9月5日、ツォグツェツエグ保健大臣 (当時)と面談した後に、保健省担当官、眼科医協会関係者、AMDA関係者と米国のNGO関係者とで子どもの眼を守る協議が行われた。保健省の担当者から9月15日を「子どもの眼の日」に制定して全国的に子どもの眼の健診を啓発普及することが紹介された。「子どもの眼の日」制定の根拠になったのはAMDAと共に高裕子川崎医療福祉大学教授等がブルガン前眼科医協会長と実施した過去7年間の貴重なデータが裏付けである。次の段階として、健診を実施する眼科医や家庭医と学校の児童の接点をどのようにするのか。調整役として日本の学校保健に携わる養護教員制度を紹介。保健省と文部省の両者に関係する制度である。日本における法律から学校保健の現場までの研修を薦めた。
佐藤拓史AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム運営委員会副委員長が医師に対して行ったモンゴル国立医科大学内視鏡センターにおける内視鏡治療の講義と実技指導、103救急チームで行った外傷時に必要な胸腹部超音波を使用した実技指導は大好評だった。直ちに両者と3ケ年計画プロジェクトを組んだ。往復旅費は日本サイド、滞在費はモンゴルサイドで負担。期間は1週間前後。ちなみに、103救急チームとは運転手1名と医師1名が組んだドクターカーで日本の119番にあたる。24時間体制であり、一日に約350件の出動。日本‐モンゴル友好病院は103チームに常駐スペースを提供している。当病院は首都ウランバートルで遊牧民の定着が著しい北部に位置しており、交通渋滞を避けることができると喜ばれている。
ウランバートルから車で10時間かかるグチンウス村。なつかしい村長と再会した。サジ果樹園は1ヘクタールの土地にサジが1千本植えられていた。果樹栽培に必要な水の確保のために村人が総出で1週間かけて井戸を掘ったとのこと。残念なのは異常に長い日照りが続き20%の苗がダメージを受けたこと。ただし、業者が損失分を無償提供してくれるとのことだった。「サジ果樹園は絶対に守り抜きます」と手を固く握ってくれた。その数日後に地平線まで草原が広がる中にある村長の自宅であるゲル(草原の真珠)を訪問した。ゲルの内部は家具も少なく本当に簡素である。交流の場として最適である。家族や親戚で馬20頭やヒツジ2千頭を飼っている。その中で最も美しい馬を私にプレゼントしてくれた。「尊敬する友に贈る」と。続いて、言われた。「毎年、あなたの馬に会いに来てください」と。
次世代人材育成プログラムであるTAPPについて説明したい。モンゴル国立医科大学バトバータル学長と学生交流について意見交換した。「大歓迎。日本以外の国の学生もたくさん来てほしい」と。内容として3点。1)モンゴル大学付属病院における研修。2)グチンウス村などにおける巡回診療。3)103救急チームのドクターカー同乗による研修。宿泊は現地学生の家。ぜひお勧めしたいのが草原の真珠であるゲルでの生活体験である。普通サイズのゲルでは7〜8つの寝台が丸く設置できる。その中で蒸したり焼いたりした羊の内臓を含むすべての肉を楽しむ。馬乳酒でもビールでも歓迎。村人は歌が得意である。草原、家族、恋人などがテーマである。朗々とした声で緩やかなメロディが流れる。もちろん、客人も芸を披露する必要がある。私も宮城道雄作曲の北海民謡調を尺八で紹介。「芸は身を助ける」である。親日的なモンゴルの人たちとのプログラムにご理解とご支援をいただければ幸いである。