インドネシア マリノ農場からの報告  〜観察〜 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

インドネシア マリノ農場からの報告  〜観察〜

AMDAでは2011年からアジアへの有機農業技術移転を目的としたAMDAフードプログラムに取り組んでいます。
2013年度に開所したAMDAフードプログラム マリノ農場へ技術指導に訪れているスタッフから新しいレポートが届いたので以下に紹介します。[pagebreak]

観察すること


最近のマリノは雨がだんだん少なくなり乾季らしい天気になってきました。稲の収穫まではまだ時間がありそうなので大豆やトマトの世話をしたり稲の観察をして過ごしています。観察??と思われるかもしれませんがお米づくりにとって観察はとても大切なことと言われています。
これがAMDAのオーガニック田んぼです。標高1000m以上の高地の棚田15枚。
現地で棚田はセリブペタ(千枚地図)などと表現されることがありますがよく言い表したものだと感心します。
区画ごとに肥料の種類や量を変えています。違いが一目瞭然ですね。一番下の緑の濃い区画は比較対象のために化学肥料を入れています。緑は濃いですが風が吹くとひょろひょろとビニールテープのようになびいて頼りない感じです。一方、有機栽培の他の区は色は薄いですがコシが強いというのか風に負けずピンとしていて張りがあります。不思議なものでこのような違いは田んぼの中に入ってしまうとわかりにくくなってしまい遠くから眺めたほうがよくわかります。
反対に中に入って近くから見ないとわからないこともあります。

なんだか株元が黄色くなっています。近づいてみると稲の茎が折られています。

地元農家によると田んぼに水を入れすぎるとネズミがやってきて稲をかじり倒しているのだとのこと。

 

地元農家によると田んぼに水を入れすぎるとネズミがやってきて稲をかじり倒しているのだとのこと。現地スタッフのジャマルの表情も険しいです。

でもちょっと疑問がわいてきます。普通に考えれば田んぼに水が無いほうが入りやすいのでは?ネズミって水が好きで泳ぐのが得意なのでしょうか?

真偽のほどは別にしてマリノのほとんどの田んぼは今、ネズミの侵入を防ぐため水が抜かれています。AMDAの田んぼの土も乾いてヒビが入り始めていました。

ふと思いたって稲の茎を刈り取り縦に割ってみます。

中にはもう稲穂の赤ちゃんである幼穂(ようすい)が入っていました。人間で言えば妊娠にあたるこの時期は穂ばらみ期と呼ばれています。穂ばらみ期は稲が水と栄養を最も必要とする時期です。スタッフと相談した結果、田んぼに水を入れてみることにしました。

ところが水を入れようと水路を見ると水の量がとても少なく十分な量の水を田んぼに入れられそうにありません。

水源地にチェックに行ってみると先日の大雨のせいか落石や竹の皮、人が捨てたごみなどで水路が埋まっていました。詰まった箇所の掃除にほぼ1日かけてようやくひび割れた田んぼに水を入れることができました。


 

 

お次は害虫です。これは現地でナンゴと呼ばれている稲の害虫です。緑と茶色の色が保護色となって近づいて見ないとどこにいるかわかりません。まだ若い稲穂を食い荒らすので農家にとって頭痛の種です。

日中はすばしこくて近づくとすぐに飛んで行ってしまいなかなか写真が撮れませんでした。しかし夜田んぼに行って観察してみたところ、ナンゴは夜は飛べないということがわかりました。夜虫取り網で取ったら一網打尽に出来そうです。

 

言葉を話すことはない稲ですが、日々観察することで言葉ではない稲の言葉が聴けるようになれたらと思いながらスタッフと共に明日も田んぼへ向かいます。