元青年海外協力隊隊員の活躍
ドミニカ共和国駐在 村落開発普及員 小川 千絵
本文で紹介の女性と、八尾義肢装具士 |
私の活動するドミニカ共和国エリアス・ピニャ県コメンダドール市は、ハイチと国境を接するドミニカ西部に位置します。山の中の小さな村を訪れたとき、片足を失った一人の女性に出会いました。地震前からこの村に住んでいた彼女はハイチ首都ポルトープランス出身で、ちょうど帰国中に被災し右足を失ったのでした。3月任期終了まで海外青年協力隊員として共にドミニカで活動していた八尾さんが4月からAMDAの義足プロジェクトを始められていました。6月に八尾さんがこの地を再訪されるときき、彼女の元へ八尾さんを案内することになりました。足を失ってから約半年、車椅子と松葉杖に頼る彼女の太ももの筋肉は、前側の筋肉が常に縮み、凝り固まっている状態でした。義足が提供されても、それで歩くには失った側の太もも側面と後ろの筋肉を鍛える必要があるそうです。八尾さんが彼女に教える筋力トレーニングの様子を傍らで見ていましたが、相当ハードなものでした。運動が終わって彼女に言った彼の言葉がとても印象的でした。
「私は頑張って義足を作ります。あなたもトレーニングを頑張って。いい義足が出来たとしても、あなたの足の筋肉が無ければ一人では歩けるようにはなりませんよ。」私はこれを聞いてはっとしました。これは、彼女だけではなく、開発援助全般に通じることだと思いました。国境の貧困地域で、外部NGOの援助慣れしている現地の人々。”持つ者が持たざる者に与える”という考えの下、日常的に平気でお金やモノをねだる人々に悩まされ、時にイライラしながら過ごしてきた私の一年間。全てに於いて乏しいこの地域で彼らが自らの足で歩むにはある程度の援助は不可欠。ただし、それだけではいつまでもおんぶにだっこのままです。与えられた援助を有効に使い、一人で歩いていくには、人々の能力、やる気を高めるという、筋力補強が必要だと改めて実感しました。
混乱と貧困の隣国で、苦労と共に作った彼の義足がどうか現地の人々の人生を良い方に変えてくれますように、そんな気持ちでこの町を後にする彼を見送りました。