2016年度年次報告 平和構築活動(2017/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2016年度年次報告 平和構築活動(2017/7発行)

平和構築活動

「医療和平」は、相対する双方に公平な医療を提供することで和平構築に寄与するAMDAの試み。パキスタン、旧ユーゴスラビア・コソボに続きスリランカは3例目となる。

少数民族に多数の民族を管理させるイギリス統治形態の歴史の終焉後、スリランカでもその歴史のひずみの影響を受け、人口の約8割を占めるシンハラ人政府は少数民族タミル人を2等市民扱いする政策が打ち出された。そこで、北部を中心にタミル人の独立運動が起こり、スリランカ国内では80年代初めから20年以上の内戦状態が続いていた。

独立を目指すタミルイーラム解放のトラ(LTTE)と政府の間で2002年に停戦合意がなされ、海外から支援に入ることが可能となった。スリランカの和平推進に向けて明石康日本政府代表からすべての民族に対し公平に日本の顔が見える医療支援が出来ないかという問いかけに菅波茂代表が即応した。

AMDAは2003年2月から北部と南部、北東部で同時に巡回診療と巡回衛生教育を展開。この活動には公用語(タミル語、シンハラ語)、英語の3言語表記によるお互いの文化を知る和平メッセージを込めた冊子の配布を行った。

活動は2005年まで継続したが、内戦の再燃により継続不可能になった。政府軍が北部・北東部のタミル人地域を鎮圧する形で終戦となり、その後民族の融和は国の最大課題の一つとなる。AMDAでは内戦で育った10代の子どもらと日本の子どもらがスポーツなどの交流をする「医療和平」パート?を2001年から実施している。

 

スリランカ「医療和平」パート? 平和構築青少年交流事業

◇実施場所 スリランカ国、トリンコマリー Muthur Central College
◇実施期間 2016年7月27日〜8月3日(活動日は7月29日〜7月31日)

◇派遣者 竹谷和子/AMDAボランティアセンター参与、岩本智子/AMDA本部職員
◇現地協力機関 AMDAスリランカ、St.John’sAmbulanceスリラン力
◇現地事業チーム構成 スリランカ国トリンコマリーMuthr Central Collegeの中学生、キリノッチViveganantha Vidijalajam学校の中学生、マータレKaudupeleiella Sinhaia Vidyalaya, St.Thomas Boy’s School, Kuranboda Central College, Sangamitt Girl’s  School の中学生、それぞれの引率の先生たち、日本からAMDA中学高校生会メンバー2人

◇受益者数 77人

◇事業内容
今年6回目を迎えた本事業は、スリランカ北東部に位置するキリノッチで開催した。AMDA中学高校生会から男女一人ずつ中学生と高校生の計2人が参加した。

スリランカ国内からは民族、宗教が異なる中学生が集まりスタッフも合わせ77人が参加した。開会式後3日間を通し、仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教を訪れる宗教プログラム、スポーツ交流(バレーボール大会)、文化交流等が行われた。中でもキャンプファイヤーやワークショップの実施は興味深く、スポーツ交流で構成されたチーム(異なる学校、民族、宗教の混合チーム)での共同作業はとても有意義だった。

AMDA中学高校生会の2人はどのプログラムにも積極的に参加し、30日の夜、実施校ムトゥールセントラルカレッジでスリランカ現地の学生たちと宿泊を共にし、夜遅くまで話し合ったり交流を深めた。この交流事業を通して国、民族、宗教、文化の違う青少年たちがお互いのことを知り、理解を深め合うことで、このプログラムの目的が充分達成されたと感じる。

参加したAMDA中学高校生会の2人も、それぞれの違いを認め合うことが平和構築につながる第一歩であると話していたことからこのプログラムで多くの気づきや大切なことを学ぶことができたと感じる。

今後もこの事業を継続し、スリランカ国以外においても世界の平和の実現に向け青少年たちの貢献に期待したい。


スポーツ交流(バレーボール)の試合の様子


宗教プログラム(キリスト教会)へ参加加者全員で訪問


バレーボールの試合後、
全員でダンスを楽しみ交流を深める


文化交流の場で
生け花と篠笛の演奏をするAMDA中学高校生会

◇受益者の声
・あと一年で卒業前に受けるGCEOLを通過したら看護学校に入り看護師になるのが目標。このプログラムに参加しよかった。楽しい。
・スリランカ北部と中部の人達が交流することはほとんどない。このプログラムは平和なコミュニティを作るのに貴重なプログラムだと思う。引率として参加し地域の習慣、食べ物などを通じて新しい体験をし、多くのことを学ぶことができた。
・地域の外に出て他の地域や国の生徒と交流する機会は滅多にない。内戦で親を亡くした生徒も参加しているが、彼らにとっても貴重な体験になっていると思う。
・(参加したAMDA中学高校生会2人から) このプログラムはとても多くの大切なことを学ぶことができた。この経験を活かし様々な活動に取り組んでいきたい。スリランカ現地の様子を日本のいろんな人に伝えていくことが大切だと思う。
等の声があがった。

 

GPSP(世界平和パートナーシップ構想)魂と医療プログラム


◇実施場所 モンゴル
◇実施期間 2016年9月4日

◇派遣者 菅波茂/AMDAグループ代表、ドンラオ/AMDAシンガポール支部長、高裕子/川崎医療福祉大学 教授、守田好江/日本視能訓練士協会 顧問、難波妙/AMDA GPSP支援局長、松永健太郎/AMDA本部職員
◇現地協力団体 AMDAモンゴル、AMSAモンゴル、アイリスツアー

◇受益者数 30人

◇事業内容
モンゴル仏教総本山ガンダン寺で2016年9月4日、第9回平和祈願祭が大本モンゴル本部とともに行われた。

ハルハ河戦争から77周年となる本年も、宗教法人大本様の参加をいただき、ガンダン寺の住職らとともに、第二次世界大戦で尊い命を捧げたモンゴル、日本両国の犠牲者の冥福を祈り、世界平和への努力を誓った。

祈願祭は、ガンダン寺モンゴル仏教学校校長バムバジャム師のあいさつの後、大本国際愛善宣教課の鬼塚義彰氏、バンザラグチ ダルハジャヴ氏が祝詞を奏上。AMDAグループの菅波茂代表が「モンゴルと日本の人々の平和への思いを深く心で読み取る努力を続け、相互扶助の精神で世界平和の実現に動き出すことが求められている」と訴えた。

式典の後、AMDAガンダンロータスプロジェクトで昨年、モンゴル国内の6カ所の僧院から60人の少年僧に法衣が贈られたことが報告された。さらに、少年僧への食糧支援が提案され、実施が決まった。

式典は菅波代表のほか、AMDAシンガポール支部のドンラオ支部長、川崎医療福祉大の高裕子教授と学生4人、日本視能訓練士協会の守田好江顧問、AMDA本部、AMDAモンゴル支部長、AMSA Mongoliaの学生らも出席した。