AMDAバングラデシュ支部活動視察(3)〜ダウン症の子ども達の支援を支える小規模融資事業〜 – AMDA(アムダ)
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AMDAバングラデシュ支部活動視察(3)〜ダウン症の子ども達の支援を支える小規模融資事業〜

AMDAグループ代表 菅波茂

 

乾燥機

翌日に20数km離れたガザリア地区を訪問した。道路の混雑で3時間かかった。ナイーム支部長とラザック事務局長の故郷である。2000年に駐バングラデシュ日本大使館から贈呈された草の根無償資金協力で建てられた3階建ての職業訓練センターを運営している。水災害の多いバングラデシュなので、災害時には避難所として地域の住民に利用されている。訪問の目的はAMDAバングラデシュ支部が1999年から実施している小規模融資の現状とダウン症の子ども達の参加の可能性調査だった。方法論として大紀産業が開発して世界に輸出している乾燥器の活用だった。ちなみに国内シェアーはトップである。

2014年にJICAから、スーダン内戦により農作物が生産地[pagebreak]から主要マーケットである首都のカルツームに輸送される前に腐敗して農民が困窮している状況を打破するために、大紀産業に要請があった。結果としては、大成功だった。なお、この乾燥器はスーダンのみならずケニア、ベトナム、カンボジアなど海外で広範囲に使用されている。

職業訓練センター内で小規模融資を利用している女性30数名に乾燥器を使った小規模事業の説明会を開いた。ほとんどの女性が関心を示した。問題は購入価格が最小の乾燥機で5万円であることだった。まずは乾燥器を使用して、その価値を理解してもらうことである。安原氏は無料提供を申し出たが、デモ用品であることから3万円の価格にして、2年間の猶予の後に3ケ年間払いにした。ビジネスとしての気持ちを持ってもらうためである。ラザック氏も賛同してくれた。「ただであげるは乞食扱い、貸してあげるは対等扱い」である。

集会の垂れ幕

集会の女性たちと

現時点でダウン症の子ども達を支援する経費は小規模融資事業の収益でもって運営されている。ダウン症の親からは経費をもらっていない。イスラム社会ではまだまだ可哀そうなダウン症の子ども達にはしてもらって当たり前というスポンサーシップであるが、一緒に努力をしましょうというパートナーシップへの積極的な関係の発展を考えている。

将来の計画は、女性たちが乾燥器を使った小規模事業をこなす段階になったら、ダウン症の子ども達に参加してもらいたく考えている。WHOの健康の定義は精神、身体が健全で社会参加をすることである。前述したように、首都ダッカのラザック事務局長の解放された自宅では、大口で仕入れた食材料を小分けにする訓練をしている。子ども達が嬉しそうに実施している。ご褒美は「ありがとう」である。自己実現の喜びへのステップである。

障がい者の社会参加に関してすぐれた政策を発表し、実現したのが岡山県総社市の片岡聡一市長による「障がい者千人雇用」政策である。すでに千人を達成して千五百人を目標に掲げている。

総社市の企業による協力なしには考えられない。総社市全体の「弱者救済から敗者復活へ」の大転換である。意欲と能力があれば機会が与えられて自己実現をする。意欲と能力があっても機会が与えられない。これが差別である。人間の存在に敬意を払う。これが人権である。具体的には、1)あなたを忘れていない、2)あなたに関心がある、3)あなたを必要としている。「障がい者千人雇用」政策は差別と人権に対する優れた政策と評価したい。

ガザリア地区で女性たちの協力によりダウン症の子ども達に同様の機会を創りたい。