バングラデシュ北部寒波、被災者救援活動計画 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

バングラデシュ北部寒波、被災者救援活動計画

プロジェクトオフィサー 橋本 千明

2019年11月よりバングラデシュ北部で続く寒波に対し、AMDAはAMDAバングラデシュ支部と被災地に近い現地NGO・AFAD(アファッド)が実施する救援活動に物資支援、医療支援の面で協力を行うことを決定した。

バングラデシュには毎年決まった時期に洪水やサイクロンが襲ってきてはしばしば国土に計り知れない大破壊をもたらしている。昨年も、首都ダッカで2℃まで気温が下がり死者が出たという報告を聞いたが2年連続の寒さによる影響拡大の知らせに、近年頻発する自然災害に地球の気候変動による「寒波]という新しい種類の災害が加わっているように思う。

バングラデシュ北部のクリグラム(Kurigram)を拠点とするAFADは地域に根ざし障がい者、女性支援行っている。2012年に初めてAMDAと活動。昨年、2019年7月にはインドとの国境にあるブラマプトラ川の増水により一帯は大洪水に見舞われ、AFADのフィールドオフィスも浸水被害を受けた。職員や建物等被災しながらも地域住民への支援への意思が強く、行政関係者との橋渡しや活動地の調整に尽力頂いた。現在、半年が経過したが復興支援の計画をAMDAバングラデシュと準備している段階であったが追い打ちをかけるようにこの度の寒波の知らせであり、AMDAバングラデシュ支部を通じて支援要請があった。以下が支援までの経緯と支援計画である。2月上旬に活動予定。
 

《1月10日、現地からの報告》

バングラデシュ北部クリグラム(Kurigram)一帯に厳しい寒波が到来している。報道によれば、今後も中度の寒波が同地域一帯に継続的に広がる可能性がある。またバングラデシュ全域に曇り空と乾燥した空気が広がっており、浅い霧が夜から朝にかけて全土を覆っている。

厳しい寒波によって現地の人々は心身の不調に苦しんでおり、生き抜くために温かい衣類などが緊急で必要な状況である。今回の計画は現地のプロジェクト実施パートナーAFADと共同で策定しており、以下に述べるニーズはAFADが現地の状況を分析した上でまとめたものである。


【緊急支援に向けた活動計画の趣旨】

1.現地で寒波の被害にあった人々をサポートすること

2.病気を抱える人々のために、緊急医療支援キャンプを建てること

3.現地で貧困と失意の内にある人々に、温かい衣類などの物資支援を行うこと

4.地域の人々が緊急支援が必要な厳しい状態から、通常の生活に戻れるようサポートすること

【国内における現在の気象状況】

バングラデシュ保健家族福祉省保健サービス局(DGHS)は、この二日間で国民の5,527人が寒波による様々な症状に苦しんでいると報道した。そのうち777人が急性呼吸器感染症の治療を受け、1,926人が下痢、2,824人が眼炎、皮膚疾患、発熱などと診断された。また11月1日から1月4日の間に、51人が寒波による病気で亡くなったと報告があった。11月1日から1月5日の間には、327,010人が寒波による症状で入院したとDGHSは報告している。同じ期間、129,183人が下痢、52,167人が呼吸器感染症、145,660人が寒波による他の症状に苦しむこととなった。
 

【クリグラムにおける気候状況】

クリグラムのラジャルハットでは最低気温が摂氏6.5度を記録した日もあり、かなり気温は冷え込んでいる。今も現地において、寒波による症状に苦しむ患者の数は増加している。現段階では、毎分約4人(3.83人)がこれらの症状の治療で近くの病院を訪れている状況である。

現地メディアの報道によると、ラジャルハットでも最低気温摂氏9.8度を記録するなど、寒波により気温は下がり続けた。ジャトラプル・ユニオン議会のアユブ・アリ会長は、同地は砂州に位置する為、そのほとんどの地域で寒波はますます強まるだろうと話した。二つの期間に渡り、440枚の毛布を受け取った後、「私達の地域ではさらに6,000世帯が暮らしており、そのほとんどは恵まれない人々だ。これでは十分ではない。」と強調した。

一方、同地域の災害支援当局によれば、クリグラムに割り当てられた51,514枚の毛布は9ヵ所のウパジラ(バングラデシュ行政区分のひとつ、市レベルにあたる)に既に配布済みであるという。ラジャルハット気象局のスボル・チャンドラ担当官は今月の終わりに新たな寒波が到来する可能性を示唆した上で、来週は小雨が予想されると述べた。
 

【今回の寒波により起こっている健康被害】

下痢、肺炎、眼の炎症、皮膚疾患、発熱

クリグラムの基幹病院、クリグラムショドール病院は全床を今回の寒波による患者が埋め尽くしている。これら一連の患者の流入は、周辺地域において、冬の間続くであろう。屋外活動の制限を余儀なくされる中、これらの疾患に最も苦しんでいるのは児童と高齢者である。日雇い労働者や人力車の引手などは、寒波のせいで仕事に支障が出ている。同地の貧しい人たちは、寒波を凌ぐのに適した衣服をまとうことができず、小さな木片などを燃やして暖をとっている状況である。
 

【緊急に必要とされる支援】

・医薬品

・毛布、その他セーターやジャケットなどの暖かい衣服

(※1)AFADとは

Association for Alternative Development の略。
 

【日本よりチームを派遣したバングラデシュでの緊急支援活動(2012年以降)】

・バングラデシュ北部洪水 緊急支援活動(2019年7月)

・ロヒンギャ難民緊急医療支援活動(2017年10月~2018年11月)

・バングラデシュ・ビル倒壊 緊急支援活動(2013年4月)

・バングラデシュ洪水被害に対する緊急支援活動(2012年7月)