プロジェクトオフィサー 神倉 裕太郎
活動地:フィリピン・サマール島北サマール州ヴィクトリア町
派遣期間:2019年12月10日~2019年12月17日
日本からの派遣者:調整員1人
災害概要:
12月2日に台風28号(現地名:ティソイ)がフィリピン中部に上陸し、47万世帯が被災し4人の死者がでるなど、地元の人々に大きな被害をもたらしました。(2019年12月24日のフィリピン政府の情報)
現地協力者*からの情報では、フィリピン中部・サマール島で大きな被害が出ており、物資が枯渇しているのと情報があり、AMDAは日本から調整員1人の派遣を決定しました。
*グロリア・メルカド氏…フィリピン開発安全女性委員会(WiNDS)の設立者。フィリピン海軍予備役であり、フィリピン大統領和平プロセス大統領顧問室事務局長を務める。
活動報告:
12月10日岡山を出発し、当日夜にフィリピンの首都マニラに到着しました。翌日合流した現地協力者のメルカド氏からの情報では、台風28号によりフィリピン中部の多くの地域に深刻な被害が出ているものの、支援は都市部に集中し、サマール島など都市部から離れた地域まで届いていないとの情報がありました。特に、同島北サマール州ヴィクトリア町など田舎の地域の情報はマニラまであまり入ってこず、もともと田舎の地域は台風にも貧弱であるため、メルカド氏からも同町を非常に心配する声がありました。AMDAはフィリピン海軍予備役及びフィリピン開発安全女性委員会(WiNDS)との合同チームとして、同町を支援することに決定しました。WiNDSより、マニラ在住のサマール島出身者を派遣いただけることになったほか、メルカド氏より同町町長に連絡を取り、地元の協力もいただけることになりました。
11日夜、サマール島出身の現地協力者と私はマニラを出発し、翌日朝に同島北サマール州の州都(カタルマン町)に到着しました。州都にて、支援予定のヴィクトリア町の町長夫人らと合流し、同町では入手困難な食料物資を調達しました。食料はフィリピンの食事に欠かせないお米と、調理せずに食べることのできる缶詰で、町長夫人に、被災者の方々に最も必要とされているものを選んでいただきました。
12日午後に同町に到着したAMDAチームは、被災した地域を訪問しました。同町の海沿いの地域では、高潮もあったそうで、海沿いの地域ではたくさんの家が全壊していました。その他、電柱が倒れたり、台風で屋根が飛んでしまうなど大きな被害を受けている家屋が町内全域で見られました。同町全域で停電、断水も続いていました。被災した方々は、親戚の家に避難し過ごしており、1日3食食べるのが難しくなったとの声も聞きかれました。
AMDAチームは、同町町長らと相談し、町内全16地域を対象とし、全壊の世帯を中心に食料物資を配布することを決定しました。町長から地域リーダーにお声掛けをいただき、地域リーダーの方々からもご協力をいただくこととなりました。地域リーダーに全壊の世帯を選別していただき現地協力者と私が被災者に直接物資を手渡しし、遠い地域で直接渡しに行けない世帯については地域リーダーから配布いただけることになりました。13、14日の2日間で、合計993世帯分の支援物資(米、缶詰など)を配布しました。AMDAチームが支援物資を手渡しする中で、「支援は州都など、都市部に集中しているため、ヴィクトリア町に物資支援を届けてくれるのはありがたい。」「子どもがたくさんいて、お米に困っていた。」という声も地元の方々から聞かれました。今回支援を行ったヴィクトリア町のように、都市部から離れた地域では、支援が届きにくいだけでなく、家屋やインフラなどへも、都心部より大きな被害を受けやすいものと思われますが、親戚や近所の家で被災者の方々を受け入れるなど、地域全体で協力し合っている状況がうかがえました。活動終了後、町長と握手を交わし、「ありがとう」と感謝の意をいただきました。
こういった目の届きにくい地域に住んでいる被災者の方々に、今回のような支援を届けることができたことは、意味のあったことだと考えています。台風28号の被災者の方々が一刻も早く元の生活に戻れることを願うとともに、今回の活動にご支援くださった皆様や、活動にご協力くださったフィリピンの現地協力者の方々、ヴィクトリア町の方々、AMDAの支援活動を応援いただいているすべての方に感謝いたします。