インド・オリッサ州サイクロン災害救援 活動報告 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

インド・オリッサ州サイクロン災害救援 活動報告

ラマチャンドラ・カマト医師(AMDAインド)

背景:

2019年5月3日午前8時12分、風速175〜185km/hの強力な熱帯暴風雨(サイクロン)がインド・オリッサ州に上陸。州政府は、64名の死者を出したと発表しました。今回のサイクロンはオリッサ州の州都ブバーネシュワルをはじめ、州内14の地区に被害をもたらしました。最も甚大な被害を被ったのは、プリ、コールダ、カタック、ジャガシンプールで、湾岸地域から150万人以上が避難所に身を寄せました。学校や大学など比較的安全な建物が避難所として一時的に利用され、これによって犠牲者やけが人の数を大幅に削減することができました。









各地域における犠牲者数

地区名犠牲者数
プリ39
ケンドラパダ03
マユールバーンジ04
ジャジュプール03
カタック06
コールダ09
合計64












オデッサ州では、先述の通り、プリ、コールダ、カタック、ジャガシンプールでの被害が最も大きく、今回の災害により何らかの影響を被った人口はおよそ*1,650万人に上ります。道路、通信、電線、医療機関、学校などの公共インフラに被害がおよび、水産業では漁船や網が流されたほか、農業ではカシューナッツやヤシの木などが損害を受け、これらで生計を立てている人々は大変な痛手を被りました。

(*オリッサ州災害対策本部(SITREP)調べ)

プリ地区におけるシナリオ:

ヤシの木の90%以上、看板広告、学校の校舎やキャンパス、携帯電話の電波塔、駅の屋根、バスセンター(ブバーネシュワル)などが損壊し、遠隔地では、倒れた電柱や木々が災いして現在も停電が続いています。プリ、ブバーネシュワル、カタック地区にある都市部のスラムや郊外では、クッチャとよばれる簡易住宅(泥、藁、木などを組み合わせて作る家)が約18万9千棟倒壊したほか、露天商が構える簡易店舗も完全に壊滅しました。このほか通信タワーも酷く風に煽られ、携帯電話や電話が広域に渡って繋がらなくなりました。

発災から一ヶ月経っても、地方の七割以上で電気が復旧していません。通信網や電力供給が断たれたことに加え、国政選挙と時期的に重なったことで救援や復旧に遅れが生じたのは事実ではあるものの、今回の災害では、市民の迅速な避難によって多くの人命が救われる結果となりました。









迅速な被害調査と救援活動:

私はサイクロンの被害にあったオデッサ州を訪れ、プリ、コールダの郊外、ブバーネシュワルの都市部など被害の大きかった地域を速やかに調査しました。調査を指揮したのは、菅波茂AMDA代表とカマトAMDAインド支部長です。

まず必要になったのが、ポリエチレンのシートです。これらは簡易シェルターを作る為に用いるほか、風で吹き飛ばされたクッチャの屋根に利用します。ポリエチレンのシートは、セワ・バラティのブバーネシュワル支部の協力により、プリ地区サダール・ブロックにあるチャンダプールの被災世帯に配布されました。

またプリ地区沿岸でも、セワ・バラティ・プリ支部のボランティア達の協力により、迅速なアセスメントが行われました。浜辺近くにあったクッチャや船はサイクロンによって完全に破壊されてしまいました。

セワ・バラティのブペンドラ氏、ビジェイ・クマール氏、シマンチャル氏をはじめ、災害リスク削減と子供達の保護に関してコンサルティングを行っているユディスティラ・パニグラヒ氏には特にお世話になり、迅速な現地調査や支援物資配布の調整などで惜しみないサポートを提供して頂きました。書面を借りてお礼を申し上げます。









救援および復旧活動からの提言:

  • 地方における70%で電気が復旧していないことから、子供や女性にとってはソーラーランプが必需品となるでしょう。
  • 子供達は教科書やノートその他の学校教材を暴風雨や家屋の倒壊で失いました。教科書はオデッサ州政府が無料で提供しましたが、カバン、ノート、ペン、鉛筆、水筒などは配付されません。これらの物資は子供達の教育の継続に必須といえます。学校は2019年6月19日再開予定です。
  • 瓦礫の撤去が完了していない中、2019年6月の第一週にはモンスーンの到来による雨が予想されます。これにより、水系感染症や節足動物媒介性感染症のリスクが高まります。感染症の拡大をコントロールする為、地方の*医療従事者やボランティアに対し、トレーニングを実施することが望ましいといえます。(*公認社会健康アクティビスト(ASHA)、補助助産師(ANMs)、統合児童ケアサービス従事者(ICDs)など)








*AMDAインド支部のカマト支部長のコメントを近日中に掲載予定です。