緊急支援活動
- インドネシアダム決壊被害に対する緊急医療支援活動
- イタリア地震被害に対する緊急支援活動
- バングラデシュ・サイクロン被害に対する緊急支援活動
- ネパール中西部下痢疾患蔓延に対する医療支援活動
- インドネシアジャワ島西部地震被害に対する緊急医療支援活動
- フィリピン台風16号被害に対する緊急支援活動
- インドネシアスマトラ島沖地震被害に対する緊急医療支援活動
- インド洪水被害に対する緊急救援活動
- サモア諸島津波被害に対する医療支援活動
- 中国四川省地震被災地への支援/新型インフルエンザ対策
- ハイチ地震被災者に対する緊急医療支援
- チリ地震被災者に対する緊急医療支援活動
インドネシアダム決壊被害に対する緊急医療支援活動
◇実施場所:ジャカルタ近郊バンテン州タンゲラン
◇実施期間:2009年3月30日〜4月6日
◇派遣者:AMDAインドネシア支部の医師5人
◇現地協力機関:インドネシア ムハマディヤ大学
◇事業内容:
AMDAインドネシア支部医療チームが3月30日に被災地に入り、関係者から情報収集を行った後、31日に避難所で診療を開始しました。被災地では医薬品の不足が伝えられていたことから、AMDAインドネシアチームは、事前に抗生物質、ビタミン剤、下痢、咳止め、抗炎症剤等を調達し、被災地で診療にあたりました。4月6日に診療を終了するまでに36人を診療しました。主な疾患は、風邪・咳、傷口感染、皮膚疾患、消化器疾患等でした。
4月2日にムハマディヤ大学の医療チームに対して医薬品を寄贈しました。ムハマディヤ大学は、今回の災害の避難場所となったところです。4月3日には子どもの心的外傷を和らげるための遊びやビデオ上映会を実施、本や文具セット(50セット)の配布を行いました。
イタリア地震被害に対する緊急支援活動
◇実施場所:イタリア共和国中部アブルッツォ州ラクイラ県
◇実施期間:2009年5月10日〜5月15日
◇派遣者:AMDA本部から津曲兼司医師、谷口敬一郎調整員
◇現地協力機関:地元消防団
◇実施協力団体:
・ISIG(Institute of International Sociology Goriziaの略。非営利・民間の研究機関)
・UNITALSI (Unione Nazionale Italiana Trasporto Ammalati a Lourdes e Santuari Internazionaliの略。障害者の移動・交通を支援するカトリック系イタリア全国組合)
◇事業内容:
2009年4月6日イタリア共和国アブルッツォ州ラクイラ(ローマから北東に約95キロ)でマグニチュード6.3の地震が発生。歴史的建造物の多い市街地を中心に建物が倒壊し、イタリア政府の発表によると、4月末までに死者約290人、負傷者約1,000人、住宅を失った人約48,000人が確認されました。AMDAは、地震発生直後にイタリア北部の研究機関ISIGとボランティア組織UNITALSIと連絡を取り情報収集を行い、AMDA本部から医師1人と調整員1人を被災地へ派遣しました。
被災地では、被害の大きかったラクイラ市街、被災者支援を実施している組織が前線基地として使うコーディネーションセンター、避難キャンプ、大学病院を訪問し、医療ニーズの調査を実施しました。また、ラクイラの医療支援を統括しているムチコニ医師と面会しました。ムチコニ医師からは遠く日本から支援の可能性を探るべく被災地を訪問したことに対する感謝とねぎらいの言葉を頂きました。医療支援については、全国の病院スタッフ、イタリア赤十字、消防、軍他からの十分な医療スタッフが確保され、被災者へのケアもできているということでした。このような経緯から、AMDAは医療支援を実施しないことを決定し、代わりに協力団体でありPiazza d'Armiの避難民キャンプを運営しているUNITALSIに義捐金を贈り、被災者の避難生活に役立ててもらうことにしました。
◇裨益者の声
UNITALSIから以下のような感謝状を頂きました。「AMDAの支援に感謝しています。AMDAの義捐金によって、被災したラクイラの人々、特に最も手を差し伸べられるべき病人やご高齢者に対して、支援を継続することができます」
バングラデシュ・サイクロン被害に対する緊急支援活動
◇実施場所:バングラデシュ人民共和国バリサル管区バルグナ県の南部5か村
◇実施期間:2009年6月1日から6月4日
◇派遣者及びチーム構成:AMDAバングラデシュ支部の医療助手1人と調整員2人
◇現地協力機関:各村役場
◇実施協力団体:AMDAバングラデシュ支部
◇実施事業内容:
2009年5月25日にバングラデシュの南部沿岸地域とインド東北部を直撃したサイクロン「アイラ」により、バングラデシュ国内では、死者180人、負傷者7103人、損壊家屋約60万戸という甚大な被害が発生しました(6月4日バングラデシュ政府発表)。AMDA本部は5月29日に緊急支援を実施することを決定し、6月1日にAMDAバングラデシュ支部の医療助手1人と調整員2人を被災地に派遣しました。
AMDAバングラデシュチームは、ダッカから約200キロ南に位置するバリサル管区バルグナ県南部の5か村で、緊急支援物資の配布と医療助手による医療サービスの提供を行いました。6月1日にチャリタトリ村で約200人の被災者に対して経口補水塩600袋、浄水剤1000錠、栄養強化ビスケット200袋を配布しました。2日には、ファリシャトリ村とウルグニア村、3日にはジェナイバリア村、4日にはバシュキ村で、上述の支援物資に加えて衣類の配布も行いました。また、医療助手が裂傷などを負った被災者に対して簡単な医療処置を施しました。
バルグナ県はサイクロンによる死者はいなかったものの、決壊した堤防の総距離が最も長い地域であり、洪水により住民の家財の損失は大きく、安全な水も確保が難しくなっていた。そのため、飲料水用浄化剤により安全な飲料水を確保できるようにし、また、栄養強化ビスケットにより避難生活による不足しがちな栄養価を摂取できるようにしました。下痢などの症状を起こしている人に対しては、経口保水塩を配布し、脱水症状を防ぐよう努めました。AMDAバングラデシュチームは6月1日から6月4日までの間に、住民約2300人に緊急支援物資(飲料水用浄水剤、経口保水塩、栄養強化ビスケット、衣類)を提供しました。
ネパール中西部下痢疾患蔓延に対する医療支援活動
◇実施場所:ネパール連邦民主共和国ベリ県ジャジャルコット郡
◇実施期間:2009年7月31日〜8月9日
◇派遣者:朴範子(岡山大学病院救急科医師)、ニティアン・ヴィーラバグ(AMDA本部職員)
◇事業チーム構成:AMDAネパール支部の医療助手4人の計6人
◇現地協力機関:スルケット郡保健局(ベリ県)、ジャジャルコット郡立病院、パダル村保健支所、サルマ村軍医療キャンプ
◇実施協力団体:国立大学法人岡山大学、岡山大学病院
◇事業内容:
ネパール連邦民主共和国の首都カトマンズから375km西に位置する中西部ベリ県のジャジャルコット(Jajarkot)郡とその周辺地域で、2009年5月頃から水性下痢疾患の大発生があり、8月3日までに、約38,000人が治療を受け、241人が死亡しました(WHO発表)。ジャジャルコット郡は、最寄りの空港から徒歩で4時間かかるアクセスの悪い貧困地域です。感染の大発生は汚水に起因し、衛生知識の欠如と衛生習慣の悪さがこれに更に追い打ちをかけました。地域では男性が仕事を求めて街に出ていることから、女性と子どもに感染者が多く見られました。
連携協定を結んでいる岡山大学に所属する熱帯医学専門家の医師とAMDA本部の調整員が7月31日に岡山を出発。二人はAMDAネパール支部の医療助手4人と協力して、感染者の治療と衛生環境の改善にあたりました。
下痢疾患の感染状況は、最終的には死者が250人を超えたものの、最も感染が広がっていたジャジャルコット郡とルクム郡では致死率が1%以下と許容レベルになり、同様に流行曲線も下降傾向となりました。ひとまず感染が抑えられたことから、AMDAは活動を終了しました。
◇派遣者の声:ネパールには8日間滞在でしたが、この地域の生活がいかに困難であるかということを身をもって体験し、最低限必要な医療もなかなか受けられないという状況に加えて、必死に働いているにもかかわらず日々の生活にも非常に困っているという状況を日本の皆さんにも伝えなければならないと強く感じました。(朴 範子 岡山大学病院医師)
インドネシアジャワ島西部地震被害に対する緊急医療支援活動
◇実施場所:インドネシア共和国西ジャワ州チアンジュル
◇実施期間:2009年9月5日〜9月9日
◇事業チーム構成:AMDAインドネシア支部の医師2人と看護師1人の3人
◇現地協力機関:西ジャワ州チアンジュル保健局
◇事業内容:
インドネシア共和国ジャワ島西部で、9月2日マグニチュード7.3の地震が発生しました。同国災害対策庁によると9月4日までに死者が64人、行方不明者が37人にのぼりました。54,000棟を超える家屋が全半壊し、27,000人が避難生活を余儀なくされました。9月4日AMDAはこの地震被災者に対して緊急医療支援活動の開始を決定しました。ユドヨノ・インドネシア大統領が、震災時点で海外からの支援を要請しなかったことから、AMDAインドネシア支部単独で緊急医療チームを被災地に派遣し、活動することになりました。
AMDAインドネシア支部の医師2人と看護師1人は、9月6日にマカッサルで救援物資や医療品を調達し翌日被災地へ到着。被害の激しかったチアンジュルの2か村で活動を開始しました。被災地では余震が続く中、ボランティアが生存者の救出活動にあたっていました。
AMDAインドネシアチームは、村の避難所での医薬品配布、診察活動を行いました。子どもたちに対しては外傷後の心理療法も行いました。また、被災地を歩きまわり被災者へ食糧を配りました。
フィリピン台風16号被害に対する緊急支援活動
◇実施場所:フィリピン共和国マニラ首都圏マリキナ市
◇実施期間:2009年9月27日〜10月7日
◇派遣者:ニティアン・ヴィーラバグAMDA本部職員、古城デイジー倉敷フィリピーノサークル代表
◇事業チーム構成:フィリピン空軍(PAF)の医師6人、AMDA現地ボランティア4人、派遣者2人の合同チーム
◇現地協力機関:AMDAフィリピン支部、アジア医学生協議会(AMSA)フィリピン支部、ライオンズクラブ・マニラチャイナタウン(LCMC)、アジア・メディカル・モバイル・サービス(AMMS)
◇実施協力団体:倉敷フィリピーノサークル(倉敷市教育委員会指導平和交流推進室ボランティア国際交流団体として登録)
◇事業内容
フィリピン・ルソン島で2009年9月26日から台風16号「ケッツアーナ」による大規模な洪水が発生、過去42年間で最悪となる水害に見舞われました。同政府は27日、マニラ首都圏や周辺地域で少なくとも73人が死亡、行方不明23人と発表するとともに、ルソン島を中心にマニラと25の州に国家非常事態を宣言しました。マニラ市内の約80パーセントが浸水し、大規模な停電も発生、避難者数は28万人を超える事態となりました。
9月29日にAMDA本部調整員はマニラ到着後にマリキナの避難所を4か所視察しました。なかには5000人程が学校に避難し、ひとつの教室で25世帯が暮らしているところもありました。AMDAはフィリピン支部の仲介でフィリピン空軍と協力して医療活動を行うことになり、AMDA・フィリピン空軍合同チームは、医薬品や石鹸を調達し、診療を行いました。診療した438人(子ども235人、大人60人)には、風邪や皮膚炎、眼下疾患が多く見られました。
10月7日にAMDAチームはマニラ東部に隣接するリサール州のピピンダン村へ行き、500世帯への食料や救援物資を配布しました。
インドネシアスマトラ島沖地震被害に対する緊急医療支援活動
◇実施場所:インドネシア共和国西スマトラ州パダン
◇実施期間:2009年10月1日〜10月15日
◇派遣者:津曲兼司(医療法人アスカ会医師)、光島宏美(医療法人アスカ会作業療法士)、渕崎祐一(AMDA ERネットワーク登録医師)、細村幹夫(医療法人康麗会越谷誠和病院医師)、米田哲(群馬県立小児医療センター医師)、工藤ちひろ(AMDA ERネットワーク登録看護師)、平井麗子(医療法人アスカ会運動健康指導士)
◇事業チーム構成:AMDAインドネシア支部9人とAMDA本部日本からの計16人の合同チーム
◇現地協力機関:パダンのジャミール総合病院、現地NGOドンペット・ドゥアファ
◇実施協力団体:医療法人アスカ会
◇事業内容:
2009年9月30日インドネシア・スマトラ島沖でマグニチュード7.9の地震が発生し、死者1,117人、倒壊家屋13万軒以上の甚大な被害が発生しました(インドネシア政府10月15日発表)。10月1日AMDA本部は、日本から津曲医師、光島医療調整員の2人を第1次医療チームとして派遣。同時にAMDAインドネシア支部医療チームも被災地に派遣しました。翌2日にはインドネシア支部医療チームが被災地パダンの総合病院に外科医と麻酔科医を外科手術応援スタッフとして派遣し、地震による重症者の手術にあたりました。4日からは日本からの医療チームが中心となり、パリアマン地区にて巡回診療を開始。同日、日本から第2次医療チーム(渕崎医師、細村医師、米田医師、工藤看護師、平井医療調整員)を派遣し、5日から巡回診療に加わりました。巡回診療では、地震による落下物や転倒による骨折や外傷、ショックによる頭痛・めまい・疲労等の不定愁訴、避難生活によるとみられる上気道炎などの患者を診療しました。10月12日、被災地で全ての医療機関が機能し始めたこと、地元医療機関の医師の半数が現場復帰したことからAMDAは緊急フェーズでの役割を終えたと判断し、現地協力団体ドンペット・ドゥアファに活動を引き継ぎ、巡回診療活動を終了しました。10月4日から12日までの8日間の巡回診療活動期間中に約1,130人を診療しました。
◇裨益者の声:
「揺れが2回来た。1回目で逃げた人は助かった。」「5年前の地震でヒビが入っていた建物が倒れた。」「また崩れるかと思うと怖くて家で眠れない」「レンガやコンクリート造りばかり壊れた」「津波に気をつけてさえいればいいと思っていた」―話しながら地震の恐怖を思い出してしまったのか、泣いてしまう子どももいた(平井麗子・健康運動指導士)
インド洪水被害に対する緊急救援活動
◇実施場所:インド南部カルナタカ州(カワール地区ゼリワラ村、Binaga村、Sakalbag村)
◇実施期間:2009年10月10日〜10月18日
◇派遣者:鹿島小緒里(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科助教)
◇チーム構成:AMDA本部調査員1人、セデュクマール・カマト(AMDAインド支部長)
◇現地協力機関:インド・マニパール大学、AMDAインド支部
◇実施協力団体:岡山大学
◇事業内容:
2009年9月下旬、インド南部カルナタカ州とその周辺州で、数十年に一度といわれる集中豪雨による洪水が発生し、カルナタカ州で、死者約200人以上、250万人以上が家屋を失う甚大な被害が発生しました。AMDA本部は、インド支部およびAMDAと連携協力を結んでいる岡山大学とインド・マニパール大学と協力し、被災地の調査を実施しました。洪水被害はカルナタカ州の広範囲にわたっており、その中でも地元行政から救援の要請があったUttara Kannanda県に、12日鹿島調整員とAMDAインド支部長カマト医師が赴き、行政官等との協議を行いました。そこで被害が大きかった地域としてあげられた3か所の村を訪問しさらに調査を行い、13日、Binaga村とSakalbag村で、幼児の衣類、学校用のかばんと文具、ビスケットの寄贈を行いました。また、被災地カルナタ州の行政機関との意見交換や被災村の調査を通じ、化学工場から流出した化学物質による井戸水汚染が懸念されていることが判明しました。AMDAインド支部とマニパール大学は、被災者の健康への影響を考慮し、飲料水の調査をしました。
サモア諸島津波被害に対する医療支援活動
◇実施場所:サモア諸島(ウボル島南部)
◇実施期間:2009年10月13日〜10月20日
◇派遣者:ニティアン・ヴィーラバグ(AMDA本部職員)、平野恭介(AMDA本部)、リセ・グルート・アルバーツ(AMDAニュージーランド支部)
◇事業チーム構成: Emulsi Poni医師(メドセン医院院長)、Audrey氏(Women In Business Development Inc.)、AMDA本部調査員2人、AMDAニュージーランド支部心理療法専門家1人 計5人
◇現地協力機関:メドセン医院(地域中核病院)、Women In Business Development Inc.(現地NGO)
◇実施協力団体:AMDAカナダ支部、AMDAニュージーランド支部
◇事業内容:
南太平洋のサモア諸島付近で、2009年9月29日マグニチュード8.3の強い地震があり、約5メートルの津波が発生しました。サモア独立国では、死者137人、負傷者310人、行方不明者2人、20村が全壊し、約3500人が避難しました(10月7日WHO発表)。津波発生直後より、AMDAカナダ支部、ニュージーランド支部と協力し、現地協力者を通じて被災状況と医療ニーズを確認、AMDA本部とニュージーランド支部からは心理療法専門家を派遣しました。本部派遣調査員は経由地オークランドで医薬品を調達し、サモアに入国しました。16日、首都アピアの中核病院メドセン医院に、医薬品とニュージーランド支部から送られた注射器、注射針、体温計などを寄贈しました。メドセン医院長プニ医師は、災害発生直後から被災地での緊急医療に携わり、近い将来に被災者が仮設住宅に移動した後も被災者の健康状態を診ることができる立場であることから寄贈先と決定しました。災害発生から2週間以上経った時点でも、ブルーシートを張っただけの仮住まいを続けている被災者、またショックから無気力状態になっている被災者も多く見られました。そのため、心療専門家アルバーツ氏は、地元女性団体のWomen In Business Development Inc.や他の支援団体スタッフに対して、カウンセリング技術やトラウマの影響、ストレスサインの見つけ方などの心理ケア研修を実施しました。
その後の被災地の復興調査と支援に、2010年2月再び本部から調整員が赴き、被災地アピア地域の小学校と幼稚園あわせて7校に、学用品を、メドセン病院に医療用品の贈呈を行いました。
中国四川省地震被災地への支援/新型インフルエンザ対策
◇実施場所:四川省成都(チョンドゥ)、広元市、都江堰 他
◇実施期間:2009年12月13日〜12月22日
◇派遣者:ニティアン・ヴィーラバグAMDA本部職員
◇事業チーム構成:四川省中医薬科学院(SACMS)の医師5人、広元市病院の医師12名、看護師6名と派遣者計24人
◇現地協力機関:四川省中医薬科学院(SACMS)、広元市病院
◇事業内容
2008年5月の四川大地震によって大きな被害を受けた3つの主な学校を訪問し、児童生徒に対して新型インフルエンザ(H1N1型)の医療活動を行いました。これらの地域では、ほとんどの学校が全壊または半壊し、未だに復旧は完了していません。しかしながら、被災者、特に住民の暮らしはほぼ平常に戻っています。
以下の4つの分野の活動を行いました。
1.中学校の生徒に対する健康診断
AMDAは、四川省広元市中学校で生徒の健康診断を実施しました。広元市病院の医師12名と看護師6名からなるチームが、1183人の生徒について、身長、体重、血圧、視力、色覚、聴力の測定と、歯科、咽頭、内科検査を行いました。その結果、異状無しの生徒は全体の11%で、ほとんどの生徒に色視症、近視、単純性甲状腺腫、中耳炎、色覚異常、偏平足、肥満、貧血などの症状が見られました。
2.新型インフルエンザ(H1N1型)への対策と啓発運動
AMDAとSACMSは、2つの学校で児童生徒に保健指導活動を行いました。上級研究員でSACMS発行の医学雑誌の編集にも携わるジャン・トンユン博士が、同僚4人の支援を受けて啓発活動に取り組みました。広元市の山西小学校と都江堰の沿江小学校から合計約800人の児童生徒が参加しました。セッションの後、2つの小学校に新型インフルエンザ(H1N1型)に効く漢方の錠剤を寄付しました。
3.児童への新型インフル治療薬の配布
AMDAは、SACMSの支援を受けて、児童生徒を新型インフルへの感染から守る漢方薬を配りました。AMDAは、子供たちに24錠入りの箱を2400箱贈りました。期間中、子供1人当り2箱が配られ、子供たちは、啓発活動期間中に錠剤を6日間続けて飲むことの重要性を教えられました。さらに校長先生はじめ先生方も服用期間と服用量について指導を受け、それを父兄に伝えることになっています。薬は被災地域の2つの主な学校に贈られ、広元市の山西小学校が約1000箱、都江堰の沿江小学校が約1400箱の寄贈を受けました。前者ではおよそ500人、後者ではおよそ700 人の児童生徒が恩恵を受けたことになります。
4.被災地域の学校への体温計の寄付
AMDAはまた、多くの学校に体温計を贈りました。インフルエンザ流行の広元、都江堰、南充、ペンズールーズー等多くの学校に計325本、都江堰と成都の保健所に25本入りずつ贈呈しました。
ハイチ地震被災者に対する緊急医療支援
◇活動実施場所:ハイチ共和国、ゴナイブ、サンマルク、ドミニカ共和国ヒマニ
◇実施期間:2010年1月14日から(現在継続中。3月末までを年次報告として以下記載)
◇派遣者:AMDA多国籍医師団参加人数:日本・カナダ・コロンビア・ペルー・ネパール・ボリビア・インドから医師15人・看護師8人・調整員6人 計29人 3月末日現在
◇事業チーム構成:上記に加え、ハイチ国内ゴナイブ、サンマルク各病院のスタッフ、
◇現地協力機関及び団体:在ドミニカ日本大使館、ハイチ国保健省、CCISD、CECI、(いずれもカナダの民間団体)、PNP(ハイチの民間団体)
◇事業内容:
2010年1月12日(現地時間)ハイチ共和国首都ポルトープランス近郊で、マグニチュード7.0の地震が発生。死者22万人以上と見られも今世紀最大の自然災害といわれるものとなりました。この地震によりハイチ政府と治安維持にあたっていた国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)が機能不全に陥り、統治機構は機能しない状況になりました。
AMDAは、直ちに支援活動を開始。第一次チームとして、日本から医師1人、調整員2人の3人を、同時にカナダ支部から看護師1を派遣。15日ハイチ隣国ドミニカ共和国首都サントドミンゴに到着。その後カナダの民間団体CECIと現地NGOと共に、重傷者が転送されているサンマルク(ポルトープランス北西約90キロ)の聖ニコラス病院に向かい、到着後診療活動を開始しました。また、国連等関係機関と協議した結果、1月25日からは被災地ポルトープランスから5万人以上(1月28日現在)が避難しているゴナイヴ(Gonaives:ポルトープランスから北西120キロ)の病院で活動することになりました。ゴナイヴ、サンマルクでは外科手術をはじめとする緊急医療活動を、またポルトープランスの避難者居住地域では食料品の提供を現地NGOとともに行いました。
●ハイチ・サンマルク 聖ニコラス病院での病院支援:被災地ポルトープランスから転送されてくる重症患者の診療
●ハイチ・ゴナイブでのHospital de Secours des Gonaivesなど2病院の支援:被災地から転送されてくる重症患者の診療、手術及び医療器具の寄贈
●ドミニカ共和国ヒマニでの病院支援:被災地から転送されてくる重症患者の診療
チリ地震被災者に対する緊急医療支援活動
◇実施場所:チリ国第7州:マウレ州の沿岸部 コンスティツシオン
◇実施期間:2010年3月2日から(現在継続中。3月末までを年次報告として以下記載)
◇派遣者:本部より、津曲兼司医師、森田佳奈子調整員、大和玲子看護師、石岡未和看護師の4人、AMDAボリビア支部より心理カウンセラー1人、AMDAペルー支部より調整員1人 計6人
◇事業チーム構成:CESFAMアルトセロ診療所より所長含む医師、看護師、看護助手、栄養士、ソーシャルワーカー等20人、サンチアゴから派遣のチリ緊急医療チームより医師、看護師、調整員等5人、チリ政府軍ラ・セレーナ基地より軍人15人
◇現地協力機関:チリ政府地震対策緊急本部、チリ政府軍タルカ基地、保健省マウレ州事務所、CESFAMアルトセロ診療所、サンチアゴから派遣のチリ緊急医療チーム、ミドリ十字薬局、タルカ住民支援グループ 他
◇事業内容:
南米チリにおいて2月27日マグニチュード8.8地震が発生。震源地に近いビオビオ州都コンセプシオンを始め、沿岸部一帯が地震または津波の被害にあい、死者は708人にのぼる事態となりました。AMDAからの第一次チームはボリビアを経由してチリ入りし、3月5日から11日にかけて調査を実施。マウレ州(第7州)の州都タルカのチリ軍敷地内に設置された地震対策本部、軍医療担当部門、コンスティツシオン病院、地元NGO、ビオビオ州(第8州)のコンセプシオン州立病院(周辺の5県20万人を対象とする総合専門病院)などを訪問し、マウレ州、ビオビオ州にまたがる沿岸部地震津波被災地の視察を行いました。その結果、被災者へのチリ政府軍の支援は急速に進められていたものの、沿岸漁村部では災害弱者である乳幼児への支援が行われていないことが分かり、「乳幼児支援プロジェクト」を実施することを決定し、物資の調達や関係者とのミーティングを重ね、3月23日にプロジェクトを実施しました。
CESFAMアルトセロ診療所の小児科看護師協力のもと、地震の影響で健康・栄養状態に異常があると思われる乳幼児100名を抽出。その対象者たちへ診療所内・外2チームに分かれて乳幼児健康診断と物資配給を行った。診療所内チームでは、来院した乳幼児への支援とし、診療所外チームは7村の被災キャンプ地や村落部貧困地域を巡回訪問しての実施となった。内容は、チリ厚生省の乳幼児定期健診プログラムに基づくもので、乳幼児の体重・身長を測定し、成長曲線で栄養・発育状況を観察・評価、その後、保健・衛生・育児指導を行い、最後に物資を配給するというもの。AMDA独自アンケート調査とチリ厚生省の母子健康手帳のデ-ターを活用。
これらの調査の結果、栄養状態に極度の影響をきたしている乳幼児、医師の診察・処置が必要になる乳幼児は発見されなかった。しかし、キャンプ地や街の中心から離れた村落部へ行くほど、居住環境が悪くなっていったという報告を受け、震災後4週間が経過し、感染が懸念され始める時期ということから、集団保健指導を企画し、3月25日にはアルトセロ診療所の看護師、サンチアゴの緊急医療チームと共に、集団保健指導を3か所の地域で、80名を対象に実施しました。実施場所は、医療者が実際訪問して衛生環境が悪かった場所を選び、基本的な手洗いを元にした教育ビデオを使って、手形のお面をして、歌や動きを多くし、被災で落ち込む人々に少しでも明るい時間を提供できたら…という想いを込めて、子供から大人まで楽しく学べる内容を心がけた。
現地の各種機関の協力が得られ、ローカルイニシアチブで実施をおこなった結果、地元ニーズに合った効果的な活動になった。
◇派遣者の声:
歴史的な背景からこれまで軍隊に対して距離感をもっていた住民や医療専門家らから、「軍隊ってこんなにいい人たちだと思わなかった。」「外に出て活動する重要性が理解できた。」など、AMDA派遣者との協働によって、新しい発見を感じて伝えてくれるひとが多かった。
また、多くの人から「遠くからチリに来てくれてありがとう!」と、地球の裏側にある日本人の支援に感謝の言葉をが寄せられた。