不条理の世界と人道援助三原則 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

不条理の世界と人道援助三原則


不条理の世界はAMDAの永遠のテーマである。「どうしてこのような目に遭うのか。」そして「見放さないでほしい」が魂の叫びである。

仏教的に言えば、四苦八苦の世界である。前半の四苦とは体の苦しみ。生老病死である。1)生とは今日のご飯がない貧しさ2)老とは身体機能が衰えて他人依存となること3)病とは治療が受けられない、治らないこと4)死とは紛争や災害による不本意なもの――。

後半の四苦とは心の苦しみ。1)地位、名誉、お金などを求めても得られない2)嫌いな人に会う3)愛しい人との別れ4)心の衝動が抑えられない――。NGO/NPOの対象は生老病死の世界。命の普遍性。宗教家は心の四苦の世界。魂の永遠性。災害医療では被災地の死者と遺族に対して両者の協力が求められている。東日本大震災でAMDAの調整員として参加した若い僧侶による読経が遺族に喜ばれたことは記憶に新しい。

AMDAは人道援助の三原則で不条理の世界にいる人たちに対応している。三原則とは1)誰でも他人の役に立ちたい気持ちがある2)この気持ちの前には民族、宗教、文化などの壁はない3)援助を受ける側にもプライドがある――。

援助をする人と援助を受ける人の直接的な関係はスポンサーシップ。援助を受ける人のプライドを破壊する一番危険な人間関係である。「お互いに必要とする過程で尊敬と信頼が生じる人間関係」であるパートナーシップに昇華させなければいけない。どうすればいいのか。「今、あなたが困っているから助けます。将来私が困ったら助けてください」という相互扶助の導入により援助する人と援助を受ける人がパートナーシップになる。

「被災地のことがよくわかっている被災者のあなたのイニシアチブで問題解決をしましょう」というローカルイニシアチブの導入でプロジェクト実施者と援助を受ける人がパートナーシップになる。ローカルイニシアチブには「あなたを信頼します」というメッセージがある。勿論、支援者とプロジェクト実施者は支援の苦労を共にすることでパートナーシップである。不条理の世界にいる人たちも「誰でも他人の役に立ちたい気持ちがある」ことが明確になる。結果として「この気持ちの前には民族、宗教、文化などの壁はない」ことが証明される。「見放さないでほしい」魂の叫びがある人ほど人道援助の三原則に感応する。誰よりも多様性の共存と世界平和へ寄与することになる。

AMDA多国籍医師団は人道援助の三原則の具現化である。「救える命があればどこまでも」のスローガンを掲げて紛争や災害による不条理の世界にいる人たちのもとに飛び出す。メンバーはかって紛争や災害の不条理の世界を経験している。「見放さないでほしい」魂の叫びに人一倍感応する。国際社会は宗教なしには語れない。AMDA多国籍医師団は多宗教医師団でもある。医師としての職業的倫理感と各自の宗教観が相乗効果をもたらしている。

AMDA単独の展開による限界を超える方法論として、GPSP(世界平和パートナーシップ)を不条理の世界に対して位置付けている。世界は常に変化していることを大前提として、「不条理の世界と人道援助の三原則」の枠組みの応用とその限界も常に検証している。死者や遺族に対する「あなた方を見放していません」というメッセージ。平和構築分野として2000年から実施している紛争や災害による死者に対する合同慰霊を更に拡充していきたい。

皆様方にご理解とご支援をいただければ望外の喜びである。