キルギス共和国国内避難民に対する緊急医療支援活動
緊急救援担当 ニッティヤン ヴィーラヴァーグ
騒乱の発端となった南部オシの街 |
診療するAMDAカザフスタン支部医師 |
中央アジアのキルギスでは、キルギス系民族とウズベク系を中心とする少数派民族との間で6月半ばに騒乱が発生し、21日にはその犠牲者が208人に上るという同国保健省の発表が出されるに至りました。報道では避難生活を送る住民は30万人とも40万人とも言われました。AMDAでは、調査を兼ねた緊急医療支援チームを派遣することを決定し、本部から調整員1名とAMDAカザフスタン支部から医師1名を派遣しました。
派遣期間6月30日〜7月8日(キルギス国内滞在1日〜7日)
今回の緊急救援ではキルギスタン政府をはじめ、同国保健省、特にダミラ・ニイアザリエヴァ保健相より、いずれの場所でも医療行為ができる許可や安全確保のための市内同行者の手配などの手厚い支援をいただき、紛争地での活動が可能になりました。
以下にご報告します。
首都ビシュケクでは以下の医療機関を訪問した。
1.ビシュケク国立病院(神経外科、眼科、外科)
2.国立母子福祉センター
3.ビシュケク外傷・整形外科研究センター
以上三つの病院では内乱で負傷した25名の患者と面会。患者のほとんどに銃撃による被弾、骨折、頭蓋骨および脊椎の損傷等が見られた。病院側及び患者当人と相談した結果、患者本人が支払うこととなるところの医薬品を寄贈することにした。
内乱の発端となった南部オシでは、現地NGOインタービリムと協力し、以下、四つの地域において国内避難民に対する支援を行った。
1.オシ地区オン・アディール:現地の学校に設置されたキャンプでは、ウズベク系キルギスタン人が避難していた。アムダはここで約30名の患者を診察
2.カラ・スー地区アク・タッシュ村:内陸部アク・タシュ村に設置された難民キャンプでは、キルギス系の人々が小さなコミュニティーを形成しており、アムダはここで25名前後(主に女性と子供)の治療にあたった
3.オシ南部ユジュニィ村:同村の南にあるキルギス系のコミュニティー
4.オシ地区『カマロヴァ』(障害者およびその家族を中心とした難民キャンプ):障害者施設の入居者とその家族によって形成されたキャンプ。施設の方は内乱で破壊されてしまった。ガルバルシン医師が約20名(大半が女性)の診療にあたった
四ヶ所のいずれのキャンプにおいても避難民の大半は女性と子供であった。これは男達が日中に自宅まで戻り家財を守っていた為である。主な怪我や病状については、高血症、頭痛、腹部における合併症、胃感染、被弾による外傷のほか、婦人病の症状も多く見られた。アムダはここでも被災者家族に医薬品と衛生物資を寄贈した。
騒乱から2週間以上たった訪問時点でも、女性や子供達の多くが今回の惨事におののいていた。家族を失った者も少なくない。ガルバルシン医師によれば、避難者の表情に精神的なトラウマが明らかであり、精神科での適切な処置が必要な状況である。このほか、拉致被害に遭った避難者やガソリンに放たれた火で火傷を負ったけが人も見られた。いずれの避難民キャンプも基本的な生活物資が欠乏しており、医療ケアにおいては皆無であったといえる。
AMDAは今後もキルギスタン政府や現地NGO、青年企業家連盟等と協定を結ぶなど、連携協力先を広げることで、紛争地のこれらの人々を支援する活動を続けてまいります。ご支援よろしくお願いいたします。