2月14日、AMDA理事、佐藤拓史医師、ネパール、AMDAダマック病院 内視鏡に関するZOOMミーティングを実施。
首都カトマンズから700Km離れた東部にあるダマック市にAMDAダマック病院があります。ブータン難民支援のための二次医療センターとして1992年に開設した総合病院で、年間の救急外来を含む外来患者数は、延べ7万8千人以上にのぼります。AMDAは、2016年からダマック病院の内視鏡技術向上を目指して日本、ネパール両国での研修事業を行っています。
岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業の一環として、2016年には、ダマック病院で内視鏡を担当するディワス医師が、岡山済生会総合病院で3か月間、内視鏡の技術研修を受けました。その後、2018年、2019年には、AMDA理事である佐藤拓史医師がAMDAダマック病院に出向き上部消化管内視鏡検査の技術的指導、病変の診断などについて指導を行っています。昨年は新型コロナ感染拡大の影響を受け、佐藤医師のネパールでの指導は実施できませんでした。本年度は、未だ渡航の見込みがたたないため、2月14日に、医院長のプラカッス医師、前医院長のナビン医師、ディワス医師、AMDA本部から理事、佐藤拓史医師、ネパール担当、アルチャナ ジョシ、難波妙が参加してZOOMミーティングを行いました。
まず、ディワス医師より、ダマック病院の現状についての情報共有と問題点についての報告がありました。2020年には、新型コロナウイルスの影響を受けて、ダマック病院全体で感染拡大防止策がとられたため、年間の内視鏡施行数は317件にとどまりました。2021年に入ってこれまで上部消化管内視鏡検査を80例行い、胃炎、食道炎、胃潰瘍、食道静脈瘤、十二指腸潰瘍、癌などを診断。そのうち5件については、ディワス医師自身が食道静脈瘤破裂にともなう出血に対し結紮術を行ったこと、加えて十二指腸狭窄、胃がんについては、常時、佐藤医師のアドバイスをうけて診断にあたっていたことも報告しました。またこれまで発見した胃がんは5件すべて高齢者の進行癌でした。出血などの緊急時に対応できる医療器材、スタッフの技術などの環境が未だ整っていないこと、加えて地域の人たちの内視鏡に対しての知識や理解がまだまだ得られていないことなどの問題点も共有されました。
佐藤医師は、出血時の止血術など多くの質問に答えたあと、内視鏡診断についてのレクチャーを行いました。佐藤医師にディワス医師より診断を求めて送られてくる画像について、撮影方向や接近度などの問題点を指摘し、より明確に撮影するための撮影方向と診断のポイントなどを細かく指導しました。また、日本で内視鏡観察の際に病変を鮮明にするため用いるインジゴカルミンやルゴールがネパールでは手に入らないため、次回は日本から持参することも約束しました。
また2019年11月に台湾保健省から寄贈された大腸カメラについては、2020年2月に佐藤医師が初期研修から指導予定でしたが、新型コロナの影響のため実施できなかったため、今後いかに大腸カメラを実践するかについて話し合いました。ナビン前ダマック病院医院長からは、できるだけ早くダマック病院でも大腸カメラを実施できる体制にしたいとの希望が伝えられました。
佐藤医師からは大腸カメラのリスクを十分に理解する必要性が強調されました。
ネパール側からは、佐藤先生の実践的な技術研修が一日も早く実現し、ダマック住民のために多岐にわたる内視鏡技術の向上を願っているとの期待が寄せられました。
佐藤医師は、ネパールの地元医師が内視鏡診断において大きな期待と責任をもっていることに対して、早期がんの発見に努め、安全性と技術向上のために一日も早くダマックでの研修を実現させたいと、今回のZOOMミーティングを締めくくりました。