AMDAシンガポール支部長
ドン・ラウ医師
新型コロナウィルスの蔓延から一年が経過しました。昨年後半から現在にかけてのAMDA各国支部をとりまく状況について随時お伝えしていきます。
■シンガポール
現在のシンガポールにおける新型コロナウィルスの感染状況は、2021年3月31日現在、これまでの羅漢者数が60,347人(うち99.7%にあたる60,138人が回復)、死者数は30人となっています。
AMDAシンガポール支部が運営するMD国際医療センターでは、シンガポール保健省主導の公衆衛生予防クリニック構想(PHPC)の下、市民に対する一次医療サービスの提供を行っています。このスキームは、一次医療を提供する医療機関を保健省が統括し、インフルエンザの流行や、ヘイズ(煙霧)による健康被害、炭疽症(人畜共通感染症)など、公衆衛生上の緊急事態に対応するものです。政府は今回の新型コロナウィルスの蔓延を危機的状況と位置づけ、PHPCを再び発動した格好となります。
PHPCの役割:
PHPCの当該医療機関として、MD国際医療センターでは、医療非常事態の際、以下のような活動を行っています。
1. 医薬品の処方(タミフルや炭疽症用の抗生物質等)
2. ワクチン接種
3. 補助金による治療(例:政府の新型コロナウィルス対応スキームに準拠)
MD国際医療センターは、シンガポール国民ならびに永住者を対象とした政府のインフルエンザ補助金スキームに参画しており、コロナ禍において呼吸器系疾患と診断された人に対し、5ドルから10ドルで診察と治療を行っています。また同医療センターでは、保健省による新型コロナウィルスのPCR検査(スワッブテスト)を該当者全員に対して無料で行い、咳の症状と38度以下の発熱が見られる患者に対しても同様に無料の検査を実施しています。
かねてより同医療センターでは、糖尿病や高血圧等の慢性疾患患者に対するケアや、高齢者の医療ニーズへの対応など、一次医療サービスの提供に力を入れてきました。また政府主導の予防接種プログラムに準じて、インフルエンザや肺炎球菌、ヒトパピローマウィルス、B型肝炎、破傷風、ジフテリア、百日咳、はしか、おたふくかぜ、風疹、水疱瘡などのワクチン接種を行ってきた実績があります。日頃より保健省やNUHS(シンガポール国立大学健康機構)などと連携しながら、コロナ禍にあっても、質の高い医療を提供できるよう努めています。