東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科 ネパール訪問〜シッダールタ母子専門病院訪問報告書 – AMDA(アムダ)
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東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科 ネパール訪問〜シッダールタ母子専門病院訪問報告書

2016年3月9日に東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科の教授および学生たちがネパールアムダ病院ーシッダールタ母子専門病院訪問しました。その時のご報告を紹介します。
 

Binod先生と一緒に

東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科 佐藤 恵美

私にとって、初めて訪れたネパールで最初に見学させていただいた病院がSCWHでした。SCWHは首都のカトマンズとは違い、道路のいたるところに牛がいるのどかなブトワルの町に存在し、多くの子供たちや母親が訪れていました。

始めにネパールの妊婦検診や看護師の勤務形態についてのお話を伺いました。政府は家での出産ゼロを推奨しているけれども、実際は10%[pagebreak]を超えていること。15-40%は帝王切開での出産であること。また、看護師は日本と比べ、病床数に対する看護師の数が圧倒的に少なく仕事が多忙で、給料の面からも、外国で仕事をする看護師が増えていること。改善されているとはいえ、まだ多くの問題が残っているようでした。

病院では、検査室、病棟、分娩室、NICU、手術室などを見学させていただきました。検査室では、technician 2人、technologist 1人の計3人の専門技師が存在し、1日平均200件の検体を検査しているとのことでした。血液検査、生化学検査、抗体検査、一般検査、細菌検査を行っており、血液検査は1時間、生化学検査は測定項目によりますが1-2時間を測定に要し、平均3時間程度で臨床に結果が報告されるようです。電気の供給が不安定なネパールでは、電子カルテが普及しておらず、検査オーダー、検査結果が全て手書きでやり取りされる環境で、この報告スピードはかなり速いのではないかと思いました。微生物検査では培養、グラム染色などが行われており、検出菌としてはサルモネラ、ビブリオ、シゲラが多いとのことでした。また、寄生虫も多いようで、ネパールの衛生状態がまだまだ悪い状態であることを垣間見ることが出来ました。

看護師長さんからお話を伺う

採血室

手術室はNICUとオペ後の病棟(post operate room)の中心に位置し、年間800もの外科的手術が行われ、帝王切開や子宮切除などの処置がなされていました。病院全体が明るく、清潔に保たれており、特にNICUはかなり設備が充実しているように見受けられました。また、NICU前で面会時間を待つ多くの家族、手術室前で手術患者の無事を祈る家族の様子から、この病院が必要とされていることも実感できました。同時に、外観しか見ることはできませんでしたが、患者家族用のコテージも敷地内に併設されており、この病院が地域社会の要望に応えられるよう、発展し続けていると感じました。また、廊下には阪神大震災の写真や日本の寄付によって建てられた旨のプレートが飾られており、現在でも日本に対する感謝の気持ちが示されていました。

設備が充実し、綺麗だと感じたこのSCWHも、経済面や17年経つ建物の老朽化など現在でも問題は残存しているようでした。宗教上の観点からFamily planningができない患者がいるといった、日本ではなかなか遭遇しない問題も存在し、日本が行う支援として、経済面、医療面はもちろんですが、相互に交流を持ち、理解することが必要だと感じました。今回のSCWHの見学は、ネパールの医療事情、検査設備を学ぶ貴重な機会となりました。また、病院を見学させてもらうにあたり、たくさんの職員の方にお話を伺いましたが、どの方も忙しい仕事の途中でも笑顔で対応してくださり、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。