台湾粉じん爆発熱傷被災者救援〜医療支援外交の幕開け – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

台湾粉じん爆発熱傷被災者救援〜医療支援外交の幕開け


2015年6月29日。東京にある台北駐日経済文化代表處の徐鼎昌、政務組次長からAMDAと日本医師会にメールを同時にいただいた。「6月の27日に発生した台北市のレジャー施設のイベント中に起きたカラーパウダー粉じん爆発事故で500名以上の熱傷患者が発生。人工皮膚が大量に不足。提供は可能か」と。熱傷治療は特別の専門性と医療チームが求められる。AMDAと日本医師会の共同プロジェクトとしての対応が決定。

7月2日午前10時。羽田空港から台北市松山空港に日本の熱傷治療の第一人者であり日本集中治療学会理事長である氏家良人川崎医科大学救急科教授と私の2名で到着。台湾政府外交部の林郁慧さん、台湾医師会、蔡明忠秘書長、台湾路竹会の劉群会長の出迎え。台湾医師会館に直行。蔡明忠秘書長や呉運東元医師会長との打ち合わせの後に記者会見。「2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災者に対する台湾からの多大な支援に少しでも恩返しができれば嬉しい」と相互扶助の想いを述べた。台北市内にある三軍総病院(陸、海、空軍)の熱傷患者治療の現場の視察訪問。氏家良人教授によれば日本の水準の熱傷治療が実施されていた。しかし、災害発生から2週間目の感染症発生の治療が困難な時期を迎えていた。今後数十名の死者が出るとの予想。病院医師団とのミーティングで、台北市北部の5ケ所の熱傷患者受け入れ医療機関で日本から「10名の医師と40名の看護師の派遣」があれば助かるとのコメントがあった。驚いたことに夕方のテレビでは日本からの医療チーム派遣決定と画面に流れていた。その時には、すでに中華人民共和国から医師団700名派遣申し込みと2名の事前調査チームが台湾に来る予定があることを知った。医療支援が人道支援外交そのものに状況は展開していた。事実、7月18日には、米国、John Hopkins大学から5名の熱傷支援医療チームが台湾に到着した。

事態が急速に進展。7月4日。台湾政府衛生福利部は台湾の医師の下に日本人医師の治療行為を今回に限るという条件で認めた。7月8日。蘇清泉台湾医師会長から医療チーム派遣要請を受けた日本医師会が日本熱傷学会、日本救急医学会、日本集中医療医学会に医療チーム派遣を要請。7月12日。熱傷治療専門家6名による第一次医療チームが台北市松山空港へ飛んだ。台湾側からの要請があれば第2次医療チームが派遣される。

7月30日には日本医師会と台湾医師会が災害相互支援協定を結ぶことになっている。日本医師会は更に各国医師会とこの協定を拡大し、国際災害支援医療チーム(International Japan MedicalTeam : iJMAT)を派遣する構想を持っている。日本医師会には根拠として東日本大震災被災者救援活動に103医療チーム、5千人を被災地に派遣し、被災地の医師会が受け皿となって活動した実績がある。AMDAも世界平和パートナーシップネットワーク活用で全面協力したい。相互扶助に基づいた「医療支援外交」へと発展することを期待したい。

最後に、横倉義武日本医師会長と石井正三常任理事の迅速な決断と日本熱傷学会、日本救急医学会そして日本集中治療医学会の関係者の方々の熱意ある支援と川崎誠治川崎学園理事長、園尾博司附属病院長、椎野泰和教授並びに荻野隆光教授には氏家良人教授と山田祥子医師派遣へのご配慮に心から感謝したい。