モンゴルでの救急医療と内視鏡技術指導 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

モンゴルでの救急医療と内視鏡技術指導

東亜大学医療学部教授
モンゴル国立医科大学招聘教授消化器科スーパーバイザー 佐藤 拓史

 

輪状甲状靱帯切開術の指導

昨年9月に引き続き救命救急についてのセミナーをウランバートル、救急医療サービスセンター(103)で実施しました。昨年は100名を超える救急医に対して講義しましたが、今回は個別の技術指導を中心にした研修で、同センターの主力10名の医師を対象にしました。研修内容としては、モンゴルの救急の現場ではまだ実施されていない骨髄輸液、輪状甲状靱帯切開術、心タンポナーデの治療等です。日本と違いモンゴルでは、全ての救急車に医師が同乗しています。いわばモンゴルの救急車は、日本のドクターカーなのです。従って救急医の現場での技術向上は、救命率を確実に上げます。今回は知識習得の為の講義に留まらず、実際に鶏肉の骨を使って骨髄輸液の手技を一人一人の医師が実体験しました。[pagebreak]また、輪状甲状靱帯切開の手技や心嚢穿刺、心膜開窓術の技術をシュミレーターで学びました。

セミナーを受講した103の医師たち

研修を終えた救急医たちは、新たな手技の習得を実感し自信に満ちた表情に変わっていきました。「バクシャ(日本語で先生を意味する)、来年はウランバートルだけでなく、是非地方の救命救急医にもセミナーを行って欲しい。モンゴルの救急医療の為にも、このような貴重なセミナーを我々だけが独占してはならないと思う。」と彼らからの声を聞き、私は彼らに研修をする機会を持てたことに心から感謝しました。

また今回の渡航では、AMDA のモンゴルにおける長年の活動を評価いただき、ウランバートル保健局80周年記念シンポジウムでの演者として招待されました。

 

ハイチについての発表

演題は、災害時の感染症対策について、これまでの国内外での救援活動を通じての経験を200名の参加者を前に発表しました。発表後には、モンゴルの災害医療危機管理に携わる様々な関係者との意見交換もでき、将来に繋がる協力関係を築いていくことの重要性を改めて実感しました。

 

国際会議の発表内容を報じた地元紙

国際会議での発表の内容は、翌日の地元紙にも掲載されました。

国立医科大学での内視鏡指導

昨年より継続する私のモンゴルでの活動の二つの柱は、103における救急医への技術研修とモンゴル国立医科大学病院における内視鏡研修です。この活動を通じて、モンゴルにもたくさんの仲間が出来ています。これからのモンゴルの医療を引っ張っていく素晴らしい才能と情熱を持った医師達にも出会えました。私が日本で身につけることの出来た医療が国を超えて、命を救う技術として伝えられるとしたら、、、私にとって大きな幸せです。

 

岡山県庁で修了証を受け取るバトラフ医師

またAMDA は、海外の医師を招聘し日本の病院で研修を受け技術を習得するといったプロジェクトも行っています。モンゴル国立医科大学で私の研修を受けたバトラフ医師は、AMDA を通じて岡山県国際貢献ローカル トゥ ローカル 技術移転事業で8月1日〜9月28日の期間、岡山済生会病院にて内視鏡研修を受けました。岡山とウランバートルのローカルトゥローカルの小さな交流が将来の両国の大きな架け橋になっていくと信じています。

今後は海外の医療技術の向上に貢献したいと志しを持った日本の医師達とも連携を深め、このAMDA の長年にわたるモンゴル事業が継承されることを心から願っています。