ネパール復興障がい者支援12 〜訪問活動〜 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ネパール復興障がい者支援12 〜訪問活動〜

AMDAによる障がい者支援活動では、現地の障がい者団体をパートナーに今年4月より第三期の活動が継続されております。できる限り対象となる障がい者当事者に必要な活動とするため、より近い立場にある障がい者団体のメンバーからの提案や情報は大変有益です。それは当事者でないと気が付かない問題や悩みがあるという事によるものです。
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これまでの障がい者支援では、障がい当事者のニーズに応じて柔軟に対応してまいりました。ネパール中部地震発災した2015年に始まった第一期には車いすのニーズが高く、特に寝たきり防止対策として車いすを必要とし、現地で製造した車いすをご使用になる方の身体や環境等の状況をみてお渡ししてきました。第二期(2016年4月〜17年3月)には、震災で障がい者となった方の多くが自宅等に帰り始めたことから、地方での生活に対して、特に寝たきり予防の必要性の高い方の訪問活動が重要度を増してきました。

第三期の始まった現在、今後も共通認識で活動が遂行していけるよう、パートナー団体であるCILカトマンズにて、これまでの活動を報告し共有する機会をもちました。これまでの車いすやポータブルトイレなどといった物資による支援に加えて、自立生活に向けた取り組みとして訪問活動について報告を行いました。

障がい当事者主体で展開してきた活動について、報告に用いた資料の一部をご紹介し現状についてご理解いただければと思います。

訪問活動はCILカトマンズに直接問い合わせのあった情報、他の障がい者によるネットワーク、医療機関やリハビリテーションセンター等からの情報等を基に、CILカトマンズのピアカウンセラースタッフの助言と相談によって訪問先を決定し、ピアカウンセラーとともに訪問を行ってきました。数ではなく一人一人と向き合う事としていたので、1日に多くの訪問を行うことはせず、一人一人とじっくりとお話しするため一件にかかる所要時間は2〜4時間かけて行います。これほど時間をかけますと、最初は不安を沢山述べていた方々も、徐々に理解しあえる関係に変わり、最後は納得して私たちのアドバイスもご理解いただけるようになります。

これまでの訪問対象者数:88名(述べ119件)。男性46名、女性42名。平均年齢30.5歳。対象となった障がいは脊髄損傷が最も多く続いて脳性麻痺など小児発達障がいが多い状況です(図1)。震災直後の医療機関では脊髄損傷と(四肢)切断が非常に目立つ状況でしたが、現在のプロジェクトの方針として、「救われた命を再び危険にさらさない」として、「寝たきりを防ぐ」ことを主に取り組んできました。その結果として、寝たきり・閉じこもりにつながりやすい疾患や障がいがこの図1に表れております。

脊髄損傷の方への対応がとても重要であり、ここにニーズが多く存在していることが分かります。震災後、脊髄損傷リハビリテーションセンターを退院なされた方々も、テント・仮設住宅など住環境の変化、仕事や学校から離れるといったこれまでの生活スタイルの変化、慣れない居住地域における近隣住民との関係性構築など、自立した生活を獲得するためには課題が生じます。このことを考慮しつつ活動を展開することの必要性を示唆していると思われます。一方、震災によらない疾患や障害も多い事を示しています。これらの疾患や障害も寝たきり予防としてニーズが高いのです。震災以前からの障がい者の実態がここに表れていると考えられます。震災によらない脊髄損傷の方も多いですし、また小児疾患は相談できる機関も少なく家族の不安も大きい状況です。
これらの対象の方々に対して寝たきり予防に必要な道具、それが身体や住環境に適した車いす等です。日本では車いすは移動のため、という理解が主ですが。ネパールのような環境では屋内外全てを補う車いすの開発はまだ難しい状況です。まずこの国で最低限度、必要なことは寝たきりを防ぐための車いす。ベッドから離れ、部屋から出るための車いすです。そしてそれでも寝たきりになってしまう場合には、床ずれ予防や衛生管理、体調維持のための道具が必要になります。

ネパールは、北はヒマラヤの山岳地帯、中央は山間地域と盆地、南はタライ平原、と国土の多くが山に囲まれている環境にあります。そのため山間に住む障がい者には外に出る事も簡単ではない状況です。多くの障がい者にとって、この環境を変えるということは非常に困難である一方、人の助け合いの意識は高く、良いコミュニティーであることが多いです。ある程度は自分で出来るところは自分で行いつつも、難しい所は人の手をかりてでも外に出る機会を作ることが重要となります。周りの方々の理解と協力はここネパールでは大切です。

最後に頼りになるのは、やはり人によるサポートだと考えております。どの疾患・障がいの場合でも共通してアドバイスしておりますのは、寝たきり・寝かせきりはいけない事。起きて、ベッドから離れ、部屋から出る、そして外にも出るといった生活スタイルを確立することです。

理学療法士
西嶋 望