インドネシア・ニアス島 緊急簡易家屋復興支援プロジェクト
ニアス島の雲行き | AMDAニアス 鈴木 俊介 |
本誌上でこれまでに2度 簡単にご紹介させて頂いたニアス島(簡易家屋復興支援)事業は、9月中旬にUNHCRと契約締結に至り、10月初旬より実質的な活動を開始している。数え て丸4ヶ月、当初はこれでもかというほどの大雨に打たれながら事業の成り行きに不安を覚えた。現在は雨季も終わり穏やかな日々が続いている。小高い丘から 見える大海原は日増しに青色を鮮明にし、この地がスマトラ沖に浮かぶ小さな島であることを否が応でも実感することができる。 インドネシアは大国である。一般的に人々のプライドも高い。どこへ出掛けてもその土地その土地の豊かな文化がある。ニアスもその例外ではなく、独特の文化 がある。特殊な建築技術を持ち、固有の言語、伝統行事、舞踊や唄がある。島の南部に伝わる「石跳び」という忍者顔負けの高飛び術は特に有名である。一方、 古くからオランダやドイツの宣教師が入っていたため、他の地域と比較してキリスト教色が強いのがニアスの特徴である。カトリックとプロテスタントの両方が 並存するが、「クリスチャン(キリスト教徒)」というと排他的にプロテスタント教徒を示し、カトリック教徒と区別している点が面白い。 |
被災地の状況
テント生活を続ける村民 |
一昨年の12月に起きた津波と昨年3月に起きた地震による被害を受けるまで、この島を訪れる外国人は「通の」サーファーや教会関係者くらいしかい なかった。しかもサーファーは島の南側から西側の海岸線を訪れるため、島の東側に位置するグヌンシトリという商業の中心地を訪れる外国人はごく僅かであっ た。災い転じて福となっているのかどうか判りかねるが、国連関係者や国際NGOの職員が駐在し、かつ復興支援活動に活用するため、現地市場から様々な物品 を調達しており、活況を呈していると言えなくもない。もちろん、そのことにより利益を得ている人々はごく少数の商売人であることは言うまでもない。
ニアスの人々は、想像していた以上にコスモポリタンな性格を有している。島国根性、排他的な側面はあまり見られない。スタッフのみならず、村の人々も、外 国人に対して決して卑屈にならない。礼を失することとフレンドリーであることとの境界線を明確にすることは時に困難であるが、例えば業務上一定の仕事を現 地の職員に任せる場合、仮に部下・上司という関係であっても、何でも言い合える仲である方が都合が良い場合が多い。
さて前置きが長くなったが、我々の仕事は、富士登山に例えるとまだ5合目に向かうバスの中にいるようなものである。仮設住宅建設のための準備作業を行って いる段階である。この事業の何が困難かというと、モニタリングやロジスティックス上の課題もさることながら、「住民の、住民による、住民のための建設」を 推進する途上で直面せざるを得ない種々の問題を、我々ではなく、住民に解決してもらうプロセスにある。大工を雇い入れ、機械的に建設していくのではなく、 住民が建設工程や大工技術を学び、自らの手で自己の仮設住宅を建設していくという、一面において夢のようなプロセスである。それがどれだけ現実味を帯びる かは、我々 スタッフの力量にかかっている。俗にこうした能力をファシリテーション技術と呼ぶが、精神的な格闘技と言っても良い。住民と向き合う現地職員が重圧に耐え かね、妥協し易きに流れると負けである。少々開発学的見地からのコメントになるが、住民参加には常に機会コストの弁済方法とを巡る駆け引きが包含されてい る。住民が無償で建設に従事する間、誰が彼らの生活費を負担するのか。表層的なボランティアイズムは通用しない。事業側がそれを負担すればするだけ、住民 の当事者意識と結果に対する責任感の度合いは薄れていく。 |
被害状況の確認と村民との集会
基礎工事 |
雨季でもないのに、今ニアス島を厚い雲が覆っている。すでに述べたが、UNHCRによる材木の調達が大幅に遅延している。12月末には到着する予定であっ たカリマンタン産材木の船積みがさらに遅れ、最初の到着は2月の中旬以降の予定となった。入札制度を通じて最初の契約者となった供給元の出荷能力に危機感 を持ったUNHCRは、その後出荷先をスラバヤにも求め、すでに3つの調達先と契約を交すことになった。問題は、それらの材木が一度に到着した場合、ニア ス島の小さな船着場と資材置場が大混乱に陥るのではないか、ということである。さらに、仮に水際における問題が解決されたとしても、輸送手段の制約から、 今度は各NGOが事業地へ木材を搬送することができるのか、という大きな懸念を我々は抱えている。
モデルシェルター(簡易家屋)建設
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完成したモデルシェルター
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海上輸送大作戦 | AMDAニアス(ロジスティクス担当) 宇佐美直人 |
ロジスティクス担当の役割 |
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海上輸送作戦 |
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小規模LCT、バージ |
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WFP-SS (国連世界食料計画―船舶輸送サービス)
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300トンLCT「ハニー」、26トンLCT、AMDA丸、自家製簡易桟橋の組み合わせで、海岸に物資を揚陸するというプランが現実味を帯びてきました。 うまく行けば3週間後からセメント用の砂利搬送が始まります。しかし海岸からどうやって数キロ内陸の村へ運ぶのか?ココナッツの木橋を架け、道を作り、一 輪車かトラクターかロバで・・
ロジ担当者の眠れぬ夜は続きます。