インド担当 アルチャナ ジョシ
AMDAは2009年からインド、ビハール州ブッダガヤにAMDA ピースクリニック(APC)を開院し、2014年から母子保健事業を実施しています。ビハール州はインドの中でも最も貧しい州として知られており、2023年1月からブッダガヤ周辺に住む貧しい人々を対象に週に一回の食事支援を行っております。AMDA の関連団体である日本インド友好医療センタートラストがある土地で、季節ごとに豆(インドで一般的に使われているレンズ豆)、夏野菜、冬野菜など栽培しブッダガヤで実施している食事支援の料理に使用したり、AMDAピースクリニックの患者やその家族、周辺の村に住む方々に配ったりしています。
ビハール州では2023年は例年より遅めの8月に雨季が始まり、水位も下がってしまったため、それまで使用していた家庭用のモーターで水あげることは不可能となり、農作業はできなくなりました。株式会社新通故樋口会長の御令室樋口美恵様より、株式会社新通エスピー青山様を通じて「インドの恵まれていない人に水を届けたい」というありがたいお申し出をいただき、AMDAの活動地で井戸を建設しました。
昨年は、雨季が9月まで続き、村の道が舗装していないため、泥だらけの道では工事用車両が入れないため、工事は10月中旬から開始することになりました。工事中に23メートルのところと33メートルのところで大きいな石にぶつかったため、業者が大きな石割機を導入し、36メートルから40メートルのところで水源が見つかりました。今回は46メートルまで掘り、きれいな水が出るようになりました。また、インドは停電が多く、モーターを使って水を引き上げられない場合に備えて、ハンドポンプも設置し、停電の間でさえも水を使えるようにしました。その後、雨や盗難などから守るため、井戸用の部屋を建設し、工事を完了しました。
新しい井戸水は基本的には敷地内の農作物を育てるために使用していますが、必要に応じて村人も水を使用できるように水道管を設置しいつでも対応できるようにしました。
また、11月はまだ工事中でしたが、水が豊富にありましたので、玉ねぎ、ニンニク、ほうれん草、ニンジン、グリンピース、青菜、小麦、ひよこ豆、カボチャの種まきを行いました。12月はじゃがいも、トマト、ナス、唐辛子の苗の植え付けを行いました。また、グリンピースなど豆類、大根も成長しています。きれいな水が随分に行き渡り野菜がどんどん成長し、1月は300本以上の大根が収穫でき、そのうち100本以上は毎週火曜日に実施している食事支援の野菜カレーに使用し、残りの200本の大根はダンプールの村人やアムダピースクリニックの患者さんに配ったりしました。また、2月からインゲン豆、カリフラワー、ほうれん草、コリアンダー、青菜、トマト、キャベツなどもたくさん収穫でき、食事支援に使用したり、村人へ配布したりして活動を行っています。
ビハール州は、今後はどんどん暑くなっていきますが、井戸建設が完了してから水が豊富に使えるため、夏の野菜の苗づくりに加えて、フェヌグリーク、ブラッククミンの苗も育てて行く予定です。農業プロジェクトの管理者は農業のスタッフと農業専門家に相談しながら良い野菜ができるように努めており、今後も野菜、小麦、ダール豆、香辛料を育てたり、昨年水不足のため断念したお米作りを今年は行い、食事支援に活用したり、周りの困っている村人に配ったりしていく予定です。また、将来は売り物になるようなものを作って、利益が出れば活動資金に充てていきたいと話をしています。農業のスタッフは「ダンプールは、土地はたくさんあり、たくさんの農作物を作れますが、昨年は乾季に水がなく、雨季を頼りに農業をしていたため、良いものがあまり作ることが出ませんでした。新しい井戸が完成し、今年は水が豊富にあるので、専門家の知識を借りてどんどん良い農作物を作っていきたいと思います」と喜びを共有してくれました。
基本的にインドの村人はシャイな方が多いです。しかし、野菜をいただくと満面の笑みになり、「感謝しています」というお声が多かったです。また、患者さんは「今野菜の値段があがっているから有難い」と嬉しそうに話をしてくれました。そして、「市場のものは農薬が沢山使用されているから安心した新鮮な野菜が大変嬉しい」という感想もありました。