新型コロナウィルスに対するAMDAインド支部の活動 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

新型コロナウィルスに対するAMDAインド支部の活動

AMDAインド支部 ミナクシ・ジョシ事務局長(翻訳:近持雄一郎)

労働者の家族を支援

AMDAインド支部は、首都デリーを中心に、新型コロナウィルスの蔓延により厳しい状況を余儀なくされている人々に対して、全力で支援に取り組んでいます。

インド国内で初の感染者が確認されたのは、新年を迎えて間もなくのことでした。2020年3月24日から急遽全面的な外出規制が敷かれ、多くの市民がパニック状態に陥りました。工場をはじめ、オフィス、公共の交通機関などが操業停止となり、日雇い労働者をはじめ、大勢の人が生活の術を失いました。また交通機関がストップした為、都市部で働いていた労働者達は徒歩で故郷を目指しました。その中には子連れの家族や、女性、妊婦の姿も見られました。

AMDAインド支部のミナクシ事務局長は、2歳半の子供を連れた労働者家族から助けを求める連絡を受けました。その結果、食料や調理用のガスコンロなどを用意し、支部の事務所で一家を保護することになりました。3週間ほど経った頃、複数の慈善団体がスラム街や避難用シェルターに食事を届けていることを知り、この家族の為に食事の配達を依頼しました。一家は3カ月間、事務所に身を寄せた後、礼状を残して去っていきました。彼らが去った6月末、インド政府が正式に国内の移動を可能にする策を講じたからです。この後、国内では再び人々の大移動が始まりました。

マスクと消毒液の配布

感染がそれほど深刻でない地域を皮切りに、インド政府は外出規制を緩和し始めました。ここで必要となったのが感染防止用のマスクです。政府は3月末から5月にかけて人々の不必要な外出を規制していましたが、6月6日から徐々に規制が緩和され、飲食店や宗教施設が操業を再開。同月末までには完全に規制が解かれ、国内の移動が再び活発化すると予想されました。感染者数が増加傾向にある中で、職場に戻る人の数が増えるのは明らかでした。このような状況を鑑み、AMDAインド支部はAMDA本部と協力し、マスクの配布を実施しました。

環境にやさしいコットン製のマスク

AMDAインド支部は“自然環境や資源に配慮すること”を活動方針の一つとしています。いわゆる使い捨てマスクの利用を推進しないよう、今回の活動では洗って使える手作りの布製マスクを採用することにしました。既製品を購入するのではなく、インド南部ニルギリ山脈を拠点に活動する女性の自助グループにマスクの製造を依頼したのです。無漂白で二層のコットンから成るこのマスクを購入することは、地方に暮らす女性達の収入を助け、彼女達の生活を支援することにつながります。

6月に入り商店等が営業を再開し始めると、AMDAインド支部のスタッフは毎週デリー市内でマスクを配布し、人々に使い捨てマスクの使用を控えるよう説いてまわりました。対象となったのは、市場や建設現場で働く人々、スラム街の住人、公共施設の警備員や市街地の清掃スタッフなどです。また公共の場において人々の手を消毒し、新型コロナウィルスとAMDAインド支部に関するパンフレットを配りました。

6月末には宗教施設のみならず、ショッピングモールも営業を再開。AMDAインド支部のボランティア達はそれらの軒先に立ち、消毒液とマスクを訪れた人達に提供しました。またガソリンスタンドや警察署を訪れ、マスクとともにハンドソープやフェイスシールドを寄付しました。

一方、デリー郊外にあるグルグラムでは、とある公園の屋外ジムのオープニング行事でマスクや消毒液を配布。地域住民や住民の福祉を支援する団体『RWA』の代表者から感謝の言葉が贈られました。

このほか、インド内務省に登録している家庭・福祉関連組織『Sandiksha』と協力して、家族から見捨てられた高齢者や精神障害者を保護するケアホームに対し、コロナ対策支援を行いました。Sandikshaから3ヶ月分の食料や衛生機器が寄付された一方、AMDAインド支部は500人の入居者に対し、5リットル分のハンドソープ、20リットル分の消毒液およびマスクを寄付しました。この活動は地元のメディアによって大きく取り上げられ、ミナクシ事務局長はこのような機会を頂いたことについて、同組織に謝意を表しました。

AMDAインド支部がこれまでに配布したコロナ関連のパンフレットは300部を数えます。街中で野菜を売る行商人や清掃スタッフに常に目を配りながら、同支部は現在もマスクを配布するなどの活動を続けています。