ネパール地震障がい者支援では「CIL(Center of Independent Living)カトマンズ」という現地の障がい者団体をパートナーに活動を続けております。できるだけ障がい当事者の立場にたった支援を行うために障がい当事者の方々と取り組んでおります。
震災から1年が過ぎて被災して障がい者となられた方々の中には、被災した山間部の村にお戻りになる方も増えてきております。障がい者には決して簡単に生活できる環境ではございません。そのため私たちは山間部にお住まいの障がい者の方々に対しても訪問して車いすや福祉用具支援、ピアカウンセリングやリハビリテーションなどの支援をモバイル・キャンプとして行っております。
最初に実施した地域は、震災後1年の2016年4月25日。最も被害が大きかったと言われるシンドゥパルチョーク郡です。いくつもの山を越え、延々と続く曲がりくねった道と凸凹道と細かな砂地でスリップも繰り返し、およそ5時間かけて最初の目的地マジガオン村に到着しました。
この村では途中いくつもの倒壊したままの家屋がありましたが、新たに建築している家はまだごく僅か。所々に点在しているのは仮設住宅として建てられたとみられるトタンでできた家が多数ありました。
この村では、震災で脊髄損傷となったラジュ・マジさんという男性に製造した車いすと導尿カテーテル(排尿する為の管)をお渡しし、自立生活に向けたカウンセリングや生活上のアドバイス等を実施しました。お渡ししたご本人に「この車いすをもらってしたい事はありますか?」と聞くと、「先に病院でもらったのは折りたためないし大きすぎて使いづらい。しかも重たいので車にも乗せられず使える場所が限られていたけど、これなら家の中の狭い場所にも行ける。今住んでいる所(仮設住宅)では、駄菓子屋を始めたので仕事をする時にも使える。それから折りたたんで車に乗せて外にも出ていきたい。もう寝ているのは嫌だ(ずっと寝ていたために床ずれができたとの事)、ベッドから離れて生活がしたい。」とお応えいただきました。この車いすは身体に合うものを選定しています。アルミ製なので軽量ですし折り畳みができるので、バスや車に乗せる事が簡単にできます。
ラジュ・マジさん宅を訪問中、近所の仮設住宅の方々も集まってきました。すると他にも障がいのある方、怪我の治療が途中でそのまま放置状態になっている方などから、次々に相談を受けリハビリテーション指導を行いました。
また次に訪問したトカルパ村では、震災による障がいではないですが、脳性まひのお子さん、脳卒中片麻痺の方など多くの方がお待ちになっておりました。車いすやポータブルトイレなどをお渡ししました。そして最後に近くの小学校にもポータブルトイレを寄贈いたしました。この地域は障がいをもつお子さんが多く、小学校では障がいのあるお子さんを受け入れようと、学校の先生も一生懸命に準備しておりました。私たちの訪問でも、学校の先生が来られており、子供の関わり方についてご質問をして下さいました。私たちはこの小学校の障がい児に対する前向きな姿勢に、子供たちの学校生活においてできる事を検討した結果、トイレが使いづらいお子さんがいらっしゃるとの事からポータブルトイレの支援を学校に対しても行いました。また学校は今後も災害発生時には一時的な避難所となる場所でもあるので、そうした場合にも障がいのある方も安心して避難できるという狙いもこれにはあります。
このようにネパールでは山間部で動きづらい環境のなか生活をしている障がい者がいらっしゃいます。彼らの不安と孤立感に対して「私たちは見放してはいない」というメッセージを伝え活動を行っております。モバイル・キャンプは現地の方が大変喜んでくださいますので今後も継続していきます。
西嶋 望