2015年度年次報告 緊急支援活動(2016/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2015年度年次報告 緊急支援活動(2016/7発行)

ネパール中部地震緊急医療支援


◇実施場所 ネパール・カトマンズ郡、シンドゥパルチョク郡、ゴルガ郡、ルパンデヒ郡、ヌワコット郡
◇実施期間 2015年4月25日から5月25日

◇派遣者 菅波茂/医師/AMDAグループ代表、山本太郎/医師/AMDA ERネットワーク登録メンバー、米田哲/医師/AMDA ER ネットワーク登録メンバー、佐藤拓史/医師/AMDA ER ネットワーク登録メンバー、高橋宗康/医師/AMDA ERネットワーク登録メンバー、加藤辰一朗/医師/AMDA ERネットワークメンバー、柴田幸江/看護師/AMDA本部職員、神田貴絵/看護師/AMDA ERネットワーク登録メンバー、押谷晴美/看護師/AMDAERネットワーク登録メンバー、神崎真姫/看護師/AMDA ERネットワークメンバー山田裕子/看護師/AMDA ERネットワークメンバー、酒井ひろ子/助産師/AMDA ER ネットワークメンバー、青山寿美香/薬剤師/AMDA ERネットワーク登録メンバー、西嶋望/理学療法士/AMDA ER ネットワークメンバー、大政朋子/調整員/AMDA本部職員、アルチャナ・シュレスタ・ジョシ/調整員/AMDAインターン、ニッティヤン・ヴィーラバァーグ/調整員/AMDA本部職員、ネパール、海外並びに派道者合計121人

◇現地事業チーム構成 AMDA本部派遣者、AMDAネパール支部、AMDAダマック病院、シッダールタ母と子の病院、トリブバン大学教育病院ほか
◇受益者数 4,482人


診察する日本とネパールのAMDA派遣医師ら

◇事業内容
4月25日15時11分(現地時間11時56分)、ネパールの首都カトマンズから北西77?(北緯28.16度、東経84.32度)のゴルカ郡を震源とするマグニチュード7.8の大地震が発生。5月12日にはマグニチュード7.3の余震があり、被害は死者数が8,702人、50万軒を超える建物が全壊し、27.7万軒を超える建物が半壊した。(国連発表・6月3日)

AMDA本部ではAMDAネパール支部とともに被災地の支援を決定。発生翌日の26日には日本から第1次医療チームを派遣した。さらに、AMDA海外支部およびGPSP(世界平和パートナーシップ)のメンバーにも支援活動の参加を要請した。

これにより、日本、インド、バングラデシュ、カナダ、カンボジア、フィリピンの6カ国27人を被災地に派遣し、AMDAネパール支部とともに医療を中心とした支援活動を行った。ネパール人医療スタッフを合わせると、120人を超える医療メンバーとなった。

震災直後は擦過傷、打撲などの患者が多く、骨折などの重症患者はレントゲンや手術設備のある大学病院などの施設に搬送されていた。時間の経過とともに、ストレスによる高血圧やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者なども目立つようになった。

AMDAネパール支部長が勤務するトリブバン大学教育病院では、震災直後から切断肢や脊髄損傷などの患者が搬送され、ネパール人医師らにより1週間で350件以上の手術を行っていた。術後のリハビリが追いつかない状況であったため、AMDAは理学療法士を派遣。約2週間にわたり入院や外来など延べ263人の患者をサポートすることが出来た。

◇受益者の声 遠いところからサポートしに来てくれて本当に良かった。

◇現地協力機関 AMDAネパール支部、AMDAダマック病院、シッダールタ母と子ども病院、トリブバン大学教育病院、ネパール医師会

 

台湾粉じん爆発災害


報告をするAMDAグループ菅波代表(台湾)

◇実施期間 2015年7月2日〜3日

◇派遣者
氏家良人/川崎医科大学附属病院救急科教授/日本集中治療医学会理事長
菅波茂/AMDAグループ代表/日本医師会国際保健検討委員会委員

◇現地及び日本での協力機関
台北駐日経済文化代表處、日本医師会、台湾医師会

◇事業内容
6月27日、台湾の新北市にあるテーマ―パークでカラーパウダーを使ったイベント中に発生した粉じん爆発災害に対して、台北駐日経済文化代表處と日本医師会の呼びかけによる共同事業として、氏家良人医師、菅波茂医師による医療調査を、台湾医師会協力のもと、7月2日と3日に台北市にて行った。水着での催事場で発生したため被害が重くなり、500人以上が負傷するという戦争以外では最大級の熱傷被害惨事であった。調査に基づき、日本集中治療学会、日本救急医学会、日本熱傷学会からの6名の医師による医療チームが日本医師会から12日から15日まで派遣されることとなった。

 

北関東豪雨災害被災者 緊急支援活動


慣れない避難所生活を送る地元住民に
話しかけるAMDA看護師

◇実施場所 栃木県日光市、鹿沼市
◇実施期間 2015年9月12日〜14日

◇派遣者 山河城春/看護師/AMDA ERネットワーク登録メンバー、田中俊祐/調整員/AMDA職員
◇現地事業チーム構成 総社市職員3名(総社市・AMDA合同事業)

◇受益者数 33名

◇事業内容
9月10日から11日にかけ、台風18号から変わった温帯低気圧の影響で、栃木県を中心とした北関東や東北の広い地域に豪雨災害が発生。土砂災害による死者や堤防決壊、家屋の浸水など大きな被害が出た。

栃木県日光市の市長から総社市長へ支援要請が入り、「AMDAグループと総社市との多文化共生に関する協定」に基づき合同チームを編成。総社職員3人とAMDA医療チーム2人(看護師と調整員)が12日夕、日光市に到着した。

水が少しずつ引きつつあったものの、今後も降雨が予想されるなか、市職員も住民も不安な時を過ごしていた。特に慣れない避難所生活で不眠を訴える人も多くいた。衛生用品や生活支援物資の備蓄が不足しており、持参した支援物資(大人用紙おむつ、タオル、外用湿布薬、マスクなど)は非常に喜ばれた。

また、孤立しかけていた芹沢地区で新たに避難所となった保育園を訪れ、支援物資の寄贈のほか、避難者の血圧測定、服薬の有無の確認など健康チェックをすることが出来た。

日光市の活動の後、鹿沼市を訪問。浸水した家屋の片付けを手伝った。

◇受益者の声
「岡山から来られたのですか。遠くから来てくれてありがたい。」

◇現地協力機関 栃木県日光市災害対策本部

 

ミャンマー洪水被害被災者に対する緊急医療支援活動


治療を行うAMDA看護師

◇実施場所 ミャンマー・イェージ町、ナタンチョング町
◇実施期間 2015年8月15日から10月16日

◇派遣者 柴田幸江/看護師/AMDA本部職員
◇現地事業チーム構成 AMDA看護師1人、ミャンマー医師会の医師5人 計6人

◇受益者数 約200人

◇事業内容
サイクロンの影響により7月中旬から続く大雨は、ミャンマーの広い地域で洪水・土砂崩れによる甚大な被害をもたらした。AMDAはミャンマー医師会と合同で、支援活動の実施を決定。8月14日に看護師1人を派遣した。

AMDAとミャンマー医師会の合同医療チームは16日、ヤンゴンから約130?離れたパッティン市エイアールワディ区で二手に分かれ、イェージ町とナタンチョンク町で医療支援活動を行った。少しずつ水は引き始めていたものの道路はぬかるみ、人の膝の高さまで浸水している地域も多い状態だった。

ナタンチョング町ではミャンマー医師会の5人とAMDA看護師、地元病院の看護師が合同で巡回診療を実施。約4時間の活動で小児60人を含む計200人の患者を診察することが出来た。小児患者の主な疾患は急性呼吸器感染症で、成人では労作性呼吸困難、高血圧、筋肉痛を訴える人が多くみられた。

また、浸水により水田が大きな影響を受けており、主食である米が不足していた。このため、ナタンチョング町タウンシップ病院に対し、米850?、ヌードル480袋などを支援物資として渡した。

◇現地協力機関 ミャンマー医師会

 

フィリピン台風24号被災者に対する緊急医療支援活動


医療支援活動中のAMDA岩本看護師(右から2人目)

◇実施場所 フィリピン共和国 パンガシナン州リンガヤン町
◇実施期間 2015年10月23日〜28日、12月2日〜6日

◇派遣者 岩本智子/看護師(米国資格)/AMDA職員
◇現地事業チーム構成 現地警察の医師3名、看護師1名、保健師10名、マッサージ師4名、ボランティア7名 計25名

◇受益者数 660人と1,000世帯

◇事業内容
10月18日にフィリピン・ルソン島東部のオーロラ州に上陸した台風24号は上陸から3日間、ルソン島上空に停滞。同島中部から北部にかけて広い範囲で水害が発生した。

台風被害が深刻なバンガシナン州出身のAMDA協力者からの要請を受け、AMDAは21日に緊急支援を決定。23日に本部から看護師1人を被災地に派遣した。看護師は現地協力者と合流し、被災地の一つであるバンガシナン州に移動したが、収穫直前の農作物は甚大な被害を受けていた。

翌24日には、地元の医師や看護師、マッサージ師らの協力の下、ワワ地区とアプラヤ地区の2カ所で医療活動と食糧支援を行った。

12月3日にはフォローアップ活動として看護師を再び派遣。井戸の設置費用をAMDAが支援することが決定した。井戸の増加に地域住民は「少し早めのクリスマスのようだ。ありがとう」と感謝の気持ちを述べた。

フィリピン国家災害対策本部によると、台風24号による死者は48人、負傷者83人、行方不明4人。約73万世帯、300万人以上が被災した(フィリピン国家災害対策本部最終更新2015年11月3日発表)

◇受益者の声 「家が膝の高さまで浸かった。今は電気も通り、家の片づけに追われている。日本から支援に来てもらえてうれしい。」

◇現地協力 パンガシナン州リンガヤン町出身の現地協力者

 

フィリピン台風27号被災者に対する緊急医療支援活動


医療活動をするAMDA看護師

◇実施場所 フィリピン共和国 サマール島北サマール州ヴィクトリア町
◇実施期間 2015年12月20日〜2016年1月1日

◇派遣者 岩本智子/看護師(米国資格)/AMDA職員
◇現地事業チーム構成 医師2名、看護師1名、DAPスタッフ7名、地元ボランティア10名

◇受益者数 のべ755人と2,010世帯

◇事業内容
12月14日にフィリピン中部・サマール島に最初に上陸した台風27号は、同国で広範囲に大雨・暴風をもたらした。AMDAが派遣した看護師1人は23、24の2日間、フィリピン開発アカデミー(DAP)と協力し地元の協力者とともに被災地の北サマール州ヴィクトリア町内の2,010世帯を対象に食料物資支援を行った。続いて29日は医療支援と炊き出しを実施した。診療にはフィリピン人医師2人、看護師1人、DAPスタッフ7人、地元ボランティア10人とAMDAの看護師1人が当たり、患者355人が無料診療を受けた。診療した医師によると、上気道感染、尿路感染の患者が多く、下痢の子どもや高血圧症、糖尿病の高齢者もいた。

台風27号による死者は42人、負傷者24人、行方不明4人、被災者は約28万人にのぼった(フィリピン国家災害対策本部最終更新12月24日発表)。

◇受益者の声 「日本からわざわざ来てくれたのを聞いて驚いた。医師に診察してもらう機会を作ってくれてありがとう」

◇現地協力機関 フィリピン開発アカデミー(DAP)他、ヴィクトリア町内の各地区のリーダー

 

アフガニスタン北東部・パキスタン地震被災者に対する緊急支援活動


甚大の被害を受けた
アフガニスタン・パンジシール州

◇実施場所 パキスタン・イスラム共和国 カイバル・パクトゥンクワ(KP) 州マルダーン県ファティマ地区
◇実施期間 2015年10月27日〜12月31日

◇現地事業チーム構成 NRSPスタッフ5名他

◇受益者数 4世帯

◇事業内容
2015年10月26日、アフガニスタンのバダクシャン州にあるヒンドゥークシュ山脈を震源とするマグニニュード7.5の地震が発生。アフガニスタンとパキスタン両国に大きな被害をもたらした。

AMDAは発災翌日から地元協力者であるAMDAアフガニスタンとパキスタンの現地NPOのNRSPと連絡をとり、被災者支援を決定。 AMDAアフガニスタンでは現地調査を行ったものの、現地の事情により支援活動を見合わせた。パキスタンでは、NRSPが日ごろから活動しているKP州内のマルダーン県を含む3県で174軒の家屋に被害があったことが判明。そこでKP州マルダーン県ファティマ地区の中で経済状況が厳しい4世帯に建築資材を提供した。資材を受け取った被災者たちは11月中旬から1か月かけて家の修理を行った。

◇受益者の声 「今回の地震により多くの経験をしましたが、自分を憐れむのではなく、神様、家族、そしてNRSPとAMDAに感謝しています。私の家族は地震の後、多くの困難に直面しました。2ヶ月間近隣の家にお世話になりましたが、支援していただいた建築資材を使って2部屋を再建し、家族で自宅に暮らせるようになりました。」
◇現地協力機関 National Rural Support Programme (NRSP)

 

台湾南部地震


台南市政府社会局職員に義損金を渡す
AMDA職員(左)

◇実施場所 台湾・台南市
◇実施期間 2016年3月9日〜3月11日

◇派遣者 成田奈美

◇事業内容
2016年2月6日午前3時57分に台湾南部でマグニチュード6.6の大地震が発生。これに伴い台南市で震度7級の強い揺れを観測、115人が死亡した。AMDAは職員を台南市に派遣し3月10日、台南市政府社会局へ義捐金を届けた。

台湾市政府社会局によると、地震発生直後に水が止まり不便をしいられたが、台湾市政府が2月8日に立ち上げた防災対策本部の迅速な対応で、4週間後で元に戻ったという。

日本から東日本大震災の返礼の気持ちで義捐金を届けに来たことを伝えると、大変喜ばれ、感謝の気持ちを伝えられた。