AMDA東日本大震災復興支援活動(2012/10発行ジャーナル10月秋号掲載) – AMDA(アムダ)
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国連経済社会理事会総合協議資格NGO

AMDA東日本大震災復興支援活動(2012/10発行ジャーナル10月秋号掲載)

AMDA東日本大震災復興支援活動

期待される被災地での鍼灸治療

AMDA では震災後間もない昨年3月から避難所内や巡回診療先で、鍼灸治療を岩手県大槌町で実施してきました。この経験を活かし、宮城県雄勝町でも鍼灸治療を取り入れ、9 月から保険診療対象となりました。痛みをやわらげるだけでなく、心身のバランスを整える作用をもつ鍼灸は、いずれの被災地の人々にも期待を持って診療日を待ち望まれる存在になっています。 AMDA 大槌健康サポートセンター内で施術する佐々木賀奈子鍼灸師は、自身が津波にのまれ、町内にあった治療院兼自宅が流され仮設住宅で暮らす被災当事者の視点から、施術環境にも細やかな配慮を欠かしません。雄勝町での巡回鍼灸では石巻から吉田保鍼灸師が通い施術が行われています。AMDAの鍼灸プログラムは、地元の鍼灸師の篤い思いで継続しています。

 

AMDA宮城県石巻市雄勝町 鍼灸による健康サポートプログラム


雄勝町での鍼灸治療

AMDAは地元鍼灸師を雇用し、雄勝町で4月から7月までの3ヶ月間、無料の鍼灸による健康サポートプログラムを実施しました。3か月間で16回実施した本プログラムは、受益者数128人。60歳以上80歳未満が48%、80歳以上が35%と高齢者が約8割を占めました。主な症状の腰痛、頸部・肩・上肢痛、下肢痛、膝痛は全体の96%を占め、このうち半数以上が震災後に発生したものでした。また、アンケートを実施した患者の100%が、保険診療になっても継続して鍼灸治療を受けたいと希望していました。この状況から、AMDAでは、鍼灸治療が地域で継続されるように、健康保険を導入することとし、巡回診療場所の調整等側面的援助を継続することにしました。現在、地元の医療機関と連携し、雄勝町の3地域(名振地区、水浜地区、大須地区)を隔週水曜日に訪問し、鍼灸による健康サポートプログラムを保険診療扱いで実施しています。9月の受益者数は22人。10月以降も同様に継続していきます。

 AMDA大槌・健康サポートセンターでの活動


AMDA大槌・健康サポートセンター前の菜園で

雅楽の演奏

AMDA大槌・健康サポートセンターでは、これまでの手芸教室や体操教室に加えて、今秋より天然酵母パン教室やボクシングを取入れたエクササイズ教室なども開催しています。また建物の前には無農薬の家庭菜園スペースを設けており、鍼灸治療の待合時間や、ふらりと立ち寄られた方々が、思い思いに「土いじり」をすることで、自然とリラックスにつながり、笑顔の見える場所となっています。

施設内の鍼灸院では、5月に184人、6月に172人、7月に144人、8月52人、9月103人の鍼灸治療が行われました。今では予約が3週間待ちとなっており、被災地での鍼灸のニーズの高さが伺える状況となっています。地域の方の集う場所としての機能拡張と鍼灸治療のニーズに応えるため、増設計画を進めています。

 

 

 

8月23日AMDA大槌健康サポートセンターでは岡山から黒住教青年部の方々が雅楽の演奏を披露してくださいました。その場にいた地元の方々は、音合わせの段階から、雅楽の音色に癒され涙していました。

夏季医療ボランティア派遣


公立志津川病院南三陸診療所
スタッフと山路看護師

宮城県南三陸町の公立志津川病院および南三陸診療所における春季の医療ボランティア派遣に続き、夏季も医療ボランティアの派遣を実施した。7月9日から9月28日までの派遣者は、医師2人、看護師3人、准看護師2人の計7人でした。冬季派遣も予定しています。【AMDA夏季医療派遣者 プロフィール】
●山路 未来:看護師/岡山県在住
●向井 信子:准看護師/大阪府在住
●蛯原 茜:看護師/茨城県在住
●高岡 邦子:医師/東京都在住
●宮脇 佐名世:看護師/千葉県在住
●木本 敬洋:准看護師/福岡県在住
●木本 豪:医師/千葉県在住

災害医療における鍼灸治療の果たす役割とその可能性


左から高橋医師、吉田鍼灸師、佐々木鍼灸師、
今井教授、伊藤教授。雄勝町で

今年度の岡山県立大学大学院「災害医療援助特論」公開講座(9.15AMDA協力)では、「東日本大震災被災地において鍼灸治療の果たす役割とその可能性」をメインテーマに、自身が被災者であるAMDA大槌健康サポートセンターの佐々木賀奈子鍼灸師と、明治国際医療大学教授で鍼灸師の今井賢治先生にご講演いただきました。

鍼灸師が被災地で緊急医療チームとともに活動するというのはこれまでの歴史の中で初めてのことだと思われます。今回、災害医療における鍼灸の重要性が見出されたといえましょう。AMDAの鍼灸師として緊急救援期から復興支援期に渡り3回被災地を訪れた今井教授は、科学的な鍼灸治療の効果について具体的に紹介されました。先駆的で意義深い講演となりました。

第3回AMDA被災地間交流事業

阪神淡路―岩手県大槌町―宮城県気仙沼

7月15日、岩手県大槌町の大槌北小学校に設置された福幸きらり商店街で開催された「福幸きらり夏祭り」にて、被災地間交流事業を実施しました。
淡路ビーフ新谷(新谷福松社長)様の協力を得て、淡路ビーフもも肉の丸焼きが行われ、合計200kg分の淡路玉ねぎのお土産付きで、お祭り会場来場の方々に配布されました。70kgのお肉が丸焼きになっているのは壮観で、多くの方が見に来られ、写真を撮ったりもされていました。300人前以上もあったお肉は開催から2時間ほどですべて無くなり、たくさんの方から、「おいしかった」「元気をもらいました」などの声が寄せられました。お肉を食べてくださった方々には募金をお願いし、そのお金はすべて福幸きらり商店街への寄付とさせていただきました。(AMDA兵庫県支部)

町に寿司屋が1軒もなくなった大槌町の人々にお寿司を食べさせたいと、気仙沼の流れ寿司様が参加してくださり、同じ被災地からの心のこもったお寿司は心に響くものでした


気仙沼からの「流れ寿司」様と
大槌の高校生・スタッフ等

「淡路ビーフ新谷」様により
準備されるもも肉の丸焼き

東日本被災者夏休み招聘プログラム

東日本被災者夏休み招聘プログラムを華蔵寺(高野山真言宗、岡山県久米郡美咲町)・AMDA合同企画で実施しました。大槌町から高校生3人を7月25日から29日まで5泊6日で招聘し、美咲町での寺子屋活動、岡山市内でのAMDA高校生会交流会と、絆を深める夏休みとなりました。感想文を紹介します。

 

感想文 AMDA大槌・高校生会 三浦 智理


阿形ご住職と大槌町の高校生 華蔵寺で

先日私は大槌AMDA高校生会として岡山県に招待され、5泊6日で沢山の経験をしました。

2、3日目は華蔵寺に行きました。高校生会の発表がありました。途中震災のことを思い出し言葉に詰まることもありましたが、自分なりに発表できたと思います。夜はお寺に泊まり小さい子供達と寝ました。夜はお坊さん達のお手伝いをしながら方言の話や、地元の話などで盛り上がりました。

5日目には岡山の高校生会と交流がありました。最初は活動発表や避難所でのボランティアの話をしました。その後震災の話になりテレビではきけないような大槌のことを大槌稲荷神社の十王館さんに話していただきました。リアルな話で当日のことを思い出し胸がいっぱいになりました。けど、もっともっといろんな人に本当のことを知ってもらいたいです。私達が経験したことを知ってもらって、自分自身が震災にあった時に少しでも糧になればと思います。辛いけど少しずついろんな人に話できたらと思います。

そしてその日は高校生会の安藤美友さんの家にホームステイさせていただきました。美友さんも美友さんのお母さんもすごく親切でした。嬉しかったです。この岡山県での5泊6日はそれぞれ1日1日が貴重な体験ばかりですごく充実した旅でした。華蔵寺の国明さんが言っていたように感謝の気持ち『ありがとう』をこの旅に関わってくれた人に伝えたいです。

 

感想文 AMDA大槌・高校生会 澤舘 みさと


AMDA高校生会で交流会後ボウリング

2日目に行った華蔵寺では、震災のことやボランティアしていたときのことを発表しました。あまり上手く伝えることが出来ませんでしたが、皆さんが真剣に聞いてくれてとても嬉しかったです。

5日目の岡山のAMDA高校生会との交流会ではお互いの活動を発表しました。岡山の高校生会の人達が私達のために募金をしているのを知って、とても嬉しかったです。

今までの大槌のAMDA高校生会の活動は地域のための活動が主でした。ですが、これからは私達を支援してくれた人達に恩返しができるような活動をしていければと思います。また、Skypeやメールを使って、岡山と大槌の高校生会が一緒にできる活動をやっていきたいと思います。

十王舘 昌子様からのお手紙

東日本大震災直後から多くの神社仏閣が民間避難所となりました。その一つ、大槌町の海辺高台にある大槌神社では、60年に一度は大災害があるという代々の言い伝えに基づき災害時を乗り切る様々な知恵が伝承されていました。

多いときには150人程の避難者を受け入れ、模範的な避難所と称された大槌神社から禰宜の十王舘勲氏と昌子夫人らを、災害時の宗教施設の役割についてその経験を語っていただくため岡山にお越しいただきました。夫人のお手紙を紹介します。


RNNボランティア講座での講演を終えて
十王舘勣氏と昌子婦人(右から3人目と4人目)

避難所となっていた当時の大槌稲荷神社での鍼治療

大槌から1,200kmの地岡山県へ、一生行く事がないだろうと思っていた地で、5泊6日という長旅、AMDAの皆様方には大変御世話頂き誠にありがとうございました。(略)

記者会見の場では、前の日、夫の講演を聞き、震災当時を思い出し涙してしまい大変申し訳ございませんでした。当時は息子二人、両親の安否がわからず、頭の中が混乱している中での避難者の対応、津波にのまれ命からがら逃げびしょぬれになって来た人を着替えさせたりし、バタバタしていたら、外は真っ暗で、出て見ると、吹雪、実家のある町方は大火災でした。

次の朝早くから、炊き出しが始まり、避難所の方々に食べさせなくては…

神社の境内は安否確認の人達でごった返しになっていました。下を見おろすと、死体、ガレキだらけ…。名前を呼びながら、ガレキの上を歩いている人とかいました。何で私は捜しに行けないのかと怒り、車の中で大泣きしました。

3日目で二男、一週間後に三男が無事に帰って来た時は抱きしめ合い喜びました。母は3月25日に発見し、秋田の男鹿で火葬し、父は行方不明のまま…

でも、私にはやらなきゃいけない事がある。避難者を守らねば…。ふと我に返ると、夫は一人で頑張り、奮闘していた。背中が大きく見え、とても頼もしく見えた。

8月第一週で、神社避難所を閉鎖する事となり、無事100名余の方々を仮設住宅に送り出す事ができました。慌ただしくお盆の行事を終え、やっと元の生活に戻る事ができると思いきや、10月初め、夫が過労で倒れ、打ち所が悪く、頭から血を流し、救急車で病院へ…。一瞬どうなるのかと思いきや、点滴を終えると、当分、身体を休めれば問題ないとの事、まずは、一安心。その後、何度か講演の依頼を受け、秋田、静岡、横浜など無理をさせない為、付き添って歩きました。

2日目にお世話になった華蔵事様始め、住職の方々、美咲町の方々には、大変立派な法要をして頂きありがとうございました。(略)

 

岡山の大学生が大槌町へ


旧大槌中学校の片づけ清掃作業

8月22日から26日の4泊5日(車中2泊)の日程で岡山県内の大学生が岩手県大槌町でボランティア活動を行いました。このプログラムは昨年に続き2回目で、(社)岡山経済同友会の主催で、大学コンソーシアム岡山正会員大学の学生さんを被災地に送り、大槌町での活動調整や受け入れをAMDAが担当するものです。今年のボランティア作業のメインは、被災した当時体育館は遺体安置所に校庭は廃車瓦礫置き場となりその後放置されていた旧大槌中学校校舎を、その解体前に片づけるというものでした。清掃活動の後の昼食は、中学生との合同のバーベキュー大会でした。

今回参加した大学生の感想として、「大槌の人は、自分が思っているよりも強く、自分ももっと積極的にできることを頑張ろうと思った。」「実際に訪れてみて、町の人と関わって、話を聞いてみて、今生きることのありがたさ、大切さを感じた。」「本当に必要な支援とは何かを考えるきっかけとなった」

などの声が聞かれました。実際に被災地現場でボランティア体験することで岡山の次世代育成につなげようという試みは、着実に実を結んでいるようです

 

大槌町立大槌中学校 校長 鈴木 利典


8月23日 大槌中学校長によるお話のあと
大槌中学生全員のバーベキュー

AMDAと岡山経済同友会のご支援で被災校舎の職員室の掃除がやっと終わりました。被災地の目まぐるしさを象徴するように、震災から一年半、ほとんど手付かずの状態でした。被災校舎とその周辺には、津波の犠牲者がたくさん流れ着き、本校では生徒も亡くなっています。遺体安置所となった体育館と被災校舎に、職員を連れて行くことには戸惑いもありました。そんな中、遠く岡山から夜行バスで駆付けていただき、休息も取らずに後片付けを始めてくれた大学生、NPO、岡山経済同友会の皆さんのご支援に、心から感謝しています。

さらに、翌日は、全校生徒に焼肉をご馳走していただきました。本校には、被災生徒181名、仮設住宅からの通学者127名という厳しい現実があります。焼き肉の煙越しにその生徒たちの笑顔が見えました。こちらも感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとございました。今後も温かいご支援をよろしくお願いいたします。