AMDA各支部からの報告7:インドにおける新型コロナウィルスの状況 – AMDA(アムダ)
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AMDA各支部からの報告7:インドにおける新型コロナウィルスの状況

今月、AMDA本部では、世界各国における新型コロナウィルスの状況を把握する為、各支部に対してアンケート調査を行っています。回答のあった支部から順に調査結果を随時掲載しています。

  • 支部名:インド支部
  • 記入日: 2020年9月8日
  • 国内の累計感染者数: 4,280,422
  • 現在の感染者数: 883,697
  • 死者数: 72,777
  • 回復者数: 3,323,950

AMDAインド
カマト支部長

設問1:ロックダウンや規制等政府の対応について

2020年3月24日よりインド政府は3週間にわたる厳重なロックダウンを発令。感染者の増加に伴い、その後、68日間におよぶ延長措置がとられた。5月31日、中央政府はフェーズごとに徐々にロックダウンを緩和。第一フェーズでは、緊急事案を扱う職種や日常的に必要とされるサービス業が対象となった。一方、集会などの集まりごと、ジム、バー、地下鉄、バスの運行等は完全に一時停止となり、州政府の厳しい管理下に置かれた。また各州の感染状況に応じて、州をまたぐ移動はその都度、禁止と再開が繰り返されている。

現時点においては、ロックダウンのほぼ全てが解除となっているものの、ソーシャルディスタンス、集会の禁止、頻繁に手を洗うこと、公共施設に消毒液を常備すること等の条件が設けられている。また感染コントロールに成功している主な地域においては、検査がほぼ無料で行われている。

政府はまた自宅待機中の患者や重症患者をはじめ、全てのコロナ患者に無料で食料や医薬品、宿泊場所を提供するなどの全面的な支援を行っている。

 

設問2:自国における医療システムの対応は?

コロナ発生当初、インドの医療システムは人工呼吸器の需要の急激な高まりにより逼迫した状況に置かれた。しかし、次第にコロナウィルスに対する理解の向上と合併症に対する対応が安定してきたことから状況は改善し、現在、医療従事者でなくとも、ある程度教育を受けている一般の人であれば、遠隔医療や民間療法等(ハーブ等の薬草を使い免疫力を高めるなど)を利用して、自宅で軽度の症状の対応を行うことが可能になってきている。

症状が比較的軽いケースに対しては自宅における自主隔離が適用されている。また医師との連絡を維持する方法として遠隔医療の利用が推奨されている。

 

街中でマスクや消毒液を配布するミナクシ事務局長

設問3:コロナに関する支部の活動および今後の予定

インド支部は、社会貢献の観点から複数の取り組みを行った。患者の増加に伴い、マスクの着用が推奨されはじめた3月初旬、手洗いや消毒液の利用が推進されつつあった。いわゆる危険ゾーンと呼ばれる地域において、インド支部はマスクおよび消毒液を地域で働く人々に配布した。またその際インド支部のミナクシ事務局長が今後予想される困難な状況に鑑みて、衛生状況の改善ならびに予防策等について、人々に説いて回った。

その後、急遽ロックダウンが宣言され、3ヶ月分の食料の確保が必須となった人々はパニックに陥る。ロックダウンが長期間にわたって施行されることを危惧した結果、都市を離れ故郷に帰ろうとする地方出身の労働者がバス乗り場に殺到。(労働者の大半はビハール州出身。)このような行動を自制し、近隣のシェルターに身を寄せるよう政府が呼びかけたものの、一部の労働者は徒歩や車の乗り合いなどで故郷を目指した。(実際にこのような方法で帰郷を成し遂げる者もいた。)

そんな中、ミナクシ事務局長は子供二人を抱えたとある家族に関して連絡を受ける。徒歩での帰郷を試み、55キロの地点まで歩いたものの、疲弊と気温の上昇により立ち往生してしまったという。緊急に支援が必要であった為、インド支部は事務所を開放し、必要となる基本的な生活物資を用意して一家を受け入れた。3月25日から事態が落ち着くまでのおよそ2カ月間、一家はインド支部に保護された。ロックダウンにより外出が制限されていた為、インド支部では定期的に事務所に電話を入れ、彼らの日々の様子を伺った。インド支部が差し入れた食料と調理器具で自炊し、家族は日々の食事を賄った。

またインド支部では、コロナの状況が長期化することを見据えて、手作りの布製マスクの購入を決定。インド支部では、環境と資源の保護を運営方針の一つとして掲げている。環境保護の観点に鑑みれば、使い捨てマスクの利用が環境に負荷を強いることは自明である。したがって、余程の状況でない限り、これら製品の使用は推奨していない。感染者と日々対峙している医療従事者を除いて“使い捨てマスクは必要ない”との考えから、インド支部は、南部ニルギリ山脈で活動する女性団体に無漂白の100%綿製マスクの製作を依頼し、合計1,100個をロックダウンが段階的に緩和されるタイミングで購入した。これ以外にも、アルコール度80%の消毒液25リットルとハンドソープ15リットルを購入し、コロナ予防に関する指導パンフレットを200部用意した。

この再利用可能な二層構造の布製マスクは、デリーとグルグラムという二つの人口密集地域で配布された。宗教施設やガソリンスタンド、公園、警察署などに提供したほか、清掃夫やガードマン、露天商、労働者たちにも配布を行った。

また家族から見捨てられた高齢者や精神に障害のある高齢者を保護する老人ホームにも、一連の物資を寄付した。500人の入居者に対し、マスク、ハンドソープ、消毒液を届けた次第である。

今後は、自主隔離となっている感染者を対象に、コロナに関する無料相談サービスを遠隔で提供できるよう計画している。またオンラインでの情報更新やウェブセミナーを通じたコミュニティーへの情報発信のほか、コロナ対策に必要な支援物資等を提供することも検討している。