現地リポート 「ネパール復興障がい者支援」(2017/10発行ジャーナル秋号) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

現地リポート 「ネパール復興障がい者支援」(2017/10発行ジャーナル秋号)

理学療法士 西嶋 望(ネパール在住)

AMDAによる障がい者支援活動は、現地の障がい者団体をパートナーに今年4月から第三期の活動が継続されています。できる限り支援対象となる障がい者に必要な活動とするためには、より近い立場にある障がい者団体からの提案や情報は大変有益です。それは当事者でないと気が付かない問題や悩みがあるという事によるものです。

これまでの支援は、障がい者のニーズに応じて柔軟に対応してまいりました。ネパール中部地震が発災した2015年に始まった第一期は車いすのニーズが高く、特に寝たきり防止対策として車いすを必要とし、現地で製造した車いすをご使用になる方の身体や環境などの状況をみてお渡ししてきました。

第二期(2016年4月〜17年3月)は、震災で障がい者となった方の多くが自宅などに帰り始めたことから、地方での生活に対して、特に寝たきり予防の必要性の高い方の訪問活動にウエートを移してきました。

第三期が始まった現在、パートナー団体であるCILカトマンズにて、活動の内容を共有する機会をもちました。これまでの車いすやポータブルトイレといった物資による支援に加えて、自立生活に向けた取り組みとして訪問活動について報告しました。


訪問を受け久しぶりに屋外に出た
脊髄損傷患者(中央)

活動は1日に多くの訪問をすることはせず、じっくりとお話しするため一件当たり2〜4時間かかります。これほど時間をかけますと、徐々に理解しあえる関係に変わり、最後は納得して私たちのアドバイスもご理解いただけるようになります。

これまでの訪問対象者数は88人(男性46人、女性42人)で、平均年齢は30.5歳。対象となった障がいは脊髄損傷が最も多く、続いて脳性麻痺など小児発達障がいが多い状況です。現在のプロジェクトの方針として、「救われた命を再び危険にさらさない」として、「寝たきりを防ぐ」ことを主に取り組んできました。

震災後、脊髄損傷リハビリテーションセンターを退院なされた方々も、テント・仮設住宅など住環境の変化、仕事や学校から離れるといったこれまでの生活スタイルの変化、慣れない居住地域における近隣住民との関係性構築など、自立した生活を獲得するためには課題が生じます。一方、震災によらない脊髄損傷の方も多いですし、小児疾患は相談できる機関も少なく家族の不安も大きい状況です。

これらの方々に対して寝たきり予防に必要な道具が車いすです。日本では車いすは移動のためという理解が主ですが、ネパールのような環境では屋内外全てを補う車いすの開発はまだ難しい状況です。まず最低限度、必要なことは寝たきりを防ぐための車いす。ベッドから離れ、部屋から出るための車いすです。それでも寝たきりになってしまう場合には、床ずれ予防や衛生管理、体調維持のための道具が必要になります。

最後に頼りになるのは、やはり人によるサポートだと考えております。どの疾患、障がいの場合でも共通してアドバイスしていますのは、寝たきり・寝かせきりはいけないことです。起きて、ベッドから離れ、部屋から出る、そして外にも出るといった生活スタイルを確立することです。