代間交流が出来て共に寄り添える場所、心身共に健康になれる居場所、自分再建しよう、と日々奮闘しています。

“心の会話”大切に 東北被災民の居場所づくり 一般社団法人「Tsubomi」

代表理事 大久保 彩乃

震災当時は瓦礫の山だった岩手県大槌町も、現在では盛り土の工事が終息傾向にあり、自力再建に向けた新しい生活を始めています。「再建やまちが完成される=復興した」と思われがちですが、様々な環境が変わっていくと同時に町民の課題も変化していきます。

当法人では町民の心の傷を癒すことを目的として、仮設住宅を中心に音楽演奏を用いて参加者と一緒に歌う巡回サロン「音カフェ」、母子同士の交流の機会・居場所をつくる「ママのための講座・サロン」などを実施してきました。


「ママのための講座・サロン」のようす

音カフェの参加者からは「生演奏を聴くと感動して涙があふれる」「とても癒やされる」などの声があり、ママのための講座・サロンの参加者からは、「子連れで参加できて嬉しい」、「実は特技を持っていてTsubomiのイベントで活かしたい」などの声がありました。町民の心身の健康増進への一助となっていることを実感しております。

一方で、コミュニティの形成というのは、時間をかけて創り上げていく必要があるということも感じております。変動していく町民の課題にこれからも耳を傾け、解決に向けて活動してまいりたいと思います。