2015年度年次報告 和平構築事業(2016/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2015年度年次報告 和平構築事業(2016/7発行)

「医療和平」とは

「医療和平」とは、相対する双方に公平に医療を提供することで和平構築に寄与するAMDAの試みで、パキスタン、旧ユーゴスラビア・コソボに続きスリランカは3例目である。

少数民族に多数民族を管理させるイギリス統治形態の歴史の終焉後、スリランカでもその歴史のひずみの影響を受け、人口の約8割を占めるシンハラ人政府による少数民族タミル人を二等市民扱いする政策が打ち出されたことから、北部を中心にタミル人の独立運動が起こり、スリランカ国内では80年代初めから20年以上の内戦状態が続いていた。

独立を目指すタミルイーラム解放のトラ(LTTE)と政府との間で、2002年に停戦合意がなされ、その後内戦被災地に海外から支援に入ることが可能になった。スリランカの和平推進にむけて明石康日本政府代表からの、タミル、シンハラ、タミルムスリム、困難な関係にあったこの3グループに対して公平に日本の顔の見える医療支援ができないかという問いかけに、菅波代表が即応し、AMDAでは2003年2月から北部キリノッチ及びバブニア、南部ハンバントータ、北東部トリンコマリで同時に巡回診療と巡回衛生教育を展開した。

この活動にはタミル語・シンハラ語・英語の3言語表記によるお互いの文化を知る和平メッセージを込めた複数の衛生教育冊子の作成と配布も含まれていた。このような3地域での活動を2005年まで継続したが、内戦の再燃により継続不可能となった。

政府軍が北部・北東部のタミル人地域を鎮圧する形で終戦となり、その後民族の融和は国の最大課題の一つとなる。当事者であるタミル人とシンハラ人に日本人が加わることで融和しやすくなる効用もあり、内戦の中で育った両グループの10代の子どもらと日本の子どもらのスポーツ交流を2011年から「医療和平」パート?として関催している。

スリランカ「医療和平」パート2 和平構築スポーツ交流事業


キノリッチで行われたバレーボール大会

◇実施場所 スリランカ国 キリノッチ vivekanada vidyalayam 学校
◇実施期間 8月19日〜26日(活動は22日〜24日)

◇派遣者 ニティアン・ヴィーラヴァーグ/本部職員、竹谷和子/AMDAボランティアセンター参与

◇現地事業チーム構成 スリランカ国vivekanada vidyalayam学校の中学生、トリンコマリーからの中学校学生、マータレの中学校学生それぞれ引率の先生達、日本からAMDA中学高校生会メンバー2人

◇事業内容
今回5回目となるこのプログラムはスリランカ北部に位置するキリノッチで行われ、AMDA中学高校生会から高校生男女ひとりづつ2人が参加した。

スリランカ国内から宗教、民族が異なる中学生が集まり、スタッフも合わせて120人が参加した。開会式後、キリノッチにあるヒンドゥー教、仏教、イスラム教、キリスト教の施設を訪問する宗教プログラム、交流スポーツプログラム(バレーボール大会)、文化交流等が行われた。


多言語、多宗教での交流

AMDA中学高校生会の二人は全てのプログラムに積極的に取り組み、現地の中学生達との交流はすばらしく常に彼らたちに深く関わりたい、理解したいという思いが満ち溢れていた。キリノッチ最後の夜は現地の学校に泊まり、夜遅くまで子どもたちと話し合っていたのが印象的であった。今回の目標である民族間の対話を深め、国・宗教・民族・文化を超えた交流を図ることは十分達成できたと感じる。

参加した高校生達は今回のプログラムでより理解を深め、お互いを認め合うことが平和構築につながる一歩になると肌で感じることができたと話している。そして今後この経験をこれからの人生に活かしたいと感じている。

◇受益者数 120人

◇受益者の声
スリランカ現地の中学生や先生達から「すばらしい、またこのようなプログラムを関催してほしい、生徒達もいい学びになった」との声。

日本から参加した高校生会からは「今回の目標である民族間の対話を深めることのすばらしさ、国、民族、宗教をこえた交流でより理解が深まり認め合うことが、どんなに大切なことか、肌で感じることができた。非常に貴重な経験をいかし、今後平和構築も含め国際的な活動をしたい」などの声があがった。

◇現地協力機関 AMDAスリランカ、St John Ambulance、スリランカ、ライオンズクラブ306A1、スリランカ国軍

 

GPSP医療と魂のプログラム:GPSP SMP


世界平和を祈願した式典

◇実施場所 モンゴル、スリランカ、インドネシア、フィリピン
◇実施期間 9月10日、10月29日、11月18日、12月1日

◇参加者 日蓮宗斎藤堯圓様、黒住宗道先生、池田光男様、臨済宗大屋昌基様 山内正樹様 魚住和寛様 鮎川直樹様、AMDAボランティア矢部賢次様、朝
子様、天理教、平野恭助様、関根慶三様、向井正志様、JAIJOON CHIRAPA様
◇派遣者 AMDA  難波妙、ニティアン ヴィーラバーグ、田中悛祐、岩本智子
◇現地事業チーム構成 AMDAモンゴリア、大本モンゴルセンター、AMDAスリランカ、サルボダヤAMDAインドネシア、AMDAフィリピン、レイテ医師会

◇事業内容
GPSP(世界平和パートナーシップ)医療と魂のプログラムは、AMDAが築いていた「聞かれた相互補助」にもとづく広範囲で総合的なネットワーク。宗派・教団を超えた宗教指導者、多様な文化的背景をもつ多くの人が参加し、ともに過去から学び、世界の平和を祈り、国際社会に平和の尊さを提唱する事業を意味する。

第二次世界大戦の犠牲者には宗教者による慰霊祭、家族にはAMDAの医療サービスを提供するなど宗教者とAMDAの合同事業として2000年から実施している。

2015年は9月10日にモンゴル、10月29日にスリランカとコロンボ、11月19目にインドネシア、12月1日にフィリピンで行われた。

この慰霊祭は2005年から災害犠牲者の慰霊も加え、これまでアジアの13カ国・地域で行われ、参加者は1万人となった。

◇受益者数 340人