ネパール地震復興支援報告11 ~2年の節目を迎えて~ – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ネパール地震復興支援報告11 ~2年の節目を迎えて~

2017年4月25日で震災から2年を迎えます。2年前のこの日、偶然カトマンズに滞在中で被災も経験しました。経験した事のない程の突然の揺れに恐怖のあまり立つこともできずに泣き崩れていたネパール人の姿は今も忘れる事が出来ません。あれから2年。障がい者支援も第二期をこの3月で一旦終えて、4月からは第三期として始動しております。

ちょうど2年が経つ現在。ネパール地震に対する障がい者支援のこれまでの活動を振り返ってみたいと思います。

現地の障がい者団体「CILカトマンズ」を主体として、ネパールではまだ確立されていなかった国産の車いすに対して、他の支援団体とともに車いす製造研修会にAMDAより支援を行いました。ネパールの障がい者にとっては、外国の援助により運ばれてくる車いすしか選択肢がなく故障したらそこで使えなくなる状況を、なんとか変えたかったので、将来にむけた大きな第一歩となりました。

研修会後も国産車いすの製造は継続され、障がい者支援(第一期)として現地製造車いすプロジェクトを開始。翌年2016年の1月に第一号が完成すると、各家庭を訪問し、お乗りになる方の身体状況や住環境などを確認のうえで製造した車いすの引き渡しを行いました。その他の生活福祉用具支援も同時に行いました。第一期では、主に緊急性の高い障がい当事者の方々を中心に寝たきり予防のための取り組みとして、訪問指導やカウンセリングと一緒に活動しました。ネパール政府も継続して毎年50台程度の費用負担をすることとなり製造の継続の見込みが期待できるまでになりました。

2016年7月からは第二期として活動は継続されました。第二期では、徐々に出身地に帰って仮設住宅で生活を始めた障がい当事者の方々が増えておりました。カトマンズ市内で部屋を借りて生活を始めた方々も多く、自立生活にむけた生活上のアドバイスやカウンセリングなどのニーズが増えました。物資による支援では、すでに寝たきりの生活となっている方々に対して、床ずれの処置を行う薬品や、ベッド周りの清潔を維持するための衛生管理用品、排泄のためのカテーテルや消毒液などを提供しました。

一方地方の障がい者の方々へのアウトリーチ活動としてモバイルキャンプも第一期に続き継続していました。雨期には地方への移動が困難となることから、雨期が終わってから、シンドゥパルチョーク、へトウダ、カブレパランチョーク、ドラカと訪問しました。

最近のモバイルキャンプでは、地方でのニーズに応じて新たな取り組みも始まっています。ネパールは近所付き合いが深いコミュニティーがあり、各家庭を訪問すると近所の方々が多く集まってきます。そこで近隣住民に対して「障害」とは何か。「障がい者」も同じ人間である事などの教育的な取り組みも並行して行う事が最近の特徴です。地方では特に「障害」を十分に理解されていない傾向があり、「病気」と混同して寝かせ続けている事が多いのです。「障がい者」に対する誤解から、等しく地域で生活する事が難しい事もあります。「障害」は社会側の問題である事を伝える必要があります。

4月からの第三期では、こうした地方で生活する障がい当事者宅の訪問活動において、近隣住民を対象とした教育的な取り組みを、パートナー団体であるCILカトマンズと計画しております。特に直接的に関わる可能性のある人々を対象に、「IDOBATA Meeting」として、講義形式のように準備し、参加者を募って行うのではなく、自然と集まる人々と井戸端会議のように話し合う場を展開します。それは講義のような特別な場を作ると専門職や「障害」に初めから興味のある人達だけが集まりますが、最も身近で関わる可能性のある人々こそ理解いただきたいからです。

震災より2年が経ちましたが、震災の前よりも、「障がい者も共に生活できる、より良い社会」になって欲しいと願っております。2017年4月から開始されておりますネパール地震復興障がい者支援(第三期)も、引き続きよろしくお願いいたします。

 

理学療法士
西嶋 望