ネパール地震復興支援 ~車いす製造研修支援活動報告5~ – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ネパール地震復興支援 ~車いす製造研修支援活動報告5~

山間部での訪問活動

ネパールの障がい者支援では、これまでにネパール現地製造車いす=14台、ポータブルトイレ=17台、松葉づえ=7組、サーモス(魔法瓶)=9個、湯たんぽ=7個、充電式懐中電灯=7個、充電式ヘッドライト=7個、白状杖=1本、ユーリン(尿)バッグ=20個、ベッドシーツ=100枚、枕カバー=100枚、毛布カバー=22枚、防水シーツ(日本から調達)=15枚、防水シーツ(ネパールで調達したテーブルクロス用シートでの代用)=40枚、簡易トイレ=40枚、間欠導尿カテーテル(50本入り)=5箱、以上を現地の障がい者団体CILカトマンズを介して、ネパールの障がい者の方々に支援してきました。

しかし現在の障がい者支援では、こうした物資をお渡しする事だけが目的ではありません。これらの物資を利用し自立した生活をしていただくことが目的です。そのために現地のニーズに応じた品目を抽出し支援しています。サーモス(魔法瓶)や湯たんぽ等は、電力不足のネパールで調整停電が行われる中、障がい者の方々に水分補給や暖をとって健康を維持していただくためです。充電式懐中電灯や充電式ヘッドライトも通電中に充電しておき停電中の移動にご不自由の無いようにとお渡ししております。特にトイレへの移動を減らし水分を控えて健康に影響しないようにと説明してお渡しします。ヘッドライトは両手での車いす移動や松葉づえ歩行を行う車いすの方には好評です。一方、ベッドシーツや枕カバー・毛布カバーなどは、震災後入居者が増えてベッド周りの環境整備が整わず、衛生環境面でお困りであった障がい者施設の入居者にお配りしました。

これらの内容をご覧いただきますと、トイレやベッド周辺での衛生面に対するものが多い事にお気づきになられると思います。障がい当事者には深刻な問題だからです。

選定には理学療法士である私が、現地の障がい当事者の皆さんに聞き取りを行い、本当に必要なものは何か?をCILカトマンズのメンバーと繰り返し協議し決定しています。障がい当事者のニーズを重要視する理由は、ネパールの障がい者の多くの方は、自宅で閉じこもりとなり、次第に寝たきりとなり易いリスクがあるからです。私のネパール人の奥さんも脊髄損傷で下半身麻痺の車いすユーザーですが、受傷後彼女も自宅で何年も寝たきりとなり、床ずれも重症化し、このまま死ぬ事も覚悟した経験があります。これは決してネパールでは稀なケースではありません。CILカトマンズのスタッフの皆さんもその事はよく理解されており、この震災後も私の奥さんと同じように寝たきりとなる方が増える事を懸念しています。

最近のネパールの医学事情はかなり進歩してきております。しかし障がい者となった方々の生活に目が行き届かないケースが多くみられます。ネパールには福祉制度やサービス機関、福祉用具も充実していない事。障がい当事者とご家族には経済的にも困窮している事も背景にあります。現地の医療機関だけで解決できる課題でもありません。まだこの国には外国の支援に頼らざる得ないところがあります。

私たちは、そうした病院から退院したが自宅でお困りの方を対象に活動を続けております。写真は、ヌワコットという山間部にお戻りになって生活を始めた、震災により脊髄損傷となった方(中央の黒Tシャツの方)の訪問活動です。寝たきり・閉じこもり予防目的で現地製造した車いすを提供しました。私たちは「支援した物や人の数より、関わった一人一人に丁寧に寄り添った活動をすること」を心がけて行っております。必要なものを必要な人へ。対象となる方が自立生活する事が目的です。時には訪問先で物資をお渡しせず、自立生活に向けたカウンセリングやリハビリ指導だけで終わる事もあります。そのためCILカトマンズのピアカウンセラー(同じ障がい者でカウンセリングを行うこと)と理学療法士の私とで各家庭を訪問しております。