2015年度年次報告 復興支援活動(2016/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2015年度年次報告 復興支援活動(2016/7発行)

ネパール中部地震被災者支援活動


車いすを寄贈する理学療法士の西嶋望さん(左)

◇実施場所 ダディング、カトマンズ、バクタプール、ラリトプール、チトワン、ブトワル、アルガカンチ、ヌワコット、シンデゥパルチョク郡病院および地域、カトマンズ、岩手県、岡山県、神戸市
◇実施期間 2015年5月26日から継続中

◇派遣者 AMDAネパール担当部長 アルチャナ・シュレスタ・ジョシほか
◇現地協力機関 AMDAネパール支部、ネパール医師会、トリブバン大学教育病院(TUTH)、災害医療支援委員会、カトマンズCIL、イメージチャンネルほか

◇受益者数 5,579人

◇事業内容
AMDAはネパール中部の大地震の緊急支援活動が終了した2015年5月26日から、復興支援活動を継続している。

まず被災者への精神医療が行き届いていない状況から、日本医師会とネパール医師会と共同で心理カウンセリングの養成講座を開催。専門知識と技術を取得した380人が各地の出身地で活動している。

震災被害は特に山間部が大きく、医療支援が行き届かないことから、トリブバン大学教育病院と合同で無料巡回診療を実施した。シンドゥパルチョク郡病院は使用できないため、仮設診療所で治療。多数の患者が詰めかけて医療従事者不足となり、同大学教育病院から医療チームが派遣され一週間交代で治療に当たった。

震災で負傷し、障がいを抱えた人々も数多い。AMDAの支援を受けたネパール在住の日本人理学療法士が現地で車椅子や補助具を製造し、必要としている人に提供。台所やトイレに行くことが出来るようになるなど自立の手助けをしている。

また、ネパールのテレビ局クルー3人が研修を受けるため来日した。これは、近い将来起こるだろうと想像している地震に備えて、ネパール国民の防災意識を向上する番組を制作するためである。

◇受益者の声 地震発生後に人材不足していた、シンドゥパルチョク郡病院にTUTHから一週間交代で医療従事者を派遣してくれたことで、病院を訪れる患者に治療を提供できました。支援してくださったAMDAに感謝しています。

 

大洋州大型サイクロン「パム」被災者支援活動


支援物資を寄贈する様子

◇実施場所 キリバス国タラワ市テモアニワエおよびヌカンテカインガ
◇実施期間 2015年6月12日〜7月8日

◇派遣者 ニティアン・ヴィーラヴァーグ/AMDAインターナショナル事務局長
◇現地事業チーム構成 調整員1名、現地協力団体

◇受益者数 2,000人以上

◇事業内容
2015年3月に大洋州を襲った大型サイクロン「パム」はバヌアツ共和国、ツバル、キリバス共和国などの国々に大きな爪痕を残した。AMDAは3月18日に看護師1人、調査員1人からなる医療チームを派遣し、国家非常事態宣言が出されているツバルでの物資提供などを実施した。さらに6月12日には第2次派遣者として調整員1人がキリバスに向けて出発。復興支援に向けた調査をスタートさせた。

キリバスでは被災前から上下水道の設備がなく、被災で公衆トイレなどの設備も破壊され、衛生状態の悪化が懸念されていた。このため、AMDAは公衆トイレの再建の支援を決定し、建設を手掛けた。

◇受益者の声 「(医療支援物資に対して)ツバルにとってとても大きな支援となります。遠い日本からわざわざツバルに足を運んでくれた支援に心より感謝しています。」(現地災害対策本部代表者の言葉)

◇現地協力機関 キリバス赤十字 (KRCS)、キリバス国女性、青年、社会問題省Ministry of Women Youth & Social Affairs (MWYSA).

 

東日本大震災復興支援活動

◇実施場所 岩手県上閉伊郡大槌町、宮城県気仙沼市、宮城県本吉群南三陸町ほか
◇実施期間 2011年3月12日から継続中

◇派遣者 (2015.4.1〜2015.3.31)AMDA本部職員含むのべ119人ほか、現地雇用3人(計122人)

◇受益者数 9,717人

◇事業内容
2011年3月11日にマグニチュード9.0の地震が発生、大津波による甚大な被害をもたらした東日本大震災。AMDAは震災翌日の12日に宮城県仙台市の被災地に入り、緊急医療支援活動として4月末までに延べ149人を派遣。その後も途切れることなく多彩な復興支援事業を継続している。震災から5年が経つ今、仮設住宅から公営住宅への入居・自宅再建など、町も移行期を迎え、また新たなコミュ二ティ形成の必要性が重要視されている。同時に人口減少も深刻化しており、復興の担い手の不足も問題となっている。

医療・健康支援


子育て支援プロジェクト「ママスマイルひろば」

AMDAは2011年11月に岩手県上閉伊郡大槌町でAMDA大槌健康サポートセンターを開設。心身の健康支援をテーマに、地域スタッフが中心となり被災者の心身の健康、食生活の改善、子育て支援、運動促進などに着目した教室やイベントを開催している。

同センター内にある鍼灸院は地元の佐々木賀奈子鍼灸師が運営。町外避難者が住む県内内陸部への往診や、独居の仮設住まい高齢者への訪問を行い、治療をしながら現在の町の様子を伝えている。

安全な遊び場がない母親と子どものために、地域の集会所にキッズスペースを作り、子育て世代が気軽に立ち寄れる居場所を提供している。

教育支援

2015年度は「AMDA東日本国際奨学金」の支給を継続。将来医療従事者を目指す、各学校長の推薦を受けて選定された学生17人への支給を行った。在校生は、岩手県立大槌高校、宮城県立志津川高校、水沢学苑看護専門学校。これまでののべ稗益者数は298入となった。

第5回目となる岡山経済同友会と大学コンソーシアム主催の大学生ボランティアバスの受け入れ、調整を行った。

また、岡山県による高校生地域防災ボランティアリーダー養成研修の大槌町受け入れも担当した。

生活・自立支援

被災地の仮設商店街を中心とした被災地間を結ぶ事業として、「復興グルメF-1大会」を2013年1月から継続して行っている。本年は岩手県上閉伊郡大槌町、宮城県気仙沼市、宮城県本吉群南三陸町の3か所で開催された。本事業は、各被災他間が情報や知恵を共有することで新たな復興への協力体制を形成し、東北沿岸部一帯が復興に向けて一丸となり、東北の現状および情報を全国的に発信することを目的としている。

震災翌年から実施しているNPO仙台夜まわりグループと実施する震災ホームレスを対象とした食糧支援も継続し、4年目を迎えた。


11月15日第11回復興グルメF-1 大会

◇受益者の声
・大学を卒業したら薬剤師になって地元に戻ってきたいです。医療的な面から復興の手伝いができたらと思います。(AMDA東日本国際奨学金 奨学生)
・同世代の子どもをもつお母さんたちとの交流を楽しむことができ、子どもものびのび過ごすことができました(大槌健康サポートセンター利用者)
・震災の現場はやはり実際にその場所を訪れないとわからないことが多いと感じました。今回の経験を周囲に少しでも伝えていけたらと思います。(復興グルメF-1大会ボランティアバス参加者)

 

フィリピン台風30号(2013)復興支援活動


レイテ島で活動するAMDA看護師

◇実施場所 フィリピン共和国 レイテ島タクロバン市
◇実施期間 2014年1月1日〜2016年3月31日

◇現地事業チーム構成 レイテ医師会の医師を含む医師、看護師、インターン生、地元ボランティアなどのべ154名

◇受益者数 842人

◇事業内容
2013年11月8日、フィリピン南部の島々に上陸した台風30号により、死者6,183人、行方不明者1,785人となる大きな被害が発生した。AMDAでは、緊急医療支援活動を2013年11月10日から実施し、2013年12月末までに、8か国、のべ25人のスタッフを被災地に派遣。レイテ島、サマール島ほか6島で医療支援活動を中心とした様々な活動を実施した。2014年1月からは復興支援活動として、被災地の協力機関と連携しながら、支援活動を継続している。

レイテ医師会館 医療機器寄贈と無料巡回診療


AMDAが寄贈した医療機器(血圧計)

AMDAは日本医師会、福山医師会と協力しレイテ医師会の会館再建を支援した。2015年3月に完成したレイテ医師会会館では、従来行っていた健康指導などの活動拠点として使用される他、レイテ島近辺で災害が起こった場合、災害支援拠点としての役割も担っている。2015年7月には、AMDAはレイテ医師会に対し、聴診器、血圧計、体重計、ドップラー超音波器などを寄贈した。

これらは、今後実施される巡回診療や妊婦健診などにも活用される。7月5日にはこれらの機器を活用して、レイテ医師会が無料巡回診療および健康指導を行った。これは、レイテ医師会がフィリピン産婦人科医会第8区とタクロバン市の協力の下実施されたもので、タクロバン市GMAカプソ村(Kapuso Village)の女性センターを会場に実施された。医療活動には、レイテ医師会の産婦人科医17名をはじめとする看護師、地元協力者、インターン生など計37名が参加し、健康教育、予防接種や妊婦検診を行った。

健康教育では、9歳から12歳の子供たちを対象に思春期、人の生殖や衛生についての教育を行い、28人の子供たちに子宮頸がん予防ワクチンを投与した。また、妊婦20名に対して妊婦検診が行われ、ビタミン剤や鉄剤が無料で配布された。

レイテ医師会では、AMDA協力の下、2016年3月にも復興医療支援としてタクロバン市で医療支援活動を行った。2016年3月10日の「妊婦の日」には、85名の妊婦を対象に妊婦健診を行い、同時に1か月分の鉄剤などを配布した。また、3月12日と19日にAMDA協力の下、レイテ医師会が行った巡回診療では、レイテ医師会の医師を含むのべ79名の協力者が参加した。診察を受けた709名のうちおよそ半数に風邪症状がみられた。

◇受益者の声 平日は仕事から抜けることが難しいため、土曜日に無料巡回診療があって良かった。薬を購入するのも経済的に厳しいため、大変助かる。

◇現地協力機関 レイテ医師会