AMDA社会開発機構 ジプチ事業(2009/4発行ジャーナル4月春号掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

AMDA社会開発機構 ジプチ事業(2009/4発行ジャーナル4月春号掲載)

難民の力

    AMDA社会開発機構  アフリカ・中南米チーム長        田中  一弘


栄養改善のデータを確認する難民スタッフ

 海賊対策のニュースでにわかに脚光を浴び始めたジブチ共和国。これまで私たちが難民支援を15年以上実施してきたこの国がこうして日本で少しでも知られるようになることは嬉しいことです。さて、「難民」という言葉を聞くと、支援を必要としている人というイメージが強いのではないでしょうか。もちろんそのイメージは間違ってはいませんが、必ずしも正しくはないのです。難民の中にはとても色々な能力を持った人たちがいます。考えれば当たり前のことなのです。祖国でいろんな勉強をし、仕事をしてきた人たちなのですから。
 AMDA社会開発機構は、現在国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の実施パートナーとして難民キャンプの診療所で保健医療を提供していますが、その中で、栄養失調児に対する栄養改善活動を行っています。そして、その活動を実施しているのは他でもない難民自身です。UNHCRはHealth Information Systemというものを導入し、世界の全キャンプ共通の保健医療データの管理を行っていますが、ここジブチの栄養改善活動に関するデータを収集するのは難民スタッフです。毎日栄養失調児の体重を図り、その体重に合わせて治療用の高栄養ミルクを提供し、日々の成長を追っていく。簡単な作業ではありません。そして、その週に無事回復した子どもたちが1日あたり、そして体重1キロあたり何グラム増えたかを計算するのです。その数値が、栄養改善活動の有効性を測る指標となります。その計算方法を十分に把握できていなかった彼らに、実際の例を示しながら教えたところ、すごく熱心に学んでいました。そして次の週にはその数値を計算するためのノートを用意していたのです。
先日、難民スタッフの一人から「いろいろと教えてくれてありがとう」という言葉をもらいました。正直すごく嬉しかったです。もちろん、単にありがとうと言ってくれたことに対してではなく、難民キャンプという過酷な環境のもと、向上心を持ち、学ぶことを素直によろこべる人に出会えたことに対してです。私も、こうして彼らから学び、そしてそれを素直に嬉しいと思える環境に感謝したいと思います。