ウクライナ避難者支援活動(2022/10発行ジャーナル秋号) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ウクライナ避難者支援活動(2022/10発行ジャーナル秋号)

現在の活動状況について

プロジェクトオフィサー 看護師 長谷 奈苗
 
ウクライナの人道危機発生から 8 ヶ月が過ぎました。避難者数は発生直後に比べ減少傾向にありますが、避難は今もなお続いています。避難者の多くは子連れの母親ですが、現在は状況の悪化に伴い、ウクライナ国内に留学していた他国の学生も避難してきています。

ハンガリー側の国境の村、ベレグスラーニーのヘルプセンターにおいて、AMDA は避難者に対して、現地協力団体『MedSpot』とともに医療活動を行っています。

7 月下旬から、健康面における異常の早期発見を目的として、メディカルチェックシートを用いて有訴者(病気やけが等で自覚症状のある人)や要配慮者を確認しています。処置が必要な避難者については、近隣の診療所などを紹介し、またストレスを抱える方が多く見られるため、傾聴やマッサージを行っています。子どもたちについては、遊具やおもちゃで一緒に遊ぶなどして対応しています。

医療支援のほかにも、現地協力団体『カルパッチヤハウス』(ヴァルダ伝統文化協会)が、避難者と現地住民との交流を目的にスポーツや料理のイベントを開催。暑い中での開催であったため、AMDA はスポーツドリンクの配付などを行い、熱中症予防に努めました。

一方、ウクライナ国内の避難者に対しても、食糧や生活用品などを継続的に寄付しています。現地からの情報によれば、経済的困窮のため、低賃金での労働を余儀なくされている方もいるということです。このように、物資や居住場所の提供、仕事の確保など、依然として多くの支援が必要とされています。AMDA は今後も、現地主導で支援を行えるよう関係各所とともに調整を行っていきます。
 

現地協力者による寄稿

ハンガリー国立センメルワイス大学医学部 志井田 海
 
今年の 2 月にウクライナで人道危機が始まり、「今回の人道危機に対する支援を行おうと考えている日本の団体の活動に協力できないか」と知人からお話をいただきました。「私でも何か貢献できることがあるのでは。遠くから見ているだけではいけない」と思い、AMDA の活動に参加しました。

最初に、「何処で何が必要で、我々に何かできることはあるのか」という率直な疑問が浮かんだので、まずはどのようなニーズがあり、誰が医療支援の統括をしているのかを探りに、柴田(和香)先生と国境に向かいました。

その際、現地に滞在したのは数日だけでしたが、一人から聞いた情報を頼りにまた次の人を探しに行くという作業を通じて、現在の活動の基礎となっているタチアナ先生やカルパチアハウスの皆様にお会いすることができました。そして皆様の協力の下、AMDA が活動する上で重要な情報を集めることができ、AMDA と現地の人々をコネクトし、かつ活動の基礎を作ることができました。また、7 月からは赤十字と協力した大学の学生主体の活動が始まり、学生は医師のアシスタントとして医療ボランティアに従事しています。

私はこの活動を通して、たくさんの素晴らしい志を持った人々にお会いすることができて光栄だなと感じました。同時に、「避難者の方々に支援ができた」と自己満足になるだけでなく、本当の意味で人道危機による故郷を追われた避難者のお力になれたらなと思っております。避難者の皆様が一日も早くそれぞれの故郷に帰還できることをお祈り申し上げます。 
 

ウクライナ避難者支援活動派遣者より

AMDA 緊急救援ネットワーク調整員 池田 敬

2 ヶ月半の現地での活動を通じて、実に多くの方々に出会いました。7、8 月は、ウクライナからハンガリーに出稼ぎに行かれる女性が多くいたことが印象に残っています。事情を伺うと、皆さん一様に、「ウクライナの経済状況は酷く、仕事を探すのは難しい。ハンガリーで働いて家族を支えたい」と話してくださいました。

 また、人数はさほど多くはありませんが、ヘルプセンターを経由してウクライナに戻られる方もおられます。人道危機開始後、数ヶ月に亘ってウクライナ国外に避難していたものの、経済的に国外避難生活が困難になったことから、ウクライナ帰還を決断された方もいらっしゃいました。

人道危機が長期化し、国境を超える方々の事情も多様化しているように感じます。我々にできることは限られているかもしれませんが、今後もウクライナ情勢に目を向け、今できる小さな支援を積み重ねることが大切だと感じました。
 

AMDA 緊急救援ネットワーク看護師 押谷 晴美

今回ウクライナ避難者支援に参加させていただけたことに感謝します。私が主に活動したヘルプセンターは、避難してきた方が次の目的地に行くまでの通過点でした。そのため滞在時間も短く、彼らと接する時間も限られていました。言葉が通じず、翻訳アプリを使用してのコミュニケーションは想像以上に難しいものでした。何かを訴えてきても、正確に理解することができず、相手の方が諦めてしまうこともあり、看護師としてこれほど自分の無力さを感じた活動はこれまでにありませんでした。

しかし一方で、皆様からのご寄付で、ウクライナ国内の支援を必要とする人々に食糧品が届けられた時の笑顔の写真を見せていただく機会もあり、現地での支援だけでなく海を越えて日本のウクライナに対する気持ちが届いていることは感慨深いものでした。一人でできることはほんのわずかなことですが、多くの人のウクライナに対する気持ちがきっとこの状況を変えていってくれると願っています。
 

AMDA 緊急救援ネットワーク看護師 東島 紋子

7 月 15 日から第 7 次医療チームとして 1 ヶ月の活動をさせていただきました。暑さが残る季節で、長時間の移動で来られた避難者の方々には疲労が見られました。全ての避難者の方たちの状況を確認し、より良い健康状態で次の避難先へ送り出すため、メディカルチェックシートを作成し一人ひとりに聞き取りを行いました。

症状がある方には医師の診療への橋渡しを、大きな既往症がある方には健康指導を実施し、要配慮者となり得る方々には現在困っていることはないか等を確認しました。

一人ひとりとお話しする中で、メディカルチェックを機に、持病の不安や家族について話してくださる方や、ウクライナの自宅や町の様子を写真や動画で見せてくださる方、AMDA や日本について興味を持ってくださる方もいました。AMDA や日本の多くの人々がこの人道危機に変わらず関心を持ち、平和を祈っていることを伝えました。