2011年度年次報告 中長期継続事業(2012/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2011年度年次報告 中長期継続事業(2012/7発行)

2011年度年次報告 中長期継続事業

インド AMDA ピースクリニック


無料巡回診療で診察を待つ人たち

◇実施場所
インド ビハール州 ブッダガヤ
◇実施期間 2009 年11 月〜現在継続中
◇派遣者 菅波茂医師 難波妙 ニティアン・ヴィーラヴァーグ AMDA 本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
アーユルヴェーダ32 医1 名、女性セラピスト1 名、アシスタント4 名

◇事業内容
2009 年末の発足以来、AMDA ピースクリニックは地元コミュニティを対象にインドの伝統医学・アーユルヴェーダの治療を行ってきた。クリニックでは国内はもとより外国人巡礼者や旅行者が来院する。地元コミュニティにおいては無料医療キャンプなどの地域保健プロジェクトが根付いてきた。同クリニックでは現在、インド人アーユルヴェーダ医を中心に、一名のセラピストと四名のアシスタントが日々の診察にあたっている。

2011 年4 月から2012 年3 月までのピースクリニック受益者数は1195 名で、内訳はインド人501 名、外国人694 名となっている。無料医療キャンプにおいては2011 年3 月10 日から2012 年4 月25 日までに432 人が診察を受けている。火事によって全身火傷を負った女性には無料でセラピーを行い、9,000 ルピーを生活支援金として渡した。貧困に苦しんでいる人には薬やセラピーを無料としている。また、歩行困難や寝たきりの患者には訪問診療を行っている。ピースクリニックのスタッフはコミュニティ内の公衆衛生の意識向上のため、社会奉仕活動として施設周辺の清掃を行っている。

◇受益者の声
麻痺があり、生活するのも大変だったが、無料で診察やセラピーを受けられて、とても助かっている。3 か月になるが、徐々に楽になっている。本当に感謝している。

◇現地協力機関
AMDA インド支部

カンボジア マラリア予防プロジェクト


マラリア予防教育プログラムを受ける村民たち

◇実施場所 カンボジア プノンペン、コンポンスプー州
◇実施期間 通年継続中
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA カンボジア支部、現地NGO Life with Dignity、村内医療ボランティアの皆さん
◇事業内容
IEC(Information, Education and Communication)事業として、マラリア、性感染症、HIV 予防のための印刷物を準備し、プノンペンの大学5 校と高校3 校に配布した。また、コンポンスプー州では地元NGO であるLWD(Life with Dignity)を通じて配布された。これらの資料は、予防、保護などの基礎知識向上に必要な情報が書かれており、重要な役割を担っている。

マラリア予防プロジェクトでは、村内医療ボランティアによるマラリア予防教育プログラムを施行した。内容は蚊帳の使い方、偽造薬品の危険性についての説明、近隣の治療施設の紹介などBCC(Breakthrough Center Cambodia) コミュニティキャンペーン(村に出向き、予防教育を直接行うというもの)では、2011 年1 月〜 12 月までの間に742 人が直接受益者として、また24 の村からビデオで受講する間接受益者1,387 人が参加した。FGD(Focus Group Discussion)教育では772 セッションを100 の村で行い、8,157 人が参加した。加えて、村内医療ボランティアによる一対一のマラリア教育を実施し、今までに100 の村に102 回訪問し、638 人に教育した。

◇関係者の声
今までのAMDA カンボジアの活動の中で最も良い結果を残した活動となっている。参加したボランティアの95%が計画目標を達成し、各自の村でマラリア予防教育を行った。
AMDA カンボジア支部 支部長 S. リティ医師

◇現地協力機関
Breakthrough Center Cambodia、Life With Dignity

AMDA モンゴル国眼科医療奉仕団とAMDA 医療と魂のプログラム(ASMP)


菅波代表が少女へ問診・診察をし、健康相談をする様子

◇実施場所 モンゴル国 ウランバートル
◇実施期間 ( 眼科医療開始2010 年6 月)
第1 次 2011 年5 月22 日〜 6 月4 日モンゴル医師団検眼研修 (岡山)
第2 次 2011 年6 月14 日〜 6 月18 日第2回検眼技術向上セミナー(モンゴル)
第3 次 2011 年8 月23 日〜 8 月30 日眼科支援事業、慰霊祭  (モンゴル)
◇派遣者
第2 次 内田豪(めがねコンサルタント)
第3 次 菅波茂医師 難波妙(AMDA 本部)
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
医師2 名、検眼師2 名、岡山大学学生8 名、モンゴル健康科学大学学生4 名、

◇事業内容
前年度のモンゴルにおける眼科医療支援活動(検眼師セミナー、白内障手術提供プロジェクト)に続き、モンゴル眼科協会は11 年度モンゴル国で初めての眼鏡専門学校設立を目指した。本年度は、岡山でのモンゴル医師団研修、モンゴル側からの要請を受け、モンゴルにて、第2 回検眼技術向上セミナー、8 月には眼科支援事業を実施した。

医師団研修については、モンゴルから眼科協会会長、検眼師、眼科医などを日本に招へいし、東京、岡山の眼鏡の専門学校などでの研修を行い、検眼の手法や弱視に関する専門知識を学んだ。

第2 回検眼技術向上セミナーでは、日本から日本眼鏡技術者協会の内田豪氏を昨年に引き続きモンゴルに招き、モンゴル全土の眼科医、眼鏡関係者を対象に子どもの弱視をテーマに検眼セミナーを実施した。子どもの斜視弱視や屈折異常に関わる検眼師としての正しい知識と技術についての講義を2 日間行い、残り2 日は実際に子どもの眼鏡の検眼を訓練した。

眼科支援事業では、6 月のセミナーを受講した眼科医による弱視の子どもの診断と眼鏡の無償提供をした。また、弱視の子どもは内科疾患を持つ傾向があるとの眼科協会の指摘を受け、菅波代表による弱視の子どもの健康相談を実施。それに加えて眼鏡学校設立に向けて準備を進めるモンゴル側とともに政府関係機関への後押し、日本モンゴル友好病院開設準備、モンゴル赤十字との協力協定締結準備、日本大使館、モンゴル保健省などへの活動報告などを行った。

またモンゴル最大でチベット仏教の総本山であるガンダン寺で、ASMP:AMDA医療と魂のプログラム、慰霊祭を実施。昨年までは、ノモハン事件戦没者のための平和祈願祭であったが、本年はガンダン寺からの希望で東日本大震災犠牲者のための慰霊祭となった

◇受益者の声
これまでなんとなくわかっていたつもりにたっていたことが、今回のセミナーで明確な理由を分かりやすく説明して頂いたおかげで確実な自分の知識と技術になった。

(セミナー受講者)
多くの方々が 本当にモンゴルの将来に希望を持ってご指導して下さったことに心から感謝している。モンゴル国内の関係者に今回習得した内容について情報共有することが、皆様への恩返しと認識している。
(モンゴル眼科協会会長ブルガン医師)

◇現地協力機関
モンゴル眼科協会、モンゴル赤十字、モンゴル国保健省、モンゴル健康科学大学モンゴル宗教省 ガンダン寺

スリランカ・白内障手術プロジェクト


白内障の手術をするスリランカ、台湾の医師ら

◇実施場所 スリランカ民主社会主義共和国 北部州ジャフナ県ジャフナ市
◇実施期間 2011 年8 月4 日〜 8 月11日( 第1 回)、2011 年12 月16 日〜 12月18 日(第2 回)、2012 年2 月27 日〜2 月29 日(第3 回)
◇派遣者
ヴィーラヴァーグ・ニッティヤーナンタン調整員/ AMDA 本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
(第1 回)台湾国際医療支援チームの外科医2 人、ジャフナ教育病院の外科医2 人と看護師等
(第2 回)AMDA 台湾支部の外科医3 人とパナドゥラ市のライオンズ・ギフト・オブ・サイト病院の医師ら
(第3 回)デービッド・チャオカイ・チャンAMDA 台湾支部長/眼科医、AMDA 台湾支部の外科医2 人、トリンコマリー市の国立病院の医師ら、総勢20 人程度

◇事業内容
AMDA では2009 年に30 年近い内戦が終結したスリランカの復興支援事業として、シンハラ、タミル、タミルムスリムの3 民族グループに対して、平等に医療を通じて和平を働きかけるAMDA 医療和平プロジェクトを実施している。その一環として2011 年度には3 回にわたって無料白内障手術ミッションを実施した。

第1 回目の2011 年8 月4 日〜 8 月6 日には、スリランカの北部州ジャフナ県(タミル人の居住地域)のジャフナ教育病院で、134 人の患者に対して無料で白内障の手術を行った。手術を行う医師は、AMDA と協力協定を結んでいる台湾国際医療支援チーム(Taiwan IHA: TaiwanInternational Health Action)から派遣した。8 月11 日には、手術の合併症などが発生していないかを確認するため手術を受けた全患者134 人に対し、ジャフナ県ポイントペドロ市(ジャフナ市中心部から北東30 キロ程度)のマンティカイ基地病院で術後の再診を行った。

第2 回目の手術ミッションは、2011 年12 月16 日から18 日の日程でスリランカ西部州カルタラ県パナドゥラ市(コロンボから南方へ30 キロ程度、シンハラ人の居住地域)で行われた。AMDA 台湾支部から派遣された3 人の外科医がパナドゥラ市のライオンズ・ギフト・オブ・サイト病院(Lions Gift of Sight Hospital) の医師らと協力して、およそ70 人に対して白内障の手術を行った。

第3 回目の手術ミッションは、2012 年2 月27 日から29 日の日程でスリランカ東部州トリンコマリー県トリンコマリー市(イスラムタミル人の居住地域)の国立病院で行われた。手術は、地元医師とAMDA 台湾支部長含む3 人の医師らによって行われ、30 人の重症患者が手術を受けた。同病院へAMDA 台湾支部のデービッド・チャオカイ・チャン支部長から医薬品や機材の贈呈が行われた。

◇関係者の声
台湾からの派遣された医師が驚いたのは、スリランカに白内障患者がとても多くいたことと、その多くが深刻な症状を抱えていたことである。台湾の医師らが非常に限られた設備で素晴らしい手術をしたことに対して、地元の医師から非常に感謝された。この手術を機に、後日台湾国際医療支援チームから高圧滅菌器(オートクレーブ)1台と白内障手術用ハンドピース2 セットの医療器材が病院に寄付されることが決定した(注:医療器材は2012 年4 月に台北駐日経済文化代表処からAMDA に贈呈された)。

白内障手術の費用が高額のため、長い間手術が受けられずにいた多くの患者はその症状は重症化し、ほとんど目が見えない状況が続いていた。手術によって視力が回復した人びとからは口々に、視力が回復したことを感謝する言葉が、AMDA 派遣者に寄せられた。
ヴィーラヴァーグ・ニッティヤーナンタン(オーストラリア国籍スリランカ人)AMDA 本部職員

◇現地協力機関
ジャフナ教育病院(北部州ジャフナ県ジャフナ市)、ライオンズ・ギフト・オブ・サイト病院(西部州カルタラ県パナドゥラ市)、国立病院(東部州トリンコマリー県トリンコマリー市)

紛争復興支援スポーツ親善交流プログラムースリランカ


スポーツ親善交流プログラムでネットボールをする女子ら

◇開催場所 スリランカ民主社会主義共和国 アヌラダプラ県
◇開催期間
2011 年9 月23 日〜 9 月24 日
◇ 派遣者  菅波茂 医師、ヴィーラヴァーグ・ニッティヤーナンタン 調整員/ AMDA 本部職員、石崎千里 AMDA 本部インターン(国連平和大学 修士課程)
佐藤康介 AMDA 本部インターン(川崎医療福祉大学 保健看護学科2 年)
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
トリンコマリー県(タミルムスリム人)の1 校、キリノッチ県(タミル人)の1 校、アヌラダプラ県(シンハラ人)の2 校の10 〜 14 歳の子ども159 人と各校の引率教員。

◇事業内容
2011 年9 月23 日と9 月24 日の2 日間、AMDA はスリランカのアヌラダプラ県で「AMDA スリランカ紛争復興支援スポーツ親善交流プログラム」を開催した。東部のトリンコマリー県(タミルムスリム人)の1 校、北部のキリノッチ県(タミル人)の1 校、北中部アヌラダプラ県(シンハラ人)の2 校の10 〜 14 歳の子ども159 人がプログラムに参加した。3 つの異なる民族・宗教の学生らが、スポーツや芸術を通して交流し、親睦を深めた。

9 月23 日には全参加者が仏教とヒンズー教、イスラム教の寺院を訪問した。9月24 日には男子学生はサッカー、女子学生はネットボールの交流試合を行った。それと並行して絵画大会を開催した。学生らは日本の支援者からの色鉛筆やクレヨンを使い、平和なスリランカを願って、それぞれの思いを表現したポスターを作成した。また同日には文化交流プログラムも行い、演劇やダンスなどを通して交流を図った。初めは緊張して笑顔が少なかった学生らもスポーツや文化交流を通じて次第に笑顔が和ぎ、初めて触れ合う異民族・異宗教の学生らの多様性を理解し、友情関係を構築することができた。

スリランカは2002 年に一時停戦合意がなされたものの、2007 年再燃し2009 年まで26 年ものあいだ内戦状態にあった。特に激しい戦闘区域となった北部では内戦の爪痕が大きく残り、未だインフラや教育を受けられる環境が整っているとは言い難い。さらに、今回招へいの対象となった学生らは内戦中に生まれ、その中で成長しているため、他の民族・宗教・文化に触れる機会に恵まれなかった。実際に今回参加した学生の大半が、このプロジェクトを通じて初めて自分たちとは異なる民族・宗教の子どもたちと触れあった。

◇関係者の声
お互いを理解し受け入れることは、特に紛争後の状況では、平和な国を実現するカギとなる。AMDA が行ったこのスリランカでのプログラムは子どもたちだけでなく、大人にとっても異文化、異民族間に友情と協調を構築するのに非常に重要なプログラムとなった。

AMDA スリランカ支部長 サマラゲ医師「 色々なことがあったけど、このような機会を作ってくれてありがとう。今まで生徒は他の民族と接することはなかったけど、彼らにとって良い経験になったと思う。僕ら教師にとっても良い経験だった」とムスリムの教師から最終日に言われた。また三民族の生徒それぞれがバスで去る際に、太鼓を叩きそれぞれの民族舞踊を踊りだした。三民族の生徒が輪になって踊っている姿を見て、言葉は違ってもそれぞれが何かをこの数日間で感じたのだと思った。「平和への一歩はお互いを知り合うことから始まる」という意味を実感した。
AMDA 本部インターン 石崎千里

◇現地協力機関
AMDA スリランカ支部、スリランカ国語及び社会総合省(Ministry of National Languages and Social Integration)