2016年7月4日から13日まで南スラウェシ州マリノのAMDAマリノ農場をAMDA職員がモニタリングのため訪問しました。2016年2月はじめ、雨季の豪雨のなか植えた稲は、収穫の季節を迎えていました。
昨年生産した有機米が好評で高値で販売できたことを受け今年から新たに6軒の農家が有機栽培米づくりに挑戦しましたが、全ての農家が無事収穫を得ることができました。しかし今年は稲が開花する乾季に入っても長雨が続いたためか収穫量は目測ですが昨年の3割減といった様子でした。いつもなら乾季の真っただ中であるはずの7月であるにも関わらず、マリノではいまだに雨が降り続いています。農家も雨の中収穫することが多い様子でした。
現地スタッフのイカさんとジャマルさんは昨年に引き続きコツコツと稲の生育データ記録を続けていました。収穫を迎え、収量調査のデータ収集も始めていました。1平方メートル当たりの穂の数を数えたり、脱穀した籾を乾燥させ、塩水につけてゴミを取り除きまた乾燥して重量をはかったりととても骨の折れる作業ですが、昨年つきっきりで教えた甲斐あってか一つ一つの作業をていねいにこなしてくれている様子でした。
有機栽培米を植えた6軒の農家に聞き取りをしたところ、全員が有機栽培米の販売化を希望していることがわかりました。自らも有機栽培を実践したことで生育過程に関心が高まったためか、昨年は現地スタッフだけでやっていた収量調査を他の農家も少しずつ学んで試している様子でした。
有機米販売化までの作業はまだまだたくさんあります。ここから稲穂を天日で乾燥させるのですが乾燥のさせ方にはちょっとしたコツがあり、この作業を確実に行わなければお米の粒が割れて見た目も味も悪くなってしまいます。付加価値の高い有機米とはいえ味がおいしく、見た目も良く品質が一定でなければ商品力がありません。
また今年はさまざまな農家からの収穫がありますが田んぼの場所や有機栽培の年数が異なっているため、農家ごとに有機栽培米の品質が一定かどうか確かめてみないとわかりません。そこで、AMDA職員は有機米を作っている農家全員で集まり食味官能検査(調理したコメの実際に炊いて味を評価する)を行い互いの米の品質を確かめあった上で価格を設定するようにアドバイスをしました。
さらに、商品化に向けてパッケージングのための包装材やラベルの注文も行いました。パッケージ費用については農家と話し合い今年もAMDAが負担することになりましたが、スタッフのジャマルからは今年の有機栽培米の売り上げを出し合い貯蓄して来年のパッケージ費用に充てていきたいとの意見がでました。昨年までの問題としてコクゾウムシの発生がありましたが、対策として今回バキューム式真空パック機を導入しました。パック内を真空にすることでコクゾウムシの卵が孵化しなくなり発生が防げるはずです。
訪問の最終日、有機米の販売先についてAMDAインドネシア支部長のタンラ先生、顧問のアグネス先生、モニタリング担当のブラエンさん、AMDA職員とで集まり話し合いをしました。話し合いの結果、営業販売を農家が自分で行えるようになるにはもう少し時間がかかるという意見が一致し出来上がった商品はタンラ先生とアグネス先生が農家からすべて買い取り、大学関係者や医療関係者、駐在日本人を対象に宣伝・販売を行ってくれることになりました。おいしく品質の高い有機米を安定して供給できるようになれば、購入者の中から少しずつ固定客も着いてくるはずです。
穂の乾燥、精米、官能検査、パッケージングまですべての作業が終わり商品が完成するのは8月末頃の予定です。それぞれの経過の報告が待たれます。
AMDAフードプログラム・マネージャー 田中 俊祐