忘れられない感謝のリレー – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

忘れられない感謝のリレー


2012年8月下旬から11月下旬まで、岡山県技術移転事業の一環でAMDAアフガニスタン支部の医師が岡山に滞在していました。
紛争が絶えない国から来たとは思えないほど穏やかで笑顔が素敵な研修医は、1ヶ月間の集中日本語トレーニングの後、残りの期間を岡山済生会総合病院で医療技術研修を受けました。

帰国日が迫った11月中旬、研修先から、「記念に中古の超音波機をアフガニスタンに持って帰ってもらえたらと思うのですが、まだ探している途中で帰国日に間に合うかどうか微妙です!」と連絡がありました。
ありがたいオファーで実現したらアフガニスタンのためにもいいなと思いつつも、しばらく経っても連絡は無く、半ば諦めていました。

彼が帰国する前日、中古の超音波検査機が見つかったという連絡があり、事務所で大喜びしたのも束の間。
直後に「検査機を航空機に乗せるには梱包する必要があるんですが、専用の段ボール箱が東京から岡山に送られてくるため、どうもフライト出発時間に間に合わないみたいです!」と再度断念せざるを得ない状況になりました。

どんでん返しはまだ続き、アフガニスタンに帰国する当日の朝、再度病院から電話があり、「専用の段ボール箱は赤帽がこれから東京から関空まで運んでくれることになりました。検査機取りに来られますか?」と。
さあ、緊急救援の始まりです!
私はすぐに車を飛ばし、超音波検査機を受け取りに行きました。
その間に事務所では、上司がトルコ航空に連絡し、航空機搭載の手続きをしてくれました。

岡山済生会総合病院では100キロ以上の重い検査機を、男性職員数人のお力も借りて何とか車に乗せました。

毛布でぐるぐる巻きにした超音波検査機を載せた車に乗り込んだのはAMDAの同僚二人(スリランカ人とマレーシア人)と私です。
梱包用段ボール箱を東京から運んできてくれる赤帽さんと関空で合流し、出発ロビーの隅で梱包を開始しました。

ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返し、何とか梱包出来たのですが…。
実は安心するのはまだ早かったのです。
梱包が完了した超音波検査機をトルコ航空のチェックインカウンタに持って行ったところ、経由地イスタンブールからカブールまでの小型航空機の貨物室に収納できないと言われたのです。

段ボール箱に予め釘打ちされた木枠(フォークリフトで搭載するため)の高さ10センチが余分だったのです!
万事休す!!
もう諦めるしか無いのか?



慌てふためく私達を哀れに思ったトルコ航空のスタッフが、どこからともなく木枠を外すための工具を持って来てくださり、大人5人がかりで何とか10センチの木枠を外すことに成功した時には、歓声が上がりました!
大汗をかいてヘロヘロになった私達を横目に、小声で「I thank you very much for everything! Good-bye!」と言い、アフガニスタン人医師はさっさと出国前のセキュリティ検査場へと消えていきました。

こうやって多くの方のご支援とご協力のおかげでカブールへと運ばれた超音波検査機は、到着後1ヶ月以上税関で足止めされたようですが、それも無事クリアし、日本アフガニスタン友好クリニックで患者の画像診断に使われているようです。

あの日の、疲労感と同時に得た達成感は、一生忘れることのない思い出です。

お世話になった岡山済生会総合病院の皆さん、段ボール箱を関空に送る決断をしてくださった医療機器メーカーさん、関空まで段ボールを届けてくださった赤帽さん、木枠を一緒に外してくださりカブールまで検査機を運んでくださったトルコ航空の皆さんに、改めて感謝申し上げます。

理事長補佐(災害担当)
小椋 順子