インドネシア マリノ農場からの報告   〜水と農業〜 – AMDA(アムダ)
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インドネシア マリノ農場からの報告   〜水と農業〜

AMDAでは2011年からアジアへの有機農業技術移転を目的としたAMDAフードプログラムに取り組んでいます。
2013年度に開所したAMDAフードプログラム マリノ農場へ技術指導に訪れているスタッフから新しいレポートが届いたので以下に紹介します。[pagebreak]

 

水と農業


乾季のマリノは最近カラカラです。湧き水の水も細くなり始め、飲み水や生活水までなくなってしまわないかと私はヒヤヒヤしています。
我田引水という言葉がありますが、このところ夜になると水路の下流の人が上流の人を訪ねては今晩私の田に水を入れたいので一晩お宅の田んぼの水門を閉めてくれとお願いして回る光景が良く見られます。乾季の水田地帯では水をめぐる抗争も珍しいことでは無いそうです。

AMDAの田んぼもカラカラになってしまいそうだったので下流の人に許可を得て1日水門を閉めさせてもらうことにしました。

 

水路の分岐点に石を置いて水流をコントロールします。左側が下流へ流れる水路。

右がAMDAの田んぼに流れこむ水路です。

スタッフのジャマルも夜中12時ころまで水門の見張りをしています。

人間なので時には約束を守るのが難しい人がいるかもしれないからです。

マリノは小さな村なのでこのような直接交渉と一応の見張りでどうにか水不足のときの均衡を保っています。

しかし、ビリビリという大きなダムのあるマリノの下流域では田んぼも広くたくさんの農家がお米を作っています。人が多くなるほどその利害関係をまとめていくのは大変です。

下流域ではマンドルジェネ(現地語で水の番人の意味の自治体の役職)と呼ばれる人たちが水門の管理をしています。彼らが管理する水をめぐって下流地域では水面下の戦いが行われています。

この写真は私が下流域の村を通ったときのものです。自分の田んぼがある地域に水を送りこむためマンドルジェネが水門の前に竹とココナッツの葉で簡単な堰を作ったようです。そこに上流から流れてきたゴミがつまって小さなダムが出来ています。インドネシアでは水路にゴミを捨ててしまう人も多くいるのですが、水路に捨てられたゴミはこのようなマンドルジェネの強い見方になります。この程度ならまだ良いですが、もっと悪い人がマンドルジェネになったら大変です。過去には私的な目的のために、水を右に流すか左に流すかを農家にちらつかせて政治的かけひきをした人もいたと聞きます。
多くの地域が水不足のせいで凶作になればみんなが困るのですから、そのようなかけひきはやめてほしいと切に願わずにはいられません。

 

少し話は変わってこれは私が住んでいる家の水道です。
マリノではこのようなホースを湧水源に突っ込み、湧きだす水の圧力を利用して各家庭に水を送り生活用水にしています。私の家も含めてこのホース1本を3軒の家庭が共同使用しています。マリノの人たちはこの水を水桶に汲み置き、おりを沈殿させてから上澄みを沸かして飲料水にしています。正式な水道ではありませんので水質検査はありません。

マリノでは傾斜地を利用してお米のほかにトマトもたくさん作っています。トマトは特に農薬をたくさん使います。水源地であるマリノの水は下流域に流れていくので水質汚染が心配です。

 

全ての農家が農薬を全く使用しないのは難しいかもしれませんが、水の安全を守るためにも少しでも農薬使用は減らしていきたいものです。

AMDAの有機稲作がそのお手本になってくれたらと願いながら、これからも有機農法についてマリノの人たちに伝えていきたいと思います。

インドネシア人の食生活に欠かせないサンバル(SAMBAL)という調味料があります。
日本人にとっての醤油のようなものでとても大切な調味料です。

作り方は、

唐辛子とにんにく、トマト、タマネギを油でいためた後、チョベッ(COBEK)と呼ばれる小さな石臼で炒めた具をつぶし、塩やチキンスープの素、砂糖で味を調えて出来上がりです。味は激辛のサルサソース、チリソース、タバスコが近いでしょうか。これさえあればインドネシア人はおかず無しでもご飯を食べることが出来るというほどです。日本人がお金の無いときに醤油でご飯を食べるのと近いかもしれません。サンバルを作るのに好んで使われるトマトの品種は、トマッ・ケリティン(シワシワのトマト)と呼ばれる写真の品種です。皮が薄くて水分が多いので潰れやすく、サンバルを作るのにぴったりの品種です。トマッ・ケリティンはサンバル作りに欠かせないため大都市では大量に消費されます。実はマリノはこのトマトの大産地です。トマトは今が旬の季節です。真夜中でもペダガンと呼ばれる仲買人がトラックでトマトを買いにやってきます。マリノ産のトマトは近郊の大都市であるマカッサルに運ばれ、人口120万の都市の食生活を支えています。

(トマッ・ケリティンとペダガンと呼ばれる仲買人のトラック)