近い将来、南海トラフ地震・津波の発生が懸念され、33万人の死者と膨大な数の被災者が予測されています。なかには南海トラフ地震の発生率は2018年度には100%に達すると指摘する専門家もいます。杞憂に終われば幸いですが、AMDAでは万一に備え、被災予想地域の自治体と順次、連携協力協定の締結を進める一方、関係団体との調整会議、自衛隊のヘリコプターによる緊急医療チームの輸送訓練などを具体化させています。 |
トリアージ訓練を行う医師
AMDAは岡山県内外の医療関係者や自治体、経済団体に協力を呼び掛け、南海トラフ地震の対応を協議する調整会議を、2015年6月に丸亀市、9月に総社市で、2016年7月には岡山市で開催しました。2015年11月には南海トラフ災害が起こった際、自治体と連携して円滑に医療支援活動を行うことを目的に、「輸送と通信のシミュレーション」を行いました。
AMDAは四国の高知県と徳島県で最大レベルの被害を想定し、両県と各自治体との間で連携協力協定の締結を順次進め、両県の10カ所の避難所で医療支援を行う準備をしています。被災者の生活関連物資については岡山経済同友会との協定に基づいて企業のご支援をお願いしています。また、台湾と韓国、シンガポールなど、海外支援ネットワークの構築も進めております。
自衛隊のヘリコプター
治療のシミュレーションを行うスタッフ
「防災の日」である9月1日には、徳島県の防災訓練の中で、陸上自衛隊第14旅団(善通寺市)とNEXCO(西日本高速道路)の協力でAMDAの医療チームの輸送を行いました。医師4人からなるAMDAチームは高松自動車道高瀬パーキングエリアで、自衛隊のヘリコプター(UH−1)に乗り込み、徳島県海陽町立海南病院そばの広場に到着。AMDA看護師2人を加え、町内の老人保健施設で約2時間、治療の優先順位を決める「トリアージ」や負傷者搬送の手順を確認。海南病院に開設された現地医療対策本部と衛星電話での通信訓練も行いました。
海南病院の対策本部
訓練に参加した医師4名
今後も協力自治体・団体と共に南海トラフ災害に備え、準備・訓練を重ねていきますが、想定外の事態も考えられます。予測される諸課題の把握と万全の対策づくりを目指しています。皆様のご理解とご支援をよろしくお願いします。
■防災訓練に参加してくださった医師の先生方
荻野 隆光/川崎医科大学付属病院救急科・高度救命救急センター部長
初雁 育介/戸田中央医科グループ
森 將晏/AMDA医療統括
佐藤 拓史/AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム運営委員会副委員長
訓練に参加した佐藤拓史医師の声
9月1日の徳島県防災訓練では、自衛隊とNEXCOとの連携による災害時自衛隊ヘリAMDA医療チーム輸送の実動訓練を実施しました。この訓練は南海トラフ地雲発災時、徳島県の甚大な被害地域への陸海路のアプローチ困難を想定したものです。いかなる状況下でも超急性期に自衛隊ヘリ輸送にて、AMDA医療チームが現地入り出来るという重大な意義をもっています。徳島県、DMAT、自衛隊、各関係機関と連携しながら避難所における救護所立ち上げ、急性期に不可欠なトリアージ、初期外傷治療のシミュレーションを行いました。菅波代表の提唱する広域防災自治体連携において質の高い緊急医療支援をAMDAが担うべく平常時からの準備をしっかり取り組んでいくことを確認しました。
高知県黒潮町 大西勝也町長からのメッセージ
「犠牲者ゼロ」を目指す
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の約1年後、内閣府より新想定が公表され、黒潮町には「津波高34.4m、最大震度7」という国内最大の数値が示されました。この数値は、あまりにも衝撃的なものであり町民からは「あきらめ」に似た声が聞かれましたが、そこから黒潮町の「犠牲者ゼロ」を目指した防災まちづくりをスタートさせました。
避難道や津波避難タワーといったハード整備はもちろんのこと、全職員が担当地区を持ち住民と共に防災活動を行う『職員地域担当制』や『戸別(世帯別)津波避難カルテ』といった取り組みを行い、官民協働で進めてきたワークショップをはじめとする防災活動は1,000回を超えました。「犠牲者ゼロ」という目標に向かって一歩ずつ進んでいると実感しています。
しかしながら、本町の医療体制は脆弱であり「助かった命をどう繋ぐか」といった重大な課題があります。いざ、ことが起こった場合の不安は尽きず、AMDAと黒潮町が「大規模災害時の支援に関する協定」を締結できたことは大変心強い支えとなっています。
防災の最大の目標は「犠牲者ゼロ」以外にあり得ません。先日第4次の改訂を終えた「黒潮町南海地震・津波防災計画の基本的な考え方」にのっとり、今後も各種対策を進めてまいります。