長期事業 AMDAバングラデシュの活動紹介
サイクロンシェルター2009 |
AMDA支部の中でも活発な支部の一つであるAMDAバングラデシュは、1992年のミャンマーからのロヒンギャ難民に対する医療救援活動以来、国内外での人道的支援、特に自然災害の被災者に対する医療救援・復興支援に取り組んできました。バングラデシュ国内において、貧困の中に暮らす人々は、災害に見舞われるたびに一層の不安と困難に直面します。こうした人々のコミュニティが自立していくには、長期的で持続的、総合的な社会経済開発計画が必要だということです。この認識に基づいて、1998年にAMDAバングラデシュ総合計画(AMDA Bangladesh Complex: ABC)が生まれました。ABCは、?低価格な医療サービス、?職業訓練、?マイクロクレジット、?コミュニティ学習センター、から成る総合プログラムです。これらを具体化するために、AMDAバングラデシュは、日本政府の無償援助やAMDAインターナショナルの支援を受けて、首都ダッカから車で一時間のムンシガンジュ県ガザリア郡ホッシンジ村に、2002年から2005年にかけてヘルス・センター、職業訓練センター、コミュニティ学習センターを備えた施設を開設しました。
ヘルス・センターでは、コミュニティ内でも特に貧しい人々(土地を持たない人々、貧しい女性など)に一般的な診療と助産、妊産婦への検査、乳幼児ケアなどを低価格または無料で行い、ヘルス・ワーカーによる移動サービスを提供しています。これらの人々は感染症の予防や治療に関する適切な知識を持たず、環境衛生も維持されていないので、予防可能な病気に罹患し、貧血や栄養失調にかかっていました。さらに、診療所へのアクセスの困難にも悩んできました。センターの開設は、貧しい人々が初めてヘルス・サービスを受ける機会を作り出しています。
職業訓練センターは、コンピュータ、木工、溶接、電気・電子、縫製、手工芸の技能訓練を提供しています。木工、縫製、手工芸部門では、オン・プロダクション・トレーニング(製作しながら訓練を受けること)により、研修生は技能を伸ばしながら製品を販売することで報酬を受け取ります。2009年までに1,600人の若者に様々な技能訓練を提供し、そのうち1,049人が雇用されました。
マイクロクレジットのプログラムはAMDAバングラデシュが1999年に開始したもので、当初の資本金25,000ドル(1,200,000タカ相当)は日本のAMDA本部から提供されました。2009年現在、カザリア郡の5つの村で実施されています。このプログラムは、経済的に恵まれない人々のために、小規模事業と小規模ビジネス・ベンチャーを通じて収入の道を作ることを目的としています。2009年までに、マイクロ融資の受益者は累積17,107人、ローン支払金は累積295万米ドルに達しました。非営利組織であるAMDAバングラデシュの事業の中で収入を生み出している唯一のプログラムです。
コミュニティ学習センターは、非公式技能訓練・教育の場であり、地域の人々の集いの場として、人々が自分たち自身の発展のために集い、ともに過ごし、ともに働く場となってきました。青年フォーラム、母親フォーラム、父親フォーラム、漁師のフォーラム、など、さまざまなフォーラムがあり、社会問題に基づくグループ・ディスカッションやミーティング、セミナーを行っています。また特に青年層を対象としています。ガザリア郡の青少年人口は推定5万人で、郡の総人口の3分の1に当たります。彼らが情報・文化・教育の交流を通じて、また自分自身を有能な市民として成長させることの重要さに気づくことによって、健康な成人として成長できるよう、手助けできればと考えています。
これら3つのプログラムと並行して、AMDAバングラデシュは、日本とバングラデシュの学校交流プログラムも実施しています。2005年以来、岡山県の玉野市立東児中学校とガザリア郡テンガチャーハイスクールとの間で交流が行われています。
2010年には、AMDAバングラデシュ支部長、同ディレクターそれぞれが、新しくなったAMDA本部を訪ねる機会がありました。これから一層AMDA本部とAMDAバングラデシュが太い絆で結ばれ、有益な活動を実飽すべく研鑽を続けるものです。
AMDAバングラデシュを訪ねて
AMDA:特定非営利活動法人アムダ 理事 日南 香
「貧困、洪水」という、とかく暗いイメージがつきまとう国バングラデシュ。だが訪ねてみてモノ貧しくとも心豊かな国であることに心をうたれた。とにかく人々が底抜けに明るく親切で真面目なのだ。私がフィールド視察に参加した目的のひとつは、AMDAバングラデシュの活動を知ることであった。首都ダッカにその本部があり、ガザリアが活動地である。スタッフの統制のとれた仕事ぶりは見事で、ミーティングや交流プログラムに参加してみたが、仕事に対する使命感とやる気が旺盛なことに強い感銘を受けた。そこには、チーフであるラザック氏の、国の将来を思う強い信念が活動を支える源泉となっており、日本も見習うべきことが少なくないと感じた。
ガザリアの学校訪問でのこと、この国の訪問8回目というAMDAボランティアセンター参与の竹谷氏を大勢の子どもたちが大歓声で取り囲み迎えた。歓迎の輪はいつまでも解けようとせず、まさに感動のひと幕であった。紙面の都合で割愛するが、この国の発展を阻害している要因は、極端なインフラの遅れとガバナンスの弱さであろう。市民が「自立」に目覚めたとき、富める国に向けて歩を早めることも決して夢ではない。ゴールの見えないAMDAバングラデシュの地道な活動―しかしその存在と実績は確実に市民権を得ていると実感した。事務局長のラザック氏をはじめスタッフ諸氏の一層の活躍を祈るや切である。
同行の竹谷参与そして看護師の佐々木さん、想い出の旅をありがとう。(2010年11月21日〜27日バングラデシュ滞在)