AMDAは2022年2月のウクライナ人道危機直後の3月から現在まで、現地団体の協力を得て、ウクライナ国内・国外避難者の方への支援を行ってきました。
2024年8月には、ルーマニア国境近くのウクライナ西部にある都市で活動する団体『City of Goodness』と新たに協力することになりました。同団体は緩和ケアやリハビリを必要とする子ども、DV、貧困などにより困難な生活を強いられている母子への支援を行ってきました。人道危機以降、自治体や協力団体と連携し、頻繁に爆撃を受けるウクライナ東部からの避難者を受け入れています。
11月12日、AMDAは『City of Goodness』の設立者であるマルタ・レフチェンコ氏と同団体資金調達マネージャー兼通訳であるO・K氏とリモート会議を持ちました。この機会に、お二人のCity of Goodnessとの繋がりについて伺いました。
マルタ氏は団体設立までの経緯について、「私は小さい頃から、助けを必要とする子どもたちや動物に手を貸していました。少数民族であるロマ族の、特に障がいを持つ子どもへの不当な扱いを理解できず、ゆで玉を作って届けたこともあります。その後、インド・コルカタでマザーテレサが行っていた活動に参加し、心臓疾患を患う子どもや貧困の中で暮らす子どもへの支援に携わりました。ソーシャルメディアが無い時代に、宗教や言葉も全く異なる異国の地ではじめたマザーテレサの活動は、彼女が亡くなった後も続いています。彼女にできるのであれば、母国に暮らす私にもできるはずだと確信し、団体を設立しました。コルカタで学んだ、『大きな愛』で人々に接するというマザーテレサの教えを、『City of Goodness』でも実践しています。」とお話されました。
K氏には、City of Goodnessとの出会いについてお話を伺いました。「現在3歳になる娘が生まれた後、前職の仕事と育児の両立が難しいことが分かり、前職を辞職。その後、助成金申請書の書き方を学ぶクラスを受講し、就活を行う中で出会ったのが、City of Goodnessでした。活動内容に魅力を感じ応募したものの、経験がなかったため不安だった私に、マルタ氏が大丈夫、何とかなるからと声をかけてくれました。それから、City of Goodnessのチームメンバーになり資金調達を担当しています。長期休みに、首都キーウ(K氏はキーウ在住)から700kmほど離れたCity of Goodnessを訪問し施設と施設に暮らす住民を尋ねました。そこで、いただいたご寄付が適切に使用されていることを実感しました。私の給与の10%をCity of Goodnessに寄付しています。娘を持つ母親なので、爆撃の中で暮らす母親の気持ちが分かります。」と話しました。
会議中、冬への備えについても話題になりました。11月中旬に初雪を観測し、厳しい冬を迎えたウクライナでは、政府よる停電に対する注意喚起がありました。『City of Goodness』の暖房設備、調理室、医療機器を使用するには電気が欠かせません。そして、自閉症の子どもたちは停電などによる暗闇をとても怖がります。停電に備えて、発電機とその燃料である灯油を備蓄しています。灯油の値段は高止まりしているため、提供する食事のメニューを変更するなど、燃料購入に充てる費用の捻出を工夫しています、と報告を受けました。
設立者であるマルタ氏はAMDAの支援者に向けて、「ご支援いただいている皆様に感謝申し上げます。寄り添ってくださる方がいることで、私たちは見捨てられていないという希望が湧きます。皆様からのご支援によって、将来に希望を持てなかった女性と子どもの人生が変わりました。ウクライナでは日々、女性や子どもが爆撃により亡くなっています。『City of Goodness』は人道危機の最中も、避難してきた母子が日常を取り戻せるよう、場所と食事を提供し、仕事探しの支援も行っています。信じてご支援くださる方がいる限り、支援を続けます。」と語りました。
AMDAはこれから1年間、継続的に同団体を支援していきます。8月から9月にかけて、AMDAからの支援金は、同団体の施設に暮らす親子の食糧購入と施設で使用する医薬品購入に充てられました。