2016年8月31日、モンゴル首都のウランバートルからゴビ沙漠の大草原を四輪駆動車で10時間走り続け、南西約500キロにあるウブルハンガイ県グチンウス村に到着した。人類愛善会の推進する世界連邦都市宣言自治体モンゴル第1号である。人口は460世帯で2,300人。
9月1日は小中学校の入学式。華やかな式の後にグチンウス村幼稚園から高校生、成人の村人まで221人の眼科検診を川崎医療福祉大学感覚矯正学科教授の高裕子先生と学生4人、日本視能訓練士協会顧問の守田好江先生が実施した。検診したのは幼児、小学生の167人と中高生・成人の54人。幼児、小学生では外斜視4人、内斜視3人、眼振(目が揺れ動く症状)1人、角膜の傷1人。6〜10歳の小学生で視力良好者は124人、視力不良者は16人、不明は1人。点眼をして屈折検査(眼鏡処方の準備)をしたのは15人で、そのうち13人に眼鏡処方箋を渡した。中高生は17人を検診し、眼鏡処方箋を渡したのは4人。 成人は37人を検診し、そのうち19人がレフラクトメータ(遠視、近視、乱視の度数)の検査をうけた。
同行していたAMDAシンガポール支部長のドンラウ先生と相談。シンガポール、日本そしてモンゴルのAMSA医学生を中核として眼科検診が役に立つ高血圧と糖尿病を加えた検診プログラムの実施を決めた。AMSA医学生国際交流プログラムでもある。
ちなみにAMSAは「Asian Medical Student Association」の略で1980年に設立された。最初は4カ国から始まり、現在は13カ国の医学生が参加、毎年の総会には400人の医学生が集っている。アジアで大学序列ナンバーワンとされるシンガポール大学の医学部には300人のAMSAメンバーがいる。
9月5日。モンゴル保健省内で「子どもたちの眼を強化するフォーラム」がビャンバスレン保健副大臣やエンフバット保健局長の参加のもとに開催された。主催は、AMDAとモンゴル眼科協会。下記の3点が結論となった。?子どもの眼の日を設定。学校検診の普及?検眼士制度の設立。?フォーラムの毎年開催。来年はモンゴル家庭医協会との共催予定――。
モンゴルでは眼科医の数は181人、家庭医の数は957人である。小中学生の検診事業の推進と普及には家庭医との協力体制は不可欠である。更に、モンゴル出身力士らにキャンペーンへの協力をしてもらう案も出ている。エンフバット保健局長は高知医科大学大学院生の時に、若き朝青龍が高知市にある明徳義塾高校に留学するきっかけを作ったとされている。
ナンギルラクチャー村長(43)と「Land of 果樹サジ」構想を決定した。サジの正式名はシーバックソーン。ユーラシア大陸の中北部に野生するグミ科の植物。ビタミンCが豊富でビタミンAやビタミンEを含む。ジャムや果実酒として食用されている。目的は沙漠緑化、村の職起こし、利益による人材育成である。
グチンウスとは30カ所の水の意味。ダンザワ村長は5年前から村内で試験的育成に成功。村から500メートルの位置を流れる川沿いを活用する構想である。2年目からはサジの苗に水を補給する必要がなくなる。3カ年計画で目標は4,000本。1本の苗は1,500円。ホームページを通して世界中に協力を呼びかける考えである。
AMDAは7年前からモンゴルでプロジェクトを継続して実施している。一番大切な信頼にもとづく人間関係の確立に手応えを感じている。モンゴルの子どもの眼を救う検診プロジェクトに「Land of果樹サジ」構想を加えて、プライマリケアプログラムとして包括すると共に、AMDAとAMSAの連携する国際協力プログラムとしても位置付けたい。
今後ともに皆様方のご理解とご支援をいただければ望外の喜びである。