プロジェクトオフィサー 神倉 裕太郎
9月中旬にフィリピン・ルソン島北部に上陸した台風22号は、土砂災害・洪水など、多くの災害をもたらしました。また、相次いでモンスーンによる豪雨がセブ島を襲いました。この2ヵ所の災害により、150人以上の方が亡くなるなど甚大な被害が発生しました。この被害を受け、私は9月26日から8日間、フィリピンで支援活動を行いました。
AMDAでは、今、何が必要なのかを一番よく知っている地元の人たちの意向とやり方を尊重するローカルイニシアティブにしたがって支援活動を行っています。今回の活動でもフィリピン大統領府とAMDAとの協力協定の下、フィリピン空軍やフィリピン海軍、地元自治体などに協力をいただき、一緒に活動を行いました。
台風22号(現地名Ompong)被災者に対する復興支援活動
大規模地すべりが発生した
ベンゲット州イトゴン町
9月27日マニラにて、フィリピン大統領府の協力者である大統領府長官筆頭秘書官のグロリア・メルカド氏と現地の被害状況や支援ニーズについてミーティングを行い、同日午後に大統領府からの協力者と共に、ルソン島北部ベンゲット州に現地入りしました。ベンゲット州では、空路での物資輸送を担当していたフィリピン空軍と共に活動を行いました。台風22号でベンゲット州では複数の地域で土砂災害が発生しましたが、中でも最大の被害を受けたイトゴン町では発災後約1週間、土砂災害により被災地への陸路が塞がれるなど、支援の手が十分に足りていないとの情報があり、イトゴン町の被災者の方が避難されている計2ヵ所の避難所にて、お米やヌードル・缶フードなどの物資を141世帯に配布しました。イトゴン町での主な職業は鉱業であることから、多くの方が職を失ってしまったそうです。また私が現地入りした時点でも、行方不明者が未だたくさんいる状況であり、救助者の方々の食料も必要になってくるとのことでした。そのため現地では食べ物の確保が需要な課題となっており、AMDAの物資支援に関して避難所担当者や避難者の方々などから感謝の声をいただきました。また食料に加えて、避難所生活で風邪を引いたり持病が悪化したり体調を崩される方がおられる中、高価である医薬品が不足しているとの情報から、風邪薬や高血圧の薬などもイトゴン町保健所に支援を行いました。
パンガシナン州で被害状況の調査を行う
フィリピン大統領府協力者
同じく台風22号の被害を受けたという情報を受け、ルソン島北部にあるパンガシナン州では69世帯に屋根板の支援を行いました。この地域では、台風により家屋が崩れてしまうなどの被害がでていたが、地元の方々にとって経済的事情から家屋を修理することは困難で、何年も前から崩れたまま放置されている家屋などもありました。そういった方々は、親戚の家や近所の家に仮住みしていたり、中には屋根が崩れたまま住んでいる家庭もありました。支援したご家族から、「息子夫婦が家を修理できる」とのお礼の声もあり、同じく台風の多い日本からの支援で、被災された方々が元の生活に戻れるように手助けができていれば大変光栄に思います。
モンスーン豪雨による地すべり被災者に対する緊急支援活動
セブ島のフィリピン海軍基地にて、
支援物資の袋詰めを行う様子
大統領府からの新たな2人の協力者と共に、モンスーン豪雨による地すべりの被害を受けたセブ島ナガ市に9月30日に現地入りし、活動を行いました。こちらでもフィリピン大統領府との協力協定を下にフィリピン海軍の協力を得て活動を行いました。ナガ市長や市役所の担当者との協議の上、ナガ市内にある2ヵ所の避難所にて、計672世帯に飲料水やヌードル・缶フードなどの食料品の他、石鹸やトイレットペーパーなどの生活用品の物資支援を行いました。支援物資調達を行う際も、セブ島に基地を置くフィリピン海軍の協力で安く購入することができ、より多くの方に多くの支援を行うことができました。避難所では避難者の方々が何日もシャワーを浴びずに過ごされていたり、トイレの後にも手を洗う手段がないなど、衛生的にも今後問題が出てくる可能性があると私自身感じていました。そんな中、生きていくために必要な水や食料に加えて、石鹸などの支援を行ったことも喜んでいただけました。
今回の2つの災害では、それぞれ地元の協力者に協力をいただき、物資調達から物資配布まで、一緒に支援内容や支援先を模索しながら支援活動を行いました。地元の方々なので、地元の被害状況に詳しくとても活動がスムーズに進んだこともありますが、何より一人のフィリピン空軍の協力者が「地元の人を助けることができて嬉しい」と仰っていたことが印象に残っています。やはり「同じ地元の人たちの役に立ちたい」という気持ちは、地元の方たちが一番強く持っているものだと感じました。実際に、セブ島ナガ市での石鹸など生活物資支援を行ったことや、パンガシナン州で屋根を支援したいと意見を出してくださったのも地元の方々でした。AMDAの尊重しているローカルイニシアティブの考え方は、そうやって地元に沿った最適な支援ができることに加えて、「地元の被災者を助けたい」という地元の方々の思いを形にできるのだと改めて感じました。
この度被災された方々が一刻も早く元の生活に戻れるように心より祈っています。