国境を越える「相互扶助」 タイ洪水被災者に対する緊急支援活動他(2011/12発行ダイジェストNo.37掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

国境を越える「相互扶助」 タイ洪水被災者に対する緊急支援活動他(2011/12発行ダイジェストNo.37掲載)

国境を越える「相互扶助」

タイからは医師と看護師が東日本大震災被災地岩手県大槌町でAMDAチームに加わり活動していました。そして日本トルコ文化交流会からはトルコのミネラルウォーターペットボトルで2.5トンが宮城県南三陸町志津川のAMDA活動地に届けられていました。今度は私たちが出向く番です。「相互扶助」の精神で活動しています。

タイ洪水被災者に対する緊急支援活動


洪水で孤立した村に救援物資を届ける
AMDAチームのタイ救援医学会サン会長(右)

水につかりながら車から救援物資を運び出す
AMDAメンバーら

タイでは7月末からのモンスーンと相次いで通過した台風による豪雨に見舞われ、北部から始まった洪水が中部を経て、10月半ばには周辺のパトゥムターニー県とノンタブリー県に達し、アユタヤ県のロジャナ工業団地では日本企業の自動車工場も操業停止に追い込まれました。また、世界遺産に登録されている古都アユタヤの遺跡も3m程の水位で水没、首都バンコクに大災害が迫る事態になりました。11月15日時点で560人以上の死者・行方不明者が出ています。

AMDAでは10月14日に第一次チーム(医師1、保健師1、調整員1)、31日に第二次チーム(医師1、看護師2)、11月20日に第三次チーム(看護師1、助産師1、調整員2)計10人を緊急派遣し、巡回診療や衛生教育の実施、生活物資支援やライフジャケット250着・ロープなど救命用具の提供など、被災地域のニーズに合わせた様々な活動を行っています。

11月18日時点で、バンコク市内は洪水被害のピークを越えたものの、バンコク北部や西部、周辺県では未だ1メートル以上浸水している地域もあり、排水の問題などから、タイ政府は、被害が長期化するとの見通しを示しました。また洪水による感染症の発生や長期に渡る避難生活による体調不良などが懸念されています。11月20日に発つ第3次医療チームはタイの医師と日本からの看護師、調整員でAMDA多国籍医師団を編成してボートを使って巡回診療する予定です。

第一次チームが実施したナコンサワン県の孤立した地域へのAMDAの支援活動に対して、同県チュムセン郡クーイチャイの行政組織から礼状をいただきました。また第2次チームの活動時には学生の安否確認で現地入りしていた岡山大学・国際センターの小川秀樹教授とタイに留学中であった岡山大学法学部法学科4年・一政あかりさんの協力を得て、岡山大学との連携協定に基づき活動を充実させることができました。

■実施協力団体
バンコク総合病院、ラチャヴィティ病院、タイ救急医学会
バンコク総合病院の医師1名と看護師2名が、岩手県上閉伊郡大槌町の大槌高校避難所等でのAMDAの活動に参加しました。

■派遣者
第一次チーム
古谷 清久:皮膚科医師/千葉県在住
武田 未央:保健師/岡山県在住
大政 朋子:調整員/AMDA本部プロジェクトオフィサー//岡山県在住

第二次チーム
日下 琢雅:医師/愛知県在住 東日本緊急医療支援(岩手県大槌町)に参加
山路 未来:看護師/兵庫県在住 東日本大緊急医療支援(宮城県南三陸町)に参加
中井 隆陽:看護師/大阪府在住

第三次チーム
米田 恭子:助産師、看護師/東京都在住 東日本緊急医療支援(岩手県大槌町)に参加
柴田 幸江:看護師/兵庫県在住
山川 路代:調整員/理学療法士/岡山大学大学院医歯薬総合研究科(博士課程在籍)/岡山県在住
大政 朋子:調整員/AMDA本部プロジェクトオフィサー/岡山県在住

 

フィリピン洪水緊急医療支援活動


リザール州での医療活動

9月下旬に17号、19号と一週間のうちに立て続けに2つの台風に見舞われたフィリピンではルソン地方中部のブラカン州、パンパンガ州を中心に31の州に被害が発生する深刻な事態となりました。

AMDAは10月3日に第一次派遣として本部から調整員1名を派遣、6日にはフィリピン軍医療班とフィリピン沿岸警備隊と合同で、外科・内科・眼科各医師、セラピスト、薬剤師ら60名の医療チーム編成による、リザール州キサオ町での診療活動を実施し908人の患者診察及び投薬を行いました。4日と9日には、ブラカン州内で沿岸警備隊と合同で食糧の配給も行いました。

これに続き、10月22日には再び本部から調整員1名をマニラに派遣し、AMDAフィリピン支部、イースト大学、パンパンガ農業大学と合同で、医師・看護師・歯科医やイースト大学の学生ボランティアら50人から成るチームを編成し、マニラ首都圏から車で2時間北上した同州マガラン町サント・ニンニョ村で医療・歯科ミッションを行い、410人の診療を行いました。被災地の中でも厳しい状況にあるこの地域では、呼吸器感染症、皮膚疾患、ぜんそくや呼吸困難などの症状が多くみられました。

 

トルコ東部地震被災者に対する緊急医療支援活動


活動中の渕崎医師(右)と大類医師(左端)

幼児の救急処置を終えた大類医師(右)と
渕崎医師(左)

10月23日、マグニチュード7.2の地震がトルコ東部で発生し死者約600人を超える災害となりました。

AMDAでは医師2名調整員1名のチームの派遣を同日決定。チームは24日に関西空港を発ち25日には地震被災地ワン県エルジシュに入り、臨時医療施設となった体育館での医療活動に従事しました。外科医である大類隼人医師と、内科医の渕崎祐一医師のコンビネーションでそれぞれの専門性を遺憾無く発揮し救急医療活動を29日まで行いました。調整員には、日本トルコ文化交流会から日本在住のクルド系トルコ人アフメット氏の参加により現地NGOとの連携もスムーズに進み、被災地に到着してすぐに活動を開始することができました。トルコの緊急援助隊は優秀で、東日本大震災でも活躍しました。救急医療の必要が落ち着いてきたところで、第一次派遣チームは31日に帰国しました。今後AMDAはクルド人の多く住む被災地の復興ニーズ調査チームを派遣し、復興プログラムを策定し、支援活動を実施していく予定です。引き続きご支援をお願いします。

■実施協力団体
日本トルコ文化交流会、キムセヨクム(トルコのNGO/そこに誰かいますかの意味)
日本トルコ文化交流会は、震災後インフラの復興が遅れ深刻な水不足にあったAMDAの活動する宮城県南三陸町に水をペットボトルで2.5トン運んで来てくれました。その時、受け取りを行ったのが大類医師でした。

■派遣者(10月24日〜31日)
大類 隼人 医師/神戸市在住 兵庫医科大学病院 呼吸器外科 東日本大緊急医療支援(宮城県南三陸町)に参加
渕崎 祐一 医師/福岡市在住  松尾内科病院  内科 東日本大緊急医療支援(宮城県仙台市)に参加
イュルディス アフメット 調整員/大阪府在住   日本トルコ文化交流会

 

ミャンマー中部洪水被災者に対する緊急支援活動


ロープにつかまり避難する村人

配布した支援物資について県保健局長に説明する
AMDA-MINDS鈴木理事長

ミャンマー中部では、10月17日から降り続く雨に加えて19日夜から急激な豪雨に見舞われたことにより、エーヤワディ川の支流が増水し周辺地域に深刻な洪水被害が発生する事態に至りました。パコク郡においては121名の死者(パコク郡行政発表)と、収穫前の農作物、播種前の種子や家畜など、人々の生計に直接的かつ広範囲にわたる被害をもたらし、またパコク郡中心部と地方とを結ぶ幹線道路の路肩、枯川に架かる橋、また用水路の斜面が崩れるなど、社会インフラへの被害も深刻です。

被災地域が、AMDA社会開発機構が従来活動しているパコク郡地域であることから、AMDAグループでは災害発生直後から現地スタッフによる被害状況調査を行ったうえ、パコク郡行政官や保健局等関係諸機関と連携し、第一次配布として10月30日より従来のプロジェクト対象地とその周囲7村、286世帯、7,345人の被災者に対して、浄水フィルター、毛布、懐中電灯、衛生セット(タオル、石鹸、コップ、歯磨き等)などの支援物資の配布や、パコク郡保健局からの要請に基づき仮設診療所で用いる医療機材等の供与も行いました。

第二次物資配布として、再度9日に物資の調達を行い、第一次配布が十分行き届かなかった9村の合計1,669世帯の内、家屋が流されたなどの特に大きな被害を被った90世帯に対して衛生キットを配布しました。

心配された呼吸器感染症の蔓延は、今のところ発生していないものの、今後寒さが増すにつれ、深刻な事態にならないよう細心の注意を要します。

11月1日及び2日にAMDA社会開発機構の鈴木俊介理事長と同機構現地事務所の鈴木梓調整員が、ミャンマー保健省公衆衛生局職員、バコク郡保健局次長、マグウェ地域(旧称マグウェ管区)次官、パコク郡長官、同郡保健局長らと面会し、被災情報共有を行うとともに、今後の支援予定と相互の役割などについて協議した際、同国政府は簡易仮設家屋の建設や食料支援などの用意があることを表明し、AMDAは以下の支援活動を実施することを表明し、協力体制の維持と強化に努めることを改めて確認しました。

1.ニーズを確認しながら、引き続き毛布や衛生キットを調達し、被災村に配布する
2.今後気候が涼しくなりまた乾燥度も増すことから、呼吸器感染症の蔓延を防止するため、抗生剤などの備蓄に協力する
3.地元自治体が支援する仮設家屋の建設に伴い、トイレなどの付帯施設の建設及びその活用に協力する

引き続き皆様からのご支援をお願いします。