グシ平和賞と平和構築 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

グシ平和賞と平和構築


グシ賞授賞式会場で佐野教授(中央)夫妻と

今月23日から3日間、フィリピンの首都マニラで、グシ平和賞授賞式記念行事が行われた。初日の午前にザ・ペニンシュラマニラにて「中国アジア太平洋医学フォーラム」が開かれ、岡山大大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科の佐野俊二教授が「夢への扉」の講演。午後には私が「Primary Health CareとHealth Promotionの違い」について講演した。

25日午後にはマニラパサイ市にあるフィリピン国際コンベンションセンターにて、佐野教授の第10回グシ平和賞授賞式典が執り行われた。ベトナムをはじめ世界の国々で心臓病の子どもたちを助けている最先端の技術と活動の紹介に会場から万雷の拍手が贈られた。アジアのみならず世界におけるその存在である。広島県立福山誠之館高校と岡山大学医学部の同窓として本当にうれしかった。

グシ平和賞は、太平洋戦争の時に日本軍に抵抗したフィリピンのゲリラの英雄だったグシ氏を記念して2002年に設立。フィリピンの人たちにとっての英雄は日本人にとっては敵だった。約50万人の日本兵が戦死。100万人以上のフィリピン人が命を落とした。グシ賞を日本人が受賞することには特別な意味がある。太平洋戦争の怨念(おんねん)を超えた世界平和への貢献である。「命を助け、命を救い、命を見放さない」。メッセージのある医療は最もわかりやすい。

00年からAMDAは魂と医療のプログラムを開始。日本と現地の宗教家が合同慰霊を行うことにより、太平洋戦争によって亡くなられたすべての人のご冥福を祈ると共に、戦渦に巻き込まれた人たちの関係者に医療を提供する活動である。04年の膨大な数の死者と被災者を出したスマトラ沖地震・津波被災者救援活動からは、災害被災者も対象とする。

今年は「GPSP(世界平和パートナーシップ)魂と医療のプログラム」として、スリランカ(黒住教から副教主の黒住宗道さん、池田光男さんが参加)、インドネシア(臨済宗の大屋昌基さん、 山内正樹さん、魚住和寛さん、鮎川直樹さんが参加)、モンゴル(日蓮宗の齋藤堯園さん、大本モンゴルセンターご一同が参加)で実施した。12月2日にはフィリピン(天理教から岡山国際救援委員会代表の平野恭助さん、向井正志さん、関根慶三さん、ジャイジューン チラパさんが参加)で予定している。13年の台風30号による死者と、70年前のレイテ戦で亡くなられた方の双方を慰霊。アジアの国々の血縁共同体社会では、死者の慰霊が共同体の求心力になる。

信頼とは何か。信頼の反対が裏切り。人を裏切る必要のない人には特性がある。自分の限られた貴重な時間、財産、そして営々と築いてきた人脈を提供できることである。

1998年にアフガニスタンからタリバンと北部同盟の代表者を岡山に招聘。目的は「アフガニスタンのすべての子どもたちがワクチンを接種するまで戦闘行為を停止する」ワクチン停戦。実現したのは、双方から信頼されていたパキスタンのハムダード財団創設者のハキム・モハメッド・サイド氏の仲介があったからである。何故にサイド氏が私を信頼してくれたのかは聞きそびれている。

サイド氏は98年に何者かによって暗殺された。カラチでは抗議のゼネストが10日間続いた。以来、毎年一度は必ずカラチ郊外のハムダード大学構内にあるサイド氏の霊廟(れいびょう)へのお参りを心掛けている。GPSP魂と医療のプログラムに、ご理解とご支援をいただければ幸いである。