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2022年2月24日、ウクライナ人道危機が勃発し、自身と家族の身の安全のため、多くの人が慣れ親しんだふるさとを離れ、戦闘地域から離れた場所、または国外に避難しました。あれから3年、国外に避難した人の中にはウクライナに戻ってきた人もいます。しかし、戦線に近いウクライナ東部から比較的安全な西部に避難した人の多くは地元に帰れていません。一方、危険を承知の上で、地元を離れたくない、身体的な理由から残らざるを得ない、地元の人たちを支えたいなど、様々な理由から東部に残る決断をした人もいます。国連・国際移住機関(IOM)によると、今なお360万人以上の国内避難者が故郷を離れて暮らしています(2024年12月時点)。
AMDAはこの3年間、現地の協力団体と一緒に、ウクライナの隣国ハンガリーに逃れた避難者、ウクライナ西部に避難した方、東部に残った人、それぞれの状況に応じた支援を行ってきました。現在は、避難者に加えて、経済的に困窮している方、および医療機関・団体へ医療、食糧、物資を中心にウクライナ国内における支援を継続しています。また、元々、人口が少ない地方に、多くの人が避難してきたことで、医療などの公共サービス、住む場所、仕事など、多くのものが不足していることから、避難者を受け入れているコミュニティーにも支援を広げています。
危機勃発から3年が経ち、避難生活が長期化する中、継続的な支援の重要性が増しています。協力団体の医師から、2022年に始めた定期巡回診療によって、ウクライナ国内避難者との信頼関係が築けているからこそ、患者は表面的な身体の不調だけでなく、心の不調も訴えてくれる、と伺いました。同様に協力医療機関からは、元々身近にあった医療機関が診療を続けることで、地元の人の精神的な支えとなっている、と報告がありました。戦線から近いハルキウにある同協力医療機関は、人道危機後も閉鎖することなく住民の健康を守っています。並行して、昨年12月の聖ニコラスの日のお祝いには、太陽光による充電ができ、水の中でも遊べるソーラーランタンを子どもたちにプレゼントしました。おもちゃとして使えるので子どもたちは大喜びし、親からは停電時にも使えて、昼夜を問わず爆撃音が響く環境下に暮らす子どもたちがこのランタンのライトで落ち着く、と好評でした。
この話を聞いて、旧ユーゴスラビア紛争経験者であるAMDAボスニアヘルツェゴビナ支部メンバーが以前、「遊びたい時期に、まともに外でサッカーもできなかった。研修で東京を訪れた際、夜のネオンを見て安心した。」と言われていたことを思い出しました。明かりが灯せることは平和である証であり、人に安心感を与えます。一日も早くこの危機が終結し、ウクライナの人々が安心して暮らせる日常が戻ることを願っています。
AMDAはこれからも、長期化する戦闘の影響下で暮らすウクライナの人たちに寄り添い、現地協力団体とともに支援を継続していきます。ご支援、ご協力いただいている皆様に心より感謝申し上げます。
岩尾 智子
【2022年~2024年 現地協力団体リスト(順不同)】
ヴァルダ伝統文化協会 (ハンガリー)
カルパッチヤハウス (ハンガリー)
City of Goodness (ウクライナ)
セントミッシェル小児総合リハビリセンター (ウクライナ)
ダイナスティメディカルセンター (ウクライナ)
ハンガリー国立センメルワイス大学 (ハンガリー)
メドスポット (ハンガリー)
【2022年3月~2024年12月 受益者数】
ウクライナ国内外における 受益者数 のべ29,265人以上
【2022年3月~10月までの支援活動派遣者数】
医師5人、看護師6人、調整員3人 合計14人
【これまでの活動概要】
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