ポリオ撲滅運動inパキスタン〜「世界家庭健康教育基金」 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ポリオ撲滅運動inパキスタン〜「世界家庭健康教育基金」

2014年1月20日より5日間。神奈川県の茅ヶ崎中央ロータリクラブメンバーとパキスタンにてポリオ撲滅運動の情報収集。「談論風発にして有言実行」のロータリクラブである。訪問したのは、首都のイスラマバードでは日本大使館、首相付ポリオ撲滅担当官、NRSP本部(詳細は後述)。カラチでは総領事館、NRSPのタッタ地区におけるポリオ担当者、カラチロータリークラブ等である。ポリオ発生率は減少しているが北西部辺境州など特定地域で80%と特徴がある。都市住民30%で残りの70%が貧しい農民。彼らは識字率は低くテレビやラジオを持っていない。部族社会なので女性と子どもには女性しか接触できない。 彼らに対するポリオキャンペーンをどうするのか。NRSPが考え出したのが「女性健康普及員」のシステムである。教育を受けた女性健康普及員が各家庭を訪問してポリオワクチン接種の必要性を母親に教える。問題は彼女たちに対する必要な教育の提供と給料である。報酬は月に1万円と安いので辞めやすく、充分な教育を受けた女性普及員の確保は困難である。更に、ポリオ対策が米国のスパイ活動に利用されたと、ポリオ接種関係者が殺される事件が続いていることも困難を助長する。

「家庭健康教育プログラム3ケ年計画」を提案した。岡山県が誇る母と子の健康を守ってきた「愛育委員会」の考え方である。女性が、単に健康情報を与えられる立場から、健康情報を普及させる立場への昇華である。健康情報を持っている女性は、その情報を子ども、夫、両親そしてご近所の人たちに伝達する。具体的には、若い女性に1日3時間で5日間の研修。内容は応急処置、避妊、出産前後のケア、衛生そして予防接種(ポリオを含む)。参加者には5百円と終了後の試験に合格すれば更に5百円を提供。講師は認定試験に合格した女性健康普及員。報酬は15時間で1万円。1回の対象人数は10名。1ケ月で40名。1年間で480名、3ケ年で1440名。予算は1年間で100万円。3ケ年で300万円。対象地区は若い女性数が5千名ぐらい。3割の女性が健康情報を普及させる立場になれば量から質への転換が期待できる。成功した地域モデルはポリオを含む健康知識の普及を加速させる。

パートナーとなるNRSPは1992年にパキスタンで発足し22年目。職員数は全土に7千名。活動地域は15万ケ所。対象者は250万人。パキスタン政府から提供された1億円から現在は100億円の資産。コミュニティ組織を中核に農村の道路や水道の整備、健康や教育プログラム、収益事業を実施。2012年にはNRSP小規模融資銀行(商業銀行)を発足。自己資金52%に加えてIFC(世界金融公社:世界銀行グループ)や欧州の銀行、 ソーシャルファンドが出資して設立したという。

2015年秋には国際会議を東京の渋谷区青山にある国連大学で開催したい。「家庭健康教育プログラム」を国連に政策提案するためである。主催は国連経済社会理事会総合協議議資格のあるAMDA、NRSPそして国際ロータリークラブの三者。後援は日本政府とパキスタン政府。国際機関としては女性の社会的地位向上を目指す国連人口基金、や国連開発計画、ポリオ対策を主導するWHOとともに。会議の成果として「世界家庭健康教育基金」を創設したい。パキスタンと日本の智慧を、AMDAとNRSPの現場力に加えて国際ロータリークラブのネットワーク力が、世界に啓蒙普及させる。最高の喜びであり夢である。