AMDAネパール子ども病院10周年記念式典・アスンプ 開催 – AMDA(アムダ)
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特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

AMDAネパール子ども病院10周年記念式典・アスンプ 開催

 ネパール連邦民主共和国ブトワール市にある母と子の病院(AMDAネパール子ども病院)は、阪神大震災被災者の方々の思いと毎日新聞社のご協力を中心にしたご支援により、1998年に開院しました。このたび10周年を迎え、記念式典とAMDA医療と魂のプログラム(AMDA Soul and Medicine Programme, ASMP/アスンプ)慰霊祭を開催しました。

当時、ネパールの人口2,000万人に対し、小児科医は約70人でした。小児病院は首都のカトマンズにあるだけで、不衛生な自宅出産のために妊娠中毒などの危険な状態を早期発見できないまま出産し、大量出血で死亡する場合も多くありました。乳幼児死亡率は日本の約25倍、妊産婦死亡率は約60倍でした。ネパール政府は90年代から、乳幼児死亡の減少を最優先課題に掲げ、予防接種などの対策を実施。2006年の乳幼児死亡率は90年に比べ半減しました。しかし、医師などの医療従事者の介助を受ける分娩は19%で、妊産婦死亡率は改善していません。一方、AMDAネパール子ども病院の10年間の外来患者は延べ40万人、入院患者も延べ4万人となり、昨年9月には2万人目の赤ちゃんが誕生しました。

現在、AMDAネパール子ども病院では、ベッド不足や医療環境改善を目指し、周産期病棟を増設中です。引き続き、ご支援をお願い申し上げます。

【AMDAネパール子ども病院】
Siddhartha Children’s and Woman’s Hospital
シッダルタ子どもと女性のための病院
シッダルタ:お釈迦様のご幼名
遠くから伝来した仏教にちなみ、日本とネパールの架け橋にとの想いを込めて命名
ブトワール市:首都カトマンズから西に約200キロ
インドとの国境近く、交通の要所
近くにルンビニ(ブッダ生誕地)がある
世界的な建築家安藤忠雄氏がボランティアで設計

1998年11月2日 開院。外来部門がスタート
1999年 入院・救急受け入れ、婦人科開始
篠原記念小児病棟、新病棟、外来棟他新設を経て、
2009年1月現在 ベッド数:109床 スタッフ:計142人(医師8人・看護師17人 他)
2007年7月〜2008年7月
外来患者数:37,191  急患患者数:5,460 分娩数:2,638(内、帝王切開961)
婦人科手術件数:1,417  小児科手術数:492
入院:計6,511(小児科3,354 産婦人科2,645 ICU512)

【スケジュール】
1月15日 ラム・バラン・ヤダブ大統領 表敬
AMDAネパール支部によるレセプション
*来賓:在ネパール日本大使館 水野達夫特命全権大使
1月16日 アスンプ  ブッダ生誕地ルンビニ
1月17日 アスンプ  ブトワール市
AMDAネパール子ども病院10周年記念式典   ブトワール市

【日本からの参加者】 敬称略
東山泰清(高野山蓮花院 権大僧正 伝燈大阿闍梨)/鈴記好博(医師 絵本「ありがとぅね」作者)
押田芳雅/篠原浪枝/小林眞也子/桶川勝記
古閑次夫(神戸須磨ロータリークラブ会長)/古閑淑子
ダ・カーポ(榊原政敏/榊原広子/榊原麻里子/金田良美)
AMDA兵庫県支部
江口貴博/小倉健一郎/桂木聡子/神徳規子/須藤牧衛/須藤とし/中田由紀/
中山正紀/中山公江/中山正祥/中山幸子/藤本亜紀子/藤本瑞穂/
菅波茂(AMDAグループ代表)/丸山美江((医)アスカ会 看護介護部長)

【現地参加】AMDA社会開発機構 小林麻衣子

 


AMDAネパール子ども病院

10周年を祝うイルミネーションでライトアップされた

水野達夫特命全権大使、小林麻衣子AMDA社会開発機構、菅波茂AMDAグループ代表、江口貴博AMDA兵庫県支部長(左から)

病院で最初に生まれたシッダールタ君も飛び入り参加したステージ


ダ・カーポの皆さんによる演奏


 小倉健一郎医師(右)とシッダールタ君(左)

 

ネパールで迎えた14年目の阪神淡路大震災の日
AMDA兵庫県支部支部長 医師 江口貴博

阪神淡路大震災から14年になる1月中旬に、AMDA兵庫県支部メンバーを中心に総勢27人で、AMDAネパール子ども病院を訪問してきました。

本来10周年のお祝いは昨年11月2日に行うのが普通ですが、今回この1月17日に行ったのには大きな理由がありました。それはこの病院が、阪神淡路大震災の時にいただいた支援に対するお礼として、被災地からの寄付が集まってできた病院だからです。私たちは、その10年の節目にあたって、震災の日の1月17日に、日本人とネパール人とで合同の慰霊祭を行うことを考えました。

阪神淡路大震災では6,434人もの方が亡くなられ、震災から14年が経っても、大切な人を失った人々の心はまだ癒えていません。しかしながら、そのお礼で出来たこの病院では、40万人もの女性やこどもたちの病気が癒され、そして2万人もの赤ちゃんが誕生しています。その現地で震災物故者の方々の慰霊を行うことで、少しでも心が癒されるのではないかと考えたのです。そしてまたネパール子ども病院でも、献身的な治療にも関わらず、治療の甲斐なく亡くなった女性たち、子どもたちがいます。そういう女性や子どもたちの慰霊もいっしょに行うことで、お互いに大切な人を思いやる気持ちを共有したいと考えました。

今回の慰霊の訪問には、徳川家の菩提寺である高野山蓮花院の東山泰清御住職がボランティアで参加して下さいました。そして、仏教の聖地であるルンビニのアショカ王の塔の前で、日本人一行により、震災物故者およびネパール人物故者に対して、みんなで祈りを捧げました。この地に発祥した仏教が遠く日本に伝播し、AMDAネパール子ども病院が懸け橋となって、遠い日本からこうして慰霊に訪ねることが出来たことを思うと、とても感慨深いものがありました。

そうして1月17日、朝からアスンプが始まりました。まず、江口から今回の合同慰霊祭の趣旨を説明し、そして宗教の壁や文化的な壁を乗り越えて、一緒に祈りましょうと呼び掛けました。慰霊祭には、ネパールから、仏教、キリスト教、イスラム教そしてヒンズー教と、さまざまな宗教の司祭が顔を揃えて祈りを捧げ、また東山泰清御住職による法要も滞りなく執り行われました。その光景は、宗派や国籍など関係なく、お互いを思いやる心と心が通じ合ったような、そんな感動的なひと時でした。

感動覚めやらぬまま、午後のAMDAネパール子ども病院10周年記念式典が始まりました。式典では、ネパールの保健大臣やブトワール市長など、多くの方々からお祝いの言葉をいただきました。そして、新しく建てられた外来棟のオープニングセレモニーでは菅波代表によるテープカットが行われ、また、今後建設予定の周産期病棟の地鎮祭も行われました。私たち日本人からのカルチャープログラムでは、10周年を記念して作成した絵本「ありがとぅね」の拡大版を見せながらストーリーをネパール語で朗読し、その内容を披露したところ、会場は明るい笑顔に包まれました。

また今回、ボランティアでご同行頂いたファミリーシンガーソングライター、ダ・カーポの皆さんによる演奏も会場を盛り上げました。ダ・カーポさんといえば、いつもチャリティーコンサートで寄付を呼びかけ、またこのたび、AMDAネパール子ども病院のテーマ曲「命の花」を作って下さり、心から支援をして下さっている方です。会場のみんなは、その美しい歌声と、ギター、フルートの音色に魅了されました。そして、「命の花」を会場全員でネパール語により合唱、ステージには、この病院で最初に生まれた子であるシッダールタ君も飛び入り参加し、その盛り上がりは最高潮に達しました。

私たちAMDA兵庫県支部のメンバーは、震災で亡くなった方々や支援して下さった方々の思いを胸に刻みながら、今後もAMDAネパール子ども病院を支援し続けます。これからもご支援のほどどうぞよろしくお願いいたします。

絵本「ありがとぅね」作者の鈴記好博医師(右端)

絵本「ありがとぅね」の拡大版を見せながらストーリーをネパール語で朗読


仏教の聖地ルンビニにあるアショカ王の塔の前でアスンプ


AMDAネパール子ども病院でアスンプ(手前は、東山泰清権大僧正) 

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